スモーキーなアールグレイとの出会い

コーヒーも好きだが紅茶も好きだ。
高校時代、深夜に勉強していたとき、お供のホットドリンクがミルクティーだった。近所のスーパーでかわいい緑色の缶に入った紅茶を飲んでから、アールグレイという名前を覚えた。

紅茶といえばリプトン。もしくは日東。
ダージリンというのは紅茶の種類らしい。あと、オレンジペコという可愛い名前のもあるらしい。紅茶花伝のミルクティで、ミルクティにはまった。
紅茶についてはそのくらいしか知らなかった高校時代。
初めてアールグレイを飲んで、びっくりした。その爽やかで、豊かな香りに。それ以来、「アールグレイは美味しい」という思い込みがある。

とある喫茶店で。メニューにアールグレイを見つけた私は、迷わず注文した。喫茶店で紅茶の種類が選べることなど、あまりないからね。
一口飲んで、固まった。なんだこれ。なんというか・・・ホコリっぽい。
煙みたいな味がする。インパクトがすごいが、違和感もすごい。
本格的なお店のアールグレイって、こんな感じなのかあ。へぇー。
一口にアールグレイと言っても、いろんなのがあるんだなあ。
きっとお店オリジナルの茶葉だったんだろうな。

そして長い月日が流れた。
久しぶりに訪れたおしゃれなカフェで、紅茶が売っていた。
真っ黒なパッケージに、アールグレイと書いてあった。
紅茶専門店でもないから3、4種類くらいしか置いていないのに、アールグレイをチョイスするとはなかなかいいセンスだ。
お店のセレクトに「いいね!」の意味で、買って帰った。
よく見たら100グラム1600円もした。たっか!
まあでもこんなに高いのなら、お味もさぞかし期待できるだろうと思って、早速入れてみたらびっくり。
あれからずっと出会うことがなかった、煙の香り。
一度飲んだら忘れられない、ホコリっぽい味わい。
これか!あのときのアールグレイはこれだったのか!
パッケージをよく見ると、「ムジカティー」と書いてある。
早速ネットでチェックすると、関西に店舗がある紅茶専門店らしい。

久しぶりのスモーキーなアールグレイは、パンチが効いていて美味かった。
甘いケーキにも負けないし、何より、味がある。
なんというか・・・紅茶って、味はあんまりない気がしてて。
香りはいいんだけど、舌では水っぽさを感じている。
でも、このスモーキーなアールグレイは違う。味もしっかりある。
ミルクを入れても全く負けない。
これは・・・美味いのではないか。
紅茶好きなので、いろんな紅茶を常備しているのだけれど、気づいたらこのムジカティーのアールグレイを飲んでいた。
いつの間にか100グラムの茶葉は残り少なくなっていた。

アールグレイ、飲みたいなあ。
Amazonで探してみたら、懐かしい、あの高校時代に飲んでいた缶が出てきた。AHMAD。アーマッド。イギリスのブランドだったのか。
普通のスーパーには紅茶の品揃えが少なくて、この缶はついぞ見かけなかった。高校時代、あの紅茶を仕入れていたスーパー(ド田舎にある)は何を考えていたのだろう。それとも当時はあれが流行っていたのかな。
早速ポチって飲んでみた。きっと、懐かしい味わいだろう。
・・・・・うーん。薄い。
香りはこれだった気がするけど、味があんまりない。
アールグレイって、基本はやっぱりこれなのかな。あのスモーキーさは一体なんなんだ。ムジカティー独自の味わいなのか。

ムジカティーの紅茶を調べてみると、どうやらアールグレイが2種類あるようだった。
「モデールノ」と「オリエンタルブレンド」。
アールグレイは、ベルガモットの香りが付けられたフレーバーティー。
しかしもともとは、中国紅茶に竜眼で香りをつけたものだとも言われているようだ。竜眼とはなんだろうか。中国紅茶と普通の紅茶は違うのだろうか。まあ、違うんだろうな。日本の紅茶も違うし、というか作り手によって違うくらいだもんな。
モデールノは、ベルガモットの香りをつけたモダン(現代的)なタイプ。
オリエンタルブレンドは、ベルガモットの香りに加え、竜眼香と言われるラプサンスーチョンを少量加えたものらしい。
ラプサンスーチョンってなんだ。
ラプサンスーチョンは、中国紅茶の一種で、松の木で燻してあるらしい。これか!これがホコリっぽいというか、煙のような味の正体だったのか。

ということは。
もしかして、AHMADのアールグレイにラプサンスーチョンをちょっとブレンドしたら、もう少し飲みごたえのある味わいになるかも。
ま、ただスモーキーな香りがする水っぽいアールグレイになる可能性大ではあるけど。
ムジカティーの紅茶はネットで買えたので、ラプサンスーチョンを注文してみた。もちろん、オリエンタルブレンドのアールグレイも合わせて購入。
もうこのアールグレイじゃないと、物足りない舌になってしまった。

高校時代、インターネットなんてなかった。
近くのスーパーに並んでいないものは、存在しないのと同義だった。
わからない単語(特に名詞)が出てきても、国語辞典で調べるしかなかった。ましてや、それが手に入る場所なんて、全くわからなかった。
電話帳でスーパーや専門店を探して、電話をかけまくるしかなかったのだ。

そんな田舎が嫌で仕方なかった。
東京なら、なんでもあるって思ってた。
ビルみたいな大きな本屋もあるし。百貨店が山ほどある。
だけどあれから20年。
ネットで探して買える時代になった。
インターネットの弊害はいろいろあるけれど、本の限界、辞典の限界、図書館の限界、インターネットの限界。その限界がなんとなく掴めていれば、あらゆるツールを駆使して、知りたいことがすぐに分かるようになった。
ああ、やっぱりインターネットはすばらしい。
パソコンって、ほんとすばらしい。
デジタルって、すばらしい。
私がデジタルが好きでたまらないのは、身体を田舎に置いていても、いろんなものを知るチャンスを与えてくれるからなんだよな。


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