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まちのね開催レポート〜宮崎市児湯郡新富町でサウンドレコーディング〜

こんにちは、寒いですね。小林ひろです。
さて今回は、宮崎県新富町で行われた音楽プロジェクト「まちのね」のワークショップのレポートをしたいと思います。

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【読了時間: 15分】
(文字数: 7,500文字)
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「まちのね」は去年神田錦町で行われた「Music for KANDA-NISHIKICHO」でのフィールドレコーディング・ワークショップを様々な地域でもできるのではないかという想いから立ち上げられました。宮崎市にはミテモの地方担当の谷口まりかさんが住んでいて、彼女と一緒に宮崎をスタート地点にしてやってみよう!ということになりました。まりかさんの活動や経歴を見てみるとなんだかワールドワイドなんです。

彼女は基本、宮崎に住みつつリモートでお仕事をしているので、「まちのね」もリモートでのやり取りの中から立ち上がっていきました。私がこのプロジェクトをやれたらなぁと、それとなくまりかさんに言った次の日には、もうプロジェクトが立ち上がりました。

その次の週には、「宮崎のどこどこで開催できそう!」とか「どこどこの◯◯や、◯◯カフェのオーナーが興味を持ってくれてる!」とか「昨日どこどこのスタッフと話してきた」などなど、私の知らぬ間にどんどん進んでいるではないかっっ!!すごい仕事の早いまりかさんなのです。まりかさん頼もしい、私東京に居て何もしとらん、はい。


1.内側からまちを思考する

去年、神田錦町で実施した「Music for KANDA-NISHIKICHO」ワークショップでの「土地のための音楽」というコンセプトは引き継ぎつつ、あらたに立ち上げた「まちのね」の軸になるコンセプトはなんだろうかと考えてみました。

地方でやることの意味、宮崎でスタートする意味。

はっきりいって、、そんなに意味はない!
ただ単純に宮崎にまりかさんが居るから!
そう、この宮崎の出会いは偶然であり、必然である!=特に理由はない。(キリっ)


それでも、「まちのね」に込めた想いというのはあるんです。それは、内側からまちを思考するということ。

「???何言ってんの?」って思われるかもしれません。ちょっと曖昧な言い方ですよね。その想いが生まれたきっかけがあるんです。

最近いろいろな地域へ行くことが多くなったのですが、まちや繁華街、国道沿いの風景がどこも似通っているなぁと思うことがよくあります。

「あれ、ここの国道沿い、地元の風景とそっくり!」ってこと、無いですか?私はこういう経験が結構あります。

その原因は、同じチェーン店やスーパーがどこに行ってもあるということ。それ自体は確かに便利だし、どこに行っても同じものが手に入る、見れるという安心感があります。でも、なんだか、違う土地・風土なのに、町が画一化していっているような気がして、う〜んとなっている自分もいます。小さな商店街の個人経営のカフェや居酒屋があるとなんだか嬉しいし、なるべくそういうところに入ってしまうんですよね。

便利で大きくて同じような箱を外からポンポン埋め込んでいくようなまちのあり方よりも、もともとその町にある小さくてそのまちにしかない箱のほうが魅力的に感じるのよね。でも、もちろんその小さな箱が時代とともに機能しなくなって便利さや合理性を求めて大きな箱がやってくるってのは仕方ないっちゃあ仕方ない。とはいえ、まちの元々のあった特徴だったり、風土を知りつつ、自分たちのまちの未来を考えられるきっかけがあるといいなぁ。

そのためには、まずは自分たちの生活している場所の環境を知っていく。身のまわりの音を聴くということは、そういった感覚を養う小さなきっかけになるのでは無いかな。外側からのまちの設計だけではなく、内側からまちを思考していく。

というようなことが「まちのね」コンセプトの軸になっていきました。


2.サウンドスケープとはなんぞや?

内側からのまちを思考していくにはどのようなことが必要なんだろう。そこで参考にしていたのが、「サウンドスケープ」という概念でした。これ、そう、もしあなたが小林ヒロブログの熱心な読者であれば、覚えているはず。
お・ぼ・え・て・る・よ・ね!?

そう、「Music for KANDA-NISHIKICHO」での記事でフィールドレコーディングのことに触れたときに少し出てきたワードです。でもこの時は、難しい理論っぽくてパス!しました。てへぺろ。

で、その後、少しずつサウンドスケープのことを調べてみました。そうすると、なかなか興味深い。カナダ人作曲家マリー・シェーファーさんが提唱したサウンドスケープ。

日本語では「音景」とも訳され、個人や社会がどのように音を知覚しているか。そしてそのような音との関係性は時代や社会状況によって異なり、私たちが生きる環境を捉えるためのひとつの指標になる。

ふ、ふ、ふむふむ、。つまり、??

要するに、自分たちの身の周りの音に意識を向けてみると、もしかしたら自分たちの居る場所ってこういうものなのかなとか、普段は気が付かない場所の姿や特徴を改めて発見出来て、もっと自分たちの生きてる世界がわかるんじゃね!?ってことだよね、シェーファーさん!!!???(相当、要約した)

サウンドスケープは様々なところでこの概念は応用されてきたそうです。今では日本でもサウンドスケープ協会なるものかもあるらしい。

そして、サウンドデザインとサウンドスケープとの違いは、前者は音そのものに着目して、音そのものをデザインしていくことに対して、サウンドスケープは音環境全体とそこに生きる人々との関係性を問題にして「聴き方を学ぶ」ことから始め、それによって、周りの音や環境を意識することを促す。といった教育的な側面が強いそうです。

ふ、ふむふむ。つまり、ソフト面に着目するのではなく、その土台のハード=環境に着目していくという考え方なんだよね、そうだよね、シェーファーさん、!!(無理矢理感)そして彼はサウンドスケープのデザインは感受性の備わった個人や小さなグループから始まり、それが水面の波紋のように広がっていくプロセスが重要だと言っています。これはまさに内側からまちが設計されるってことと繋がる気がする。

・・・・ちょっと難しい言葉や概念がたくさん出て来て、もうお腹いっぱい。

とにかく!!身近な音を聴くということと、自分達の住む世界を知るということは、とても繋がりがあるってこと!!(バッサリ)
とにかく宮崎へ行くんじゃあああ、わしはあああ!やってみるしかないんやああああ!(逃避)


3.「こゆ財団」と「こゆ朝市」

さて、必殺仕事人のまりかさんのネゴシエーション能力によって、2月10日(日)に、こゆ財団主催の宮崎県新富町のこゆ朝市でのフィールドレコーディング・ワークショップの開催が決まりました。さすが、まりかさん。このスピード感。やばい。

こゆ財団とは、新富町を拠点に「世界一チャレンジしやすい町」というビジョンを掲げ、起業育成・支援や特産品の開発を行っている地域商社です。


そして、移住して来た人の経済活動をサポートしたり、コミュニティの参加や形成に力を貸してくれているそうです。そんなこゆ財団は新富町の商店街を人が集まる場にしたいとの思いから、毎月開催されるこゆ朝市を運営しています。

いまでは毎月30以上の出展者と、300人以上が集まる朝市になっているそうです。また、人と人との交流が生まれるきっけにもなっているそうな。
ええやん。ここでミテモクリエイター・小林ヒロと、ミテモ必殺ネゴシエーターのまりかさんと2人でミテモのブースを設け、参加者にフィールドレコーディングを体験してもらおうということになりました。今回はワークショップの2日前から宮崎市に滞在し、新富町の下見や宮崎のいろいろな場所を見ながら宮崎を知っていいこうということになりました。わくわく。

飛行機の手配や機材のチェックなど済ませてあとは、宿を取らねばと、インターネットで探してみたところ・・・・・。

は?
あん?
おい?
宿がどこも空いてない??え?なんで?宮崎市内って普通に都市だよね?え?え?この時期なんかあったっけ?・・・・。
!!!

プロ野球!!(どーーーーん)
プロ野球チームのキャンプ地はそう、ここ宮崎!!

ソフトバンクホークス、オリックスバッファローズ、読売ジャイアンツ、広島東洋カープ、埼玉西武ライオンズ・・・・・!!!
人気球団ばっかやん、なんで宮崎なん。その練習を見に全国からファンがやってくる、つまりこんな時期にギリギリで宿を取るなんて、Impossible!!!!この寒い時期に野宿は無理っていうか、一応、女子だし、!!

必死で宿を探して、民泊まで探したのにそこももう埋まってる・・・。やっと見つけたホテルは1泊35,000円なり。はい、無理。。でも、宮崎、なんだか盛り上がってんな〜、隠れプロ野球ファンとしては(プロ野球ニュース毎日見る派)ちょっと練習とか見てみたい。なんてしてるうちに、なんとか、見つかりました、喫煙部屋だけど、。ちょっと高かったし。次は気を付けよ。


4.宮崎行ってみた

宮崎空港着きました。眠い。飛行機出発が早くて4時に家出なきゃで、起きれるか不安だったから、徹夜したせいで眠い。迎えに来てくれたまりかさんの元気な声も遠のいていく。あかん、まずは新富町の商店街の下見にいくんや。空港からまりかさんの運転で走る道路沿いには空に向かって伸びる背の高いヤシの木が沢山ならんで植えてあり、気分は南国ムード。

宮崎市を越えて新富町商店街に着きました。

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おー、なるほど、さすがに平日もあってか、人はあまり居ないなあ。でも、商店街の通りはいい感じのサイズだし、お店もおしゃれなカフェや、こゆ財団の事務所、プログラミングスクールまであるぞよ。こゆ財団のスタッフさんも気さくな人たちで、無事挨拶も終わり。日曜日のワークショップが楽しみです。

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さて、ここから宮崎のいろいろな場所を、ミテモ必殺ツアーガイドまりかさんが案内してくれました。

宮崎市の中心街は思っていたよりも大きな街で、大きなアーケード通りには沢山のお店が連なっています。少し小道に入るとおしゃれなカフェや雑貨屋さんが沢山ある。特にカフェが多いんです。全部見たい。まりかさんが連れて行ってくれたカフェはコワーキングスペースが併設してあり、様々なイベントも開催しているらしい。オーナーさんに「まちのね」のことを話してみると、「商店街でもできそうだね」とか、「あそこのお偉いさんに話すといいかもしれない」とかいろいろと可能性が広がって来ました。宮崎市中心部でも出来るかも??まりかさんコネクションすばらし。

1日目のリサーチは無事終了し、2日目は宮崎市から南へ足を延ばしました。

2日目はまず、鬼の洗濯岩という岩場がある青島にいき、レコーディングをしてみました。どことなく雰囲気は江ノ島的な感じ。まりかさん、率先してレコーディングしてます。様になっている。

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それからさらに南下して、油津港へ。なんでかって?海鮮丼食べるため。これもリサーチやで(小声)。

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お腹を幸せで満たしたあと、油津駅でと商店街に行きました。そこは、広島カープがキャンプ地としているらしく、チームカラーの赤でまちが彩られています。油津駅では電車の音を録る必殺録音人まりかさん。

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その後、広島カープカラーで彩られたアーケードをレコーディングしながら歩いていると、

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某有名広島出身お笑い芸人さんとか、広島出身ミュージシャンさんたちが、広島カープキャンプの取材ロケしてる。

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まさに広島カープの第二の故郷になっているみたい。この商店街でもまりかさんの友人がJターンとして、移住してまちを作る仕事をしているそう。まりかさんのコネクションはどこまで続くのか。。ここでも「まちのね」できる感じになってきたで。

それにしても、こうやって宮崎県のなかでもまちによって、全然サイズもカラーも違うし、若い人たちもいるし、野球チームはいるし、芸人さんやミュージシャンも来るし、もっともっと色んなまちの深いところまでリサーチしたら、きっといろんな発見があるに違いない。

そういう想いを胸に抱き、帰り際に商店街のおしゃれカフェでソフトクリームのリサーチを・・・・(あくまでもリサーチです)してから明日のワークショップに備えて帰路に着きました。

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5.ワークショップ本番!!

前日の夜に一人で食べたチキン南蛮が夢に出て来てすでになんかお腹が一杯で、朝の現場を迎えました。この日は少し肌寒い。さっそく、まりかさんと2人でテントを立てて、デコレーションしたりしてブースを作りました。それっぽくなってきた。

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※今回イベント名は特別に「おとのね」にしていますが、全体のプロジェクト名は「まちのね」です。

完成したブースの周りを見渡してみると、いろんなお店が出来てる!目の前には老舗っぽい焼き鳥屋さんが焼き鳥の煙をこっちに送ってくるので、もうすでに食べたい。

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その隣りには地鶏焼き屋さんが、誘惑の炭火の香りを送ってくる・・・・。なぜ、この場所にミテモのブースが・・・。あとはたこ焼き屋さん、サバ寿司屋さん、たい焼き屋さん、お絵描き教室、サッカーゲームなど、沢山のブースがあります。

さて、人が徐々に商店街に集まって来て、まりかさんとブースでチラシを撒いたりしていると、

一組の親子がやってきました。
なんと、「まちのね」のイベント情報を見て、このために来てくれたらしい・・・・!

神・・・!泣ける。


さっそくレコーディングのやり方を説明すると、少年はスマホを片手に商店街を縦横無尽に変え巡って行きました。おお、なんかこっちも楽しくなってきたよ!少年、なんか楽しそう。少年、この発電機の音に興味を示している。少年よ、それを録るんじゃああああ!!

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なんか満足そうな顔・・・。あたしも嬉しいよ。

録音した音をさっそく、ブースに持ち帰ってスピーカーに繋げて一緒に聴いてみました。きっと録音した音を大きな音で聴いたことってあまりないだろうし、新鮮なんだろうな。スゴく楽しんで聴いていました。そして、さらなる音を求めて商店街の彼方へ消えて行きました。。。 See you again.....。

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さて少し、小腹が空いたので、目の前の屋台で地鶏炭火焼を・・・。これ!炭で真っ黒!でもこれが香ばしい香りとコリコリした食感が相まって美味なのだ。美味い。

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食った。

よしネクストレコーディングや!とは言え、お昼時なので、みんなベンチでご飯食べたりくつろいでいて、ミテモブースになかなか集まらない。どうしよう。ここは、小林ヒロ自慢の図々しさを発揮!!レコーディング機材を持ってくつろぎ中の人たちにアプローチ!!すると、ベンチでたむろしてる地元の少年達を発見。

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ピーン!ここだな。狙いを定めて、

「ぼうやたち、まちの音を一緒に聴いたり録音してみない!?」(いい女風)

すると、少年達は最初はクールそのもの・・・。興味を示さない。おい。つれないな、少年よ。

「ねえねえ、ちょっと聴いてみてよこれ、」

とヘッドフォンを渡すと、

「お、なにこれ!?」

く・い・つ・い・た!!

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普段自分達の耳で聴いている音と、ヘッドフォンで聴く音って全然違うから、それも新鮮で面白いのかも??そして、マイクやレコーダー、ヘッドフォンっていう機械も男心をくすぐっているよう。

よし、いい感じ!!
あっという間にレコーダーの周りには少年達が集まってきました。
盛り上がって来た〜!

みんなマイクを通して聴く身近な世界に興味津々で、商店街の色んな音を探したり、自分達で音を発したりしています。

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モノを叩いて音を出してみたり、
「コインを水の中に入れるよゲーム」や「サッカーボーリングゲーム」の音を録ってみたり、

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普段は見向きもしない、なんでもないものを音を通して観察しているようでした。ふむふむ。なかなか良い光景じゃ(仙人風)。

録音しまくった少年達は、自分達が録った音をスピーカーでひとしきり聴いたあと、いままでの光景がうそのように、まるで台風が去るかのごとく、次の興味の対象へと行ってしまいました。おお、なんてサッパリしてるんだか。

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でも、おかげで、音も沢山録れたし、ワークショップも盛り上がりました。
これで心置きなく、私はビールが飲めるよ。サンクス少年達。

今回、初めての土地でワークショップをしてみて、こうやればもっと人が入ってきやすいとか、 子どもは録音機材そのものに意外と興味を持ってくれるななどのレコーディングワークショッ プのメソッド、そして、宮崎のいろいろなまちの雰囲気などが分かってきました。こういった ワークショップを積み重ねることで、身近な音を聴くことで、自分達の住む場所の新たな発見 を促し、そのための感覚を養うということを少しでも伝えて行けたらなあと思いました。

しかし、これにはきっと時間はかかります。それでも、急激なスピードで外からそういったことを押し付ける形にはしたくない。じっくり、徐々に水面の波紋の様に伝わるといいなぁ。

また、こゆ朝市のような地域に根ざした催しが、そのまちの人にとってとても楽しみにされていること。今回は寒いのもあって、人が少なかったそう(少年談)。これで少ないのだから、多いときはもっと盛り上がること間違い無し。宮崎のポテンシャルが計り知れない。そして、必殺仕事人まりかさんが宮崎に居る限り、なんとかやっていけそう。

今回集まった音源を元に、こゆ朝市のテーマソングなるもの?を作る予定です。それが、こゆ朝市で流れる様子もレポートします!乞うご期待!
長いレポート読んで頂きありがとうございました。


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