お茶の愛し方

彼女の朝は一杯の緑茶から始まる。

緑の針に温いお湯をそっと、いれる。

青青とした香り。

彼女は思う。

コーヒー党はたくさんいるし、コーヒーのカフェもたくさんある。
でも、緑茶党ってあまり聞いたことない。緑茶のカフェも、街中ではあまりないわ。

そういう彼女はコーヒーの香りも好きなのだけど。
けれど、緑茶の香りほど彼女を幸せにはしてくれない。

しかし彼女は緑茶を淹れるのに、
少し不便を感じていた。

急須というものは、洗うときにお茶っ葉が引っ付いて、何とも難儀なのである。

大したことではないのだけれど、
綺麗に洗えたわ、と思ったら茶漉しに一枚、お茶っ葉が残っていたり。

大した手間ではない手間が、
大きな弊害になることもある。

それはそうと、彼女は台湾茶も好きである。

台湾茶にも緑茶があり、それは日本茶とは違ってまたいい。

緑茶と台湾茶は仲良し、と彼女はいつも並べて置いている。

台湾茶を淹れるときは、色々な方法があり、茶葉の種類で推奨される淹れ方がある。
一番簡単なのは、蓋碗で淹れる方法。

蓋碗とは、お椀のような仕組みでできていて、お茶を飲むときは、椀から少し蓋をずらして、その間から飲む。

非常に簡素で機能的なこの器を好んでいる。

洗うのも、とても簡単。

その日、彼女は明前碧螺春という、台湾緑茶を飲んでいた。

ふと思いついた。

台湾緑茶をこれで淹れられるなら、
日本茶も淹れられるんじゃあないかしら。

だって、台湾茶と緑茶は仲良しだもの。

試しに彼女は日本茶を同じ要領で淹れてみた。

直接的に香りが鼻に沁み入ってくる。

味もあの青青とした感じは損なわれず。

これは素晴らしい飲み方だわ。

まるで世紀の発明をしたかのように。

けれども考えてみれば、
彼女自身が緑茶の淹れ方について、
固定観念を持っていたにすぎないのだ。

こうであるべきだ、と。

本当にささいなことに彼女は感激した。

彼女は今日も緑茶を飲みながら、
青青の中で想像する。

日本茶と台湾茶のお店を出したいわ。

小さい小さいお店。

その空間に漂う茶の香り。

人間が想像できるものは、造れるといる。

彼女が想像したものを造れるかどうか。

行動力を持てるかしらね。






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