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『天晴!な日本人』 第68回 智謀湧くがごとしの辣腕(らつわん)実務家、児玉源太郎(こだまげんたろう)(1)


<緊急「大」ニュース!?>

来たる2024年2月16日、いよいよ『天晴!な日本人』がワニ・プラス社より満をして刊行されます。
大久保、小村の他、乃木希典まれすけ、桂太郎の愛妾の、凜とした美人のおこい、高橋是清これきよ、小野寺まこと、東條英機、樋口季一郎ひぐちきいちろうの、日本人の魂を伝えます。
安倍さんの偉業とメディアについても詳述しているので、今後の参考にして下さい。
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<本文>

<百年に一人の戦略家と称された人>

日本が、日露戦争という明治の一大国難に勝って、一躍、世界の列強の一角に躍進したことは、これまでに再三にわたって叙述してきた通りですが、その立役者となったのが、満州軍総司令部の参謀総長となった児玉源太郎でした。
それ以前、児玉は陸相、台湾総督、内務相という重責を担う立場にありましたが、対ロシア戦の戦略・戦術を練っていた、「今信玄」と称された田村怡与造いよぞう参謀次長の急逝により、陸軍大将、陸相の身でありながら、2階級も下の参謀次長になることを厭わないどころか、国家危急の折り、自分しかいないと、自ら着任した傑物です。

大将、各大臣、台湾総督は、天皇自ら任命し、直々に謁見した上で辞令を与える親任しんにん官で、最上級の役職でした。
対して、参謀次長は陸軍少将の階級の者が就く地位で、天皇の謁見はなく、勅令ちょくれいで任じられる勅任ちょくにん官であり、官として高位であっても歴然とした差があったのです。
それを意に介さず「引き受けた!」というのが、児玉の人格をあらわしています。

海軍に智謀あふれる秋山真之さねゆきいれば、陸軍に児玉あり、と呼ばれた大戦略・戦術家です。
明治陸軍の参謀や、戦略・戦術面を教育したのは、1885(明治12)年に来日したドイツ陸軍の戦術家のメッケル少佐でしたが、そのメッケルをして、「日本に児玉がいる限り、ロシアには負けない!」とまで断言させた軍人でもありました。
今回は、その児玉を紹介します。

<生い立ちと苦境>

児玉は長州、今の山口県の出身です。厳密には、毛利の支藩の徳山藩、今の山口県周南しゅうなん市で生まれています。
1852(嘉永かえい5)年うるう2月25日、藩士の児玉半九郎忠碩はんくろうただひろの長男として出生しました。乃木希典のぎまれすけより3歳、下です。
閏は、太陰暦なので、調整のために1カ月、余分に入れられた月のことでした。

父の半九郎は早くから尊王論を唱えたことと、狷介けんかいな性格で藩内で敵が多く、自死に追い込まれています。
児玉が数え5歳の1856(安政あんせい3)年のことで、規則によって中継ぎ養子をとることになり、姉の夫の次郎彦じろひこ婿むこに入りますが、暗殺されたのです。
ここから、武士の子ながら、児玉の貧窮生活が始まります。商家や周囲を頼っての赤貧暮らしでした。

時代背景としては、児玉誕生の翌年にペリーが来航、日本には尊王攘夷そんのうじょういの風が吹き荒れていました。
要は、ペリー来航におたおたした幕府をの当たりにして、諸藩が「幕府、何をやっとるんじゃ、本当の統治者は天子てんし様じゃないか」と、天皇を敬い、ついでに日本に脅威を与える外国に対しても、「なんぼのもんじゃい」と排斥はいせきを企図し、こちらの方は軍事力の圧倒的な差で、開国にシフトしたということです。

1865(慶応けいおう元)年7月、児玉に25石を与え、次郎彦の養子とするという沙汰さたが下ります。
児玉は、幼名の百合若ゆりわかから源太郎忠精ただきよと改名し、元服しました。新しい屋敷も与えられ、中小姓ちゅうごしょうとして出仕します。
1866(慶応2)年6月に、幕府による第二次長州征伐せいばつが始まりますが、第一次の時と違って、この年の初めに薩長同盟が成立し、長州は薩摩の斡旋で新式の武器も揃え、「幕府、どっからでもかかってこいやっ!」でした。
難なく撃退し、時代は1868(慶応4)年の戊辰ぼしん戦争となります。この年9月、明治と改元されましたが、児玉は長州藩の250人からなる献功けんこう隊の半隊はんたい司令として17歳で初陣ういじんを飾ります。
半隊司令とは分隊長のことで、20人の部下を持っていました。その上には小隊司令士、さらに上に中隊司令士がいて、半隊司令は12人でした。

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