学びを深めるデザインって、どういうもの? 〜PBL実践のための基礎スキル講座〜

こんにちは。ミテモの高橋昌紀です。

2019年2月10日に東京で開催された「PBL実践のための基礎スキル講座『学びを深める基礎的なデザイン|インストラクション』」に参加してきたので、その内容をレポートします。
なお本企画の主催団体である BEYOND / Cには、ミテモも運営事務局として携わっています。

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【読了時間: 8分】
(文字数: 3,500文字)
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PBLとは

そもそも、PBLとは、なんでしょうか。
実は、講座に参加する前にはまったく知りませんでした。
調べてみて結論として、一言でまとめると「PBLとは、学びのプロセスを重視した学習理論と教育法」であると、おおよそ理解しました。

今回の「PBL実践のための基礎スキル講座」の内容に触れる前に、ちょっとだけ、PBLが何かを整理しておきたいと思います。

PBLが何の略称なのでしょうか。
これは、「問題発見解決型学習(Problem-based Learning)」または「プロジェクト型学習(Project-based Learning)」の頭文字を取っているそうです。

「三重大学高等教育創造開発センター・学生向けPBLガイド」にまとまっていた定義がわかりやすかったので、そのまま引用します。

PBL授業は、学生の主体的な学習活動が中心の授業です。教員の役割は何かを教えることではなく、学生の学習を支援することです。次のような特徴があります。

・4~8人(授業によって変わります)の学生で1つのグループを作り、学習に取り組む
・予備知識に関わらず取り組むべき問題事例が示される
・グループで問題解決のための学習計画を立てる
・授業時間外に個人で自己学習を進める
・学習に必要な学習資源(文献・資料)も自分で適切なものを選択する

とのことです。
この特徴を読んでみると、なんとなく、どんな授業がおこなわれるかのイメージがつくかもしれません。

ここまで考えてみて、次に浮かぶ疑問として、これは「学生のための理論と方法なのか」というものがあります。
会社組織や、まちづくりや非営利活動などのコミュニティの中にいる人が知ることに、意味はないのでしょうか?

結論から言えば、これは組織人、社会人こそ知っておくべき理論と方法かと思います。それがなぜかを、今回私が体験した講座のレポートを通してお伝えしていきます。

当日の流れ

今回の講座の流れを一通り整理すると以下です。

前半は、講師の井澤 友郭さん(ワークショップ デザイナー/こども国連環境会議推進協会 事務局長)と、吉岡 太郎さん(株式会社エイチ・アール・ディー研究所)から、PBL学習の背景になるような理論と知識を整理して伝えていきます。
このパートも、ただ単に一方通行の知識教授ではなく、参加者どうしが対話して思考するような設計になっていました。

後半は、いよいよPBLのデザインをグループワークを通して実践していきます。といっても、参加者も私含めてはじめてPBLにふれる人が多くて、いきなり事例なしでPBLを組み立てるのは難しい。そこで、実践例として、中学生向けに実施された「国連弁当を決める」というワークショップを取り上げて、それをタイムラインに沿った学習活動に要素分解して模造紙にまとめてみる演習に取り組みました。各チームが書いた模造紙を読む時間もありました。
※国連弁当とは、国連で会議のときに出す食事のメニューを話し合いで決めるゲームです。

そして最後に仕上げとして、グループごとのアクションとして、自由にテーマを決めて、対象の受講者を想定したうえで中心となる問いを立てて、PBLを設計していく演習を行いました。その内容は模造紙にまとめて、各チームを巡回して読むことができるようにしました。

気づき

今回参加した講座では「学びを深める」という概念を中心に置いていました。学びを深める、とはどういうことか。

この概念こそ、PBLと、古くから学校で馴染んできた「知識注入型教育」の決定的な違いではないかと思います。

知識注入型の場合、学びが深いかどうかは問いません。持っていない知識を得ることが学びの目的です。そして、学びが成功したかどうかは、正答判定型のテストで測定されます。

それに対してPBLの目的は「問題発見、解決能力を身につけること、高めること」にあります。目的が知識ではなく、人に置かれているということです。

人が主体であるならば、能力の開発、習得のプロセスには人によって千差万別であり、それは1か0かではなく、グラディエーションとして捉えることができます。つまり、「学びの深さ」が存在することになる。

PBLをデザインするときには、学びの深さを問う姿勢が極めて重要になる。それを学ぶことができた時間でした。

そして先程触れた「PBLは、組織人、社会人こそ理解しておくべき」ということについて思うことを書きます。

PBLに自主性を持って取り組む経験を重ねると、人はどのように変化するか?そこを考えてみます。

日常的な業務のサイクルに追われて思考が少なくなってしまっている人にとっては、PBLの構造を持った研修は、最初は苦しく感じることも多いかもしれません。しかし、だんだんと本来人が持っている学ぶ力を取り戻し、探求者の姿勢を持てるように成長するだろう、と考えます。

それによって、社員ひとりひとりの思考力が高まるとともに、チームメンバーが連携してアウトプットを作り出すコラボレーション力も大きく向上することが予想されます。

そのチームで生み出す力こそ、いま、そしてこれからの未来において、組織が価値を生み出すための根本となるだろうと思います。

今回の講座には、学校の先生以外にも、企業の人事部門の方も何人も参加されていました。私のグループにも一人おられ、その方は「社員がリーダーシップを身につけるにはどうしたらいいのか」という悩みを抱えておられました。

リーダーシップというのは、自主性に基づく行動。したがって、与えることはできません。そうはいっても、会社としての課題が、社員のリーダーシップを高めること、と設定されたのであれば、人事部門の研修・能力開発担当の方は、それをどう実装するかにトライする必要が出てくる。それはよく分かる話です。その方も、実装のヒントを求めて今回の講座に参加されたようでした。

私のいたグループが最後の演習で立てた問いは「ロボットを活用して楽しく生きるには?」という、企業内での課題にはなんの関係もないテーマでした。とはいえ、テーマ自体が大切になわけではなありません。あくまで「問いを立て、それに沿ったPBLを設計する」ことを学ぶのが今回の講座の目的だったので。むしろ、普段考えない突飛なテーマを材料にPBLを設計することができたなら、日常的に考えている業務上の取り組みを材料としたPBLの設計はそこまでハードルは感じないように思われます。

その人事担当の方の、講座における真剣な学びの姿勢と集中は、素晴らしいものがありました。

必ずしもPBLを会社の研修に取り入れていくかどうかは分かりませんが、それも結局PBLをやること自体は目的ではありません。目的は、社員の方々の能力を引き出し、チームでのアウトプットを高めていくこと。そのための有力な武器の1つとして、PBLの思考法と実践法を、組織に関わる人が身につけていくことは、望ましい有り様ではないかと思います。

講座の情報

最後に今回のシリーズ「PBL実践のための基礎スキル講座」について整理します。

このシリーズは、全体としては「受講者がPBLを企画し、デザインし、ナビゲートし、学習者に学びとして定着させるまでの一連の流れの中で教授者が必要となるスキルを、体系的・網羅的に身につけることができる」ことを目指しています。

1.学びを深める基礎的なデザイン|インストラクション
2.対話が促進される有機的なチームビルディングと校外協力者の巻き込み
3.主体性・積極性を学習者から引き出すためのデザインとファシリテーション
4.プロジェクトを円滑に進め、豊かな学びにつなげるサポーターとしてのスキル

という4つの講座から成り立っており、私がこの日参加していたのは 1.になります。2から4についても、これまでに BEYOND/Cにて開催しています。

PBLの講座に関する今後の開催情報はBEYOND / Cのウェブサイトからお届けしています。いち早く情報を受け取りたい方は、ぜひサイト下部から会員登録を行ってください。
https://www.beyondcommon.org/

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《参考資料》

三重大学  高等教育創造開発センター 学生向けPBLガイド
http://www.hedc.mie-u.ac.jp/pbl-student/chap1.html


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