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東京大学総長・五神真さんに聞く!「知」の現状と東大が果たすべき役割

おう、「ドラゴン桜」の桜木建二だ。
東大なんて簡単だ!つべこべ言わず東大へ行け!
低学力だった龍山高校の立て直しを始めた直後から、俺がそう言い続けてきたのは、みんな知っているな?


どうせ社会で生きていくなら、ルールをつくる側に回れ。自分で歩く道くらい自分で切り拓け。それが「東大へ行け!」の真意であるのは、大人の読者ならわかるだろう。
東大へ行けとはつまり、世を渡るのにいちばん有利な「知」を武器にせよということだ。かてて加えて、「知」を得る過程は、人生の喜びにも直結する。
それはそうだ、学ぶことほど愉しいものは、この世にふたつとないからな。


しかも、だ。俺の教えである「東大へ行け!」は、これからの時代、ますます重要になっていくぞ。20世紀まではモノや物量が、それこそモノを言った。
が、21世紀になったいま、時代を動かすのは情報であり、その集積たるデータになった。体系立てられた有用な情報やデータのことを、「知」と呼ぶのだ。


じゃあ、世の中で知が集約している場所はどこか。大学だ。なかでも、最も良質な知の集積点はどこかといえば、昔も今も東京大学に決まっている。

東大の成り立ちから考えても、それは当然のこと。明治時代の人たちが、「知」によって治められる新しい社会をつくろうとしたとき、その核となるべくつくられたのが東大なんだ。


まあ、歴史的経緯は追って話すとして、現在に目を向けるとしよう。どうやら東大は時代に先んじて、みずからの価値を高めようとしているぞ。

受験にかぎらず広く「学び」を読み解き、「知」の現状と行く末を見定めるために、学びの最高峰たる東大が指し示している方向を、まずはしっかり押さえておこう。
最新にしてたしかな、価値ある情報を得るには、当事者に話を聞くのが何よりだ。変化を知るために、東大本部のある本郷キャンパスへ足を運び、人に会ってきたぞ。そう、俺はただ好き勝手なことを偉そうにぶってるわけじゃない、緻密な取材を日々重ねているんだ。



東大のことを教えてもらうなら、この人しかいないだろう。
五神真・東京大学総長だ。

率直に言って、面会してすぐ、まだ言葉をほとんど交わしていない時点ですでに心を打たれた。何に感銘を受けたのかといえば、五神総長の佇まいだ。ひとことで言えば、「品」だな。微笑をたたえて柔らかい物腰ながら、まなざしはまっすぐ。相手を、というか世界を肯定している雰囲気が、周りを深いところで安心させるのだ。
大学という場で学びや知を探究し続けてきた結果としてこの「品」を持てたというのなら、それだけでも「知」を武器にして生きていくことが、目指すに足るものだという証明になるな。


「知識集約型社会」への転換が起きている


五神:今日は明るい未来の話をしに来ました。

五神真(ごのかみ・まこと)/東京大学総長
1957年東京都生まれ。1980年東京大学理学部物理学科卒業。理学博士(東京大学)。光量子物理学を専攻。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授、東京大学大学院理学系研究科長・理学部長などを経て、2015年より第30代東京大学総長。日本学術会議会員、未来投資会議議員、中央教育審議会委員、科学技術・学術審議会委員、産業構造審議会委員、知的財産戦略本部本部員、一般社団法人国立大学協会理事(顧問)などを務める。

桜木:五神総長がそう切り出す。
ん、少々意外な言葉。というのも、日本の大学を取り巻く状況を虚心に見れば、あまり明るい材料を見出せるものではない。少子化で学生の確保は難しくなるばかり、大学改革の波が迫る一方で、公的資金は抑制されて研究・教育の質を保つのもままならぬ……。
大学にかぎらず社会全体に目を向けても、政治・経済・社会・国際・環境その他、あらゆるジャンルで行き詰まりはあって、先を見通すのが難しい時代にさしかかっているのも感じるところだと思うのだが……。

五神:眼前に課題が山積しているのは承知していますが、だからこそ未来のあるべき姿を構想し、明るさを見出して語りたいのです。大きな変革期を迎えつつある世界のことを考えてみるにつけ、大学こそ社会をポジティブな方向に変える力になり得るという確信は深まるばかりです。東京大学は、社会の未来をより良いシナリオへ導く原動力になれます。そのことを知っていただきたいのです。

桜木:これはかなり踏み込んだ言葉に思える。いままで大学といえばまずもって「学問の府」であり、社会がどうあろうとも「象牙の塔」として独立した立場を保とうとしていた印象だ。五神総長の言葉からすると、これからの大学は、社会変革の先頭を切るのだという。
日本の大学の象徴たる東大がこれほど大きなイメージチェンジをするとなれば、かなりのインパクトになる。なぜいま、大きく舵を切ろうとするのか。

五神:最近の大学改革の議論が、人口の減少を背景に、大学の活動を縮小していくような方向に見えるからこそ、大学が社会変革を駆動しなければと思うのです。
いま、私たちの社会や経済は大きな転換期を迎えています。
私が総長になった2015年から現在までを見ても、社会は大きく動き続けてきました。世界各地で保護主義が台頭し、金融不安が起き、テロもなくならず、サイバーテロも多発するようになり、世界はますます不安定になっています。
一方、科学技術の高度化が進み、私たちの生活にも深く入り込んでいます。例えばインターネットが発明されておよそ30年が経ちますが、私たちはスマートフォンというデバイスを持ち歩くようになり、やりとりする情報がテキストベースから画像や動画へと移りました。それにより、人と人とのつながり方のかたちが明らかに変わりましたね。
日本社会に絞って見てみれば、少子化と高齢化の急速な進展は、社会経済へ与えるインパクトが甚大です。2025年には、人口分布における最大のボリューム層たる《団塊の世代》が75歳を超え、「超高齢社会」が到来します。私たちが経験したことのない社会構造となるわけです。
もし高齢者の要支援・要介護比率が現状のまま変わらなければ、超高齢社会の到来にともなって、現在の主要な労働力である団塊ジュニア世代が大量に介護離職しなければならなくなります。少子化も同時に進行しており、ただでさえ現役で働く世代の人口が少ないというのに、これでは2030年を迎えるころの日本国内のマンパワーは圧倒的に不足してしまいます。

桜木:なるほど、日本社会の危機は「いま、目の前にある」のだ。ただ手をこまぬいているわけにはいかないし、本当にもう時間がない。早急に何らかの方策を打ち出さないといけないわけだが……。

五神:そこで、高度化する科学技術を有効活用することによって、事態を打開するということに期待したいのです。
近年の科学技術の急速な発展と、それがもたらす社会への影響が顕著なのはだれもが承知の通りです。インターネットなどの情報通信技術の発展によって、社会のあらゆる産業・サービスが「スマート化」されつつあります。
サイバー空間上に集積されたビッグデータを基にして、それをAI解析などのテクノロジーでリアルタイムに分析・活用することで、あらゆる価値創造の方法が刷新されていくという「デジタル革命」が起こっています。モノではなくデータや情報が世の中を動かすのが、スマート化された社会です。スマート化がうまく実現すれば、マンパワー不足やその他の課題の多くが解消されると期待できます。
スマート化するのは、最先端の産業だけではありません。サービス業でも農林水産業でも、あらゆる分野でこれは起こっているのです。例えば農業では、これまで土地柄や文化の影響で、日本の農業はどうしても小規模農地で展開せざるを得ませんでした。生産性を上げるために農地を集約し大規模化しそこで機械化を進めるという資本集約型の発展モデルが実現できなかったのです。
ところが、「スマート農業」では、農地にセンサーを導入し、きめ細かく各小規模農地の状況を把握します。また、気象条件も逐次チェックし、データ管理・AIによる解析を徹底させます。このようにして繊細に作物を育てれば、小規模耕地でも高い生産性を達成できるようになるのです。そうした例はすでに各地で見られます。
スマート化によって、性差やハンディキャップの有無、住んでいる場所が都市か地方かといった区別なく、等しく社会に参加できる道筋が開けます。テクノロジーをうまく使えば、持続可能でインクルーシブ(包摂的)な経済社会システムが実現できるのです。

桜木:日ごろの生活のなかで、「ああ便利になったな」と感じることはままある。
それはひとえにテクノロジーの進化のおかげ。が、スマート化のもたらすものは、そうしたちょっとした便利さだけじゃない。我々の日常の想像を軽く超えていくような、人類史的な大転換が起きていると捉えるべきだと、五神総長は言うのだ。

五神:多くの先進国は、農業や牧畜を中心とした「労働集約型社会」から、産業革命を経て、大規模な工業を中心とした「資本集約型社会」へと変遷するなかで発展してきました。明治時代の殖産興業も、戦後の高度経済成長も、この資本集約型の発展を目指したものでした。
これからは、スマート化によってさらにフェーズが変わり、あらゆる産業が高付加価値化します。知恵が価値を産み、個を活かす「知識集約型社会」への不連続な転換、すなわちパラダイムシフトが起こっているのです。
20世紀までの「資本集約型社会」は、モノを中心にして回っていました。高度経済成長期の日本で洗濯機、テレビ、自動車などが人の憧れをかき立てたように、モノが価値の源泉でした。
21世紀の「知識集約型社会」はそうではありません。人が求める価値は健康長寿、格差解消など、様々な課題解決です。モノではなくサービスが価値の中心となっていきます。その価値を生み出すのは知恵や情報(データ)であり、それらを十分に活かすための社会システムが必要です。
現在は、人類史を画する産業・社会構造のパラダイムシフトのさなかであると認識すべきです。そんな時代にあって、私たちは新しい経済社会のあり方をみずからの手で築いていかねばなりませんね。

桜木:知識集約型社会へのパラダイムシフトが、ごうごうと音を立てて進行中と見立てる五神総長は、そんな時代だからこそ大学の意義と存在感が最大限に高まるというんだ。


大学の役割は、こう変わる!


桜木:どの方角から眺めてみても、今後しばらく世の中の大変化が続くのは不可避だ。
そう認識する五神真・東京大学総長は、日本がどう舵を切ればいいのか、そのとき大学は何を担うと考えるのか。

五神:私たちは、歴史の大きな節目に立っていると同時に、未来を明るく、人類全体にとって良いものにできるかどうかの分水嶺にも直面しています。
知識集約型社会においてはデータがきわめて重要になりますが、デジタル革命によって、すでにたくさんのデータを持っている一部の企業や国家がデータを独占し、データを持つ者と持たざる者の間に決定的な格差や断絶が生じてしまう心配があります。知識集約型社会への大変化により、負のシナリオがもたらされる可能性もあるのです。
逆に、うまくテクノロジーを活用することができれば、すべての人が意欲を持って社会に参加し、多様性を活力として発展する未来が得られるはずです。現代を生きる私たちは、より良い未来社会のシナリオを積極的に選び取らなければならないのです。

桜木:日本は良いシナリオに沿って、うまくデータ駆動型社会へと転換できるかどうかは、我々次第ということだ。いまを生きる者の責任はまこと重大なもの。では良き転換のカギとなるのは何か。そこでまさに大学の出番だと、五神総長は言う。

五神:大学には、知と人と技術が集積しています。日本全国にある国立大学は、知識集約型の新しい産業のハブとなる機能と能力を備えています。各大学内では、多様で奥行きのある研究が日々行なわれているのですから、価値創造につながる新たなアイデアや課題へのソリューションを実社会へ提供できるのです。
たとえば、データ社会の負の面、格差や断絶を助長してしまうような方向へ世の中が進まないようにするには、テクノロジーを進化させることだけではなく、それをどのように使えば多くの人々をより豊かにできるか、社会経済の幅広い分野からアイデアを募る知恵が必要です。
その点、東大には法学部もあれば経済学部も文学部もあります。時代やテクノロジーの進化に合わせた法制度はどうあるべきか、新しい経済成長戦略をどう立てるか、より多くの人々が生き生きと暮らせる社会をつくるために哲学や思想がどのような役割を果たせるか……。さまざまな観点から課題を考える人材が揃っています。
テクノロジーと社会システムや経済メカニズムを結合して未来のあり方を探るのは、たいへんクリエイティブな作業になります。各分野の学問は、これからきっとますますおもしろくなっていくでしょう。

桜木:いたるところで、そうした未来を構想する研究や議論が巻き起こっているのだとしたら、大学とはなかなかエキサイティングな場だと信じられる。「すこしでもいい学歴が欲しいから」「就職に有利だから」といったことを大学に通う意味だと考えているのが、ちょっとばからしくなってくるではないか。


五神:大学における教育・人材育成の目標も、おのずと変わってきます。
社会が資本集約型の工業立国を目指し、成長のためのロードマップが明確だった20世紀には、大学は「人材の高い発射台」であることが求められていました。学生にしっかり学問の基礎を身につけさせて社会に送り出せば、大学の役割は果たしたとみなすことができたのです。
いまはそうではありません。獲得した知識や情報をどうやって生かし、価値をつくっていくか、学生も教員もともに考えなければなりません。学生のうちにどんな力を身につけるべきか、皆で試行錯誤しながら進むのです。
大学はもはや、有利な条件で社会へ進むためのパスポートを得る場所ではありません。大学に関わるすべての人が、ともに新たな価値創造をしていく場へと転換しつつあるのです。

桜木:そう聞くと、これから大学へ入ろうとする側も、考えの転換が必要になってくることに気づかされる。
かねて言われてきたことだが、受験に合格して大学に入るというのは、スタート地点にして通過点でしかない。そこで喜びすぎて、過度の達成感に浸っているようではいけない。
言うまでもなく大学に入ってからが本番なのだし、そこで何をやるか、どう過ごすかが問われるのはあたりまえの話だ。
そのときに、五神総長の語る大学像は、大いに励みとなるだろう。大学に入ると、未来の価値を創造する場で、その創造の一翼を担うことができるようになるのだから、その悦びと責任に打ち震えるべきだろう。
どの大学も昨今は「改革だ」「未来へ目を向ける」などとPRに余念がないが、多くの場合はお題目として唱えるに留まっているように見える。正直なところ、ここまで踏み込んで構想を立て、みずからの役割まで転換させようとする大学のビジョンを、ほとんど聞いたことはない。ふと気になった。五神総長がかくもはっきりと変革をうたう決意をした根っこには、何があったのだろうかと。

五神:私自身も東大の工学部と理学部で長らく研究室を持ち、マンツーマンで指導してきた教え子がこれまでにおよそ100人います。手前味噌ですが、たいへん優秀な人たちばかりです。7割ほどは産業界に活躍の場を求めていきましたが、このところの産業構造の変化の影響か、その人たちが能力を存分に発揮できない例が少々見られるようになってきました。
本来ならいまこそ大活躍して、社会の中心的存在になってもらわなければいけない能力を持っているはずなのに、これはたいへんもったいないことです。そうした例はきっと他の場所でも起きているのではないか。大学がビジョンを示し、みずから変わり、産業界を含めた多くのセクターと一緒になって行動し、良い方向へ社会変革を導く。それが、ひいてはそれぞれの人が自分の居場所で能力を最大限に発揮して活躍できることにつながれば。そう考えたのがひとつのきっかけになりましたね。

桜木:なるほど教え子への思いが、原点のひとつにあったわけだ。次回、東大流の大学改革の実態について、さらに詳しく教えてもらおう。


東大流「大学改革」の実態


桜木:来たるべき知識集約型の社会において、大学は価値創造の一端を、いやそれどころか中心軸を担うことになるというのが、五神総長の見解だ。そのための布石はすでに、各分野で着々と進んでいる。

五神:産学連携の重要性はよくうたわれていますが、東京大学ではそれを一歩進めた「産学協創」に取り組んでいます。大学と企業がトップ同士で未来社会のビジョンを共有するところまで踏み込んで議論し、その実現に向けて組織対組織でリソースを総動員して具体的に連携するのです。
会社が困っている事案に東大がソリューションを提供するという従来型の連携に留まらず、どんな価値を社会に提供すべきか、というところから一緒に考えて価値創造を行うのです。

桜木:これは実際に、大型のモデルが動き出している。昨年12月、空調大手のダイキン工業と東大が協定締結をしたとのニュースだ。ダイキンは今後10年、毎年10億円を拠出して、その半分を東大関連のベンチャー企業支援にあてるという。
ダイキンとして今後は空調機器を販売するだけでなく、「空気」全般の新しい価値を見出し、新ビジネスを創出していく意思があり、その際に東大と「協創」したいということだろう。東大側も喫緊の課題としてグローバル人材の育成があり、世界150カ国でビジネス展開するダイキンのネットワークは大きな魅力ということのようだ。
ここで出てきた「東大関連ベンチャー」はこのところ急増しており、その数は現在約330社に上るという。

五神:最近、東京大学本郷キャンパス周辺にベンチャー企業、ベンチャーキャピタル、民間インキュベータ、コワーキングスペースなどが集まり、知識基盤型産業の集積拠点を形成しつつあります。
超初期のスタートアップや社内ベンチャーを育成するプログラム「東京大学FoundX」も始まっています。企業とスタートアップがより連携しやすい仕組みをつくり、初期の製品開発や顧客獲得の支援をしようというものです。
本郷エリアを、日本全体のイノベーションの実験場にしていけたらと考えています。

桜木:大学が新しい産業・ビジネスの創出も担うという勇ましい掛け声は、こうした動きも踏まえてのものだ。
さらには、情報インフラの面でも、大学は基盤になれるという。どういうことか。

五神:モノが価値を持った20世紀の産業インフラといえば、高速道路や港でした。それに対して、知識や情報、そしてデータが価値となる21世紀に最重要な産業インフラは、情報の通路となる通信網です。あまり知られていませんが、日本の大学の持つ情報通路はたいへんなハイスペックなのです。これを活用しない手はありません。
日本にはすでに学術情報ネットワーク(SINET)という、他国と比較しても極めて優れた超高速通信網が整備されており、全国の大学を結んでいます。これを使えば大学は、衛星画像や気象観測データをリアルタイムで防災に活用したり、医療情報などの公的なビッグデータを活用して健康維持に役立つシステムを作ったりする拠点となれます。
この情報インフラを使って、新しいデータ駆動型社会のビジネスやサービスをぜひ開発しようという動きが、これからどんどん出てくるはずです。
政府が先般のダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)を契機に、「信頼ある自由なデータ流通」のための体制づくりを国際社会へ呼びかけるなど、日本は国を挙げて、知識集約型社会の構築に本腰を入れ始めていると言っていいでしょう。
情報インフラの優位性は、日本の国際競争力増強のチャンスにつながると考えられます。ほかにも日本は、労働力不足が深刻なので必然的に新しい技術の開発・受容に寛容であること、教育とりわけ数学分野のレベルが非常に高いこと、さらにはICT技術のパイオニアである団塊世代にまだまだ働ける人材が豊富にいることなど、競争力を高めるために寄与できる条件が多々揃っています。
国際間の経済競争の観点では、日本はこのところ明るい材料をなかなか見出せない印象がありますが、目指す方向を知識集約型社会へと定めれば、ウィークポイントと考えられている点が強みに転化しそうな話はたくさん転がっていますよ。
各地の大学には、データ駆動型社会のハブ拠点になるためのインフラが、すでに整っているのです。

桜木:象牙の塔たる大学のイメージを、どうやら本気で完全に刷新するつもりのようだ。

五神:世界のかたちをより良い方向に変えたい、変える中心を大学が担おうということを、大学の経営目標にするというのは、世界的に見ても相当に新しいことのようです。ダボス会議などの国際会議に出席した際にこうしたビジョンを語ると、各国の大学人にはかなり驚かれますが、賛同してくれる人も多いです。
20世紀の資本集約型社会の成長モデルの中だけで大学を位置づけて議論していても、明るい話題は出てきません。18歳人口が減っていく中でどのように学生を確保すれば良いのか、とか、公的な研究費が抑制傾向にある中でどうしたら少しでも多くの財源を確保できるのか、などといった話に終始してしまいます。
ところが、大学が価値を創造する場となり、経済社会を支える重要な一角になることを新たなミッションとして掲げれば、大学のポテンシャルの高さは際立って見えてきます。長期にわたって築いてきた社会的な信用、意欲や新しいものへの感受性を持った研究者や学生の存在、先ほど紹介した情報インフラなどシステムの充実ぶり、卒業生や国際的なネットワーク……。重要なものが勢揃いしていて、大学の未来はきわめて明るいものに思えてきます。

桜木:大学が21世紀型の新しいかたちを模索するとき、東大はやはり特別な役割、使命、立ち位置を占めるということになるのか。

五神:東京大学は歴史ある総合大学として、非常に多様性に富んだ環境を持っています。新しいことに喜んで挑む教員と学生に満ちています。新しいものがどんどんクリエイトされ、日々何かが起こっている場ですから、何かワクワクすることを心から求めている人、変化を楽しもうという気のある人は、東京大学で大変充実した時間を過ごせると思います。
私から言えるのは、いまここではとてもおもしろいことが起きているので、ぜひみなさん来てくださいということに尽きます。
大学は来る人の年齢や立場を問いません。入学試験という関門はたしかにあるのですが、それにあまりとらわれてほしくはありません。入試は点数という一つの尺度の中での競争ですが、大学に入学した後は、そのような競い方はしなくなります。
大学に飛び込めば、多様な価値の存在を知り、それらに実際に触れられます。そんな環境のなかで、自分が大切にする価値を探求し、突き詰めていく。こんな楽しいことはほかになかなかありませんよ。

桜木:なるほど、五神総長が最初に「明るい話をしたい」と言った真意がよくわかったな。これから社会は大きく変わる。他者の大切にしている価値を知り、自分が抱えていくべき価値を探し求めることが重視されるようになっていくと、五神総長はいう。深くうなずけるところだ。
さらにいえば、そうした探究の過程、それこそが「学び」と呼ばれるものの正体なんだぞ。今後、これからの「学び」を、オレたちもさまざまな角度から深く探っていくぞ。
「学び」が中心となる時代において、大学はその拠点として、確固たる地位を占めるのだ。五神総長の言葉の数々を、そんな宣言としてまずはしかと受け止めておこうじゃないか。


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