ツッパリってなんだ?! 『フィスト・ダンス』 第117回 「有名なんて煩(わずら)わしい」


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<お知らせ>

年末年始のため、12月21日 09:40以降のコメントへの返信は1月11日アップになります。

<本文>

「有名病ですか?そんなものらないのに」

「そうは言っても、あれだけの人の前で、あんな強さを見せ続けていたら、有名にならん方がおかしいだろ。これから、もっと有名になるぞ、翔太は」

天野の言う通りだ。この頃は街を歩く度に、菊山だと言われるようになった。
中には菊山だ、と呼び捨てにする奴もいて、その度に翔太や、他の面々は、「誰を呼び捨てにしてんだ」とたしなめることが増えている。
いきなり、知らない奴が「菊山君ですね、よろしく」みたいな挨拶も再三のことで、いささか、うんざりしているのが本音だ。
芸能人が、有名になりたかったという気持ちが、わからない。自分のことを知りもしない連中に親しげに付きまとわれるのはわずらわしい。
おまけに今日のように、菊山と親しいなどという嘘を平気で言える奴は人としてけがらわしいとさえ感じている。
虚勢、虚栄心で己を大きく見せる、その精神がいやしく浅ましいのだ。

「至誠にもとるなかりしか」
「言行に恥じるなかりしか」

海軍五省の、この言葉に対し、自己嫌悪にならないのか、その精神も軽蔑に値するものだった。

「俺は、呼び捨てとか、マーボと親しいなんてフカシ入れられる以外は有名でいいけどな」

マーボが言うと、トミーも肯定し、丈次たちは翔太の顔色を窺って黙っていた。

「丈次たちも、有名な方がいいか?」
「えっ、そりゃ、有名じゃないよりは。なあ」

翔太に問われた丈次は、洋一と司に同意を促した。2人とも、うん、とうなずいている。

「いや、マーボらと翔太の知名度は全然、違うだろ。翔太くらいになると邪魔くさくかんじるのかもな。それに翔太は男らしくない奴は嫌う方だしな」

天野の指摘する通りだった。
翔太は臆面おくめんもなく嘘をつける、自分を大きく見せようと虚勢を張る腰抜けが大嫌いなのだ。
そういう輩には誠実さも真実もない。注意深く言葉を聞いていたら、すぐに嘘とわかるようなことを平気で言う性根しょうねきたないのだ。

「おまえら、よく考えてみろ。不良でなくてツッパリって何だ」

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