ハラスメントの構造と対策について

本記事は、ミテモで活躍する眞蔵修平さんの個人ホームページのブログ「まくらことば」からの転載です。
ミテモは、サービスの一環としてハラスメント対策教育を提供し、世の中からハラスメントをなくす活動をしています。そのこともあり、ハラスメントを受けた眞蔵さんの実体験および彼なりの考察をこちらに載せることは、ハラスメントについて理解を深めるきっかけとなり、ハラスメント撲滅のさらなる一助になると考えました。
《本記事のまとめ》
・職場でのハラスメントをなくす方法を、自分の経験と精神科医から聞いた話を元に考えてみた。
・ハラスメントを行う人は、境界性パーソナリティ障害である、という理解で問題を扱う。
・その上で、個人と組織のそれぞれがとるべき対策を提案する。
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【読了時間: 20分】
(文字数: 5,500文字)
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(以下、本文)

私自身、新卒の23歳から33歳まで、転職する先々で、さまざまな組織でパワハラを受けてきました。そのため、ハラスメントを世の中から撲滅したいと心から願っています。今回は、組織としてできるハラスメント対策を真剣に考えてみたので、少々長い文章になりますが、最後までお読みいただけると幸いです。

ハラスメントには二種類ある

まず、私はハラスメントには大きく分けて二種類あると思っています。

①加害者側にハラスメントをしている自覚がないもの
②ハラスメントであることは自覚しているが、自制できないもの

これまでの一般的なハラスメント対策は、「ハラスメントはいけません」といった研修を行い、何がハラスメントになるのかを明示していくだけのものでしたが、これは、①のハラスメントをしてる自覚がない人にしか刺さりません。「なるほど、これはハラスメントになるのか。気をつけよう。」とか「自分の時代とは違ってきてるんだな。」と気付かせるには一定の効果があります。

しかし、中には②のように、自分がハラスメントをしてる自覚があるにもかかわらず、感情を抑えられない人が一定数存在します。彼らは、自分がハラスメントをしている自覚があるので、世間が厳しくなればなるほど、自分のハラスメントを隠そうとします。つまり、自分の部下たちに「ハラスメントをしていることは口外するな!」というハラスメント繰り返すようになり、ハラスメントそのものが外部から見えなくなる傾向にあります。一昔前の中小企業に「SNSの禁止」が、暗黙の規則として存在しましたが、それもそのためかもしれません(今もあったりするのかな?)。

今回のハラスメント対策は②のほうに絞って考えてみました。組織として、どう対応するのが効果的でしょうか。

その前に、「ハラスメントであることは自覚しているが、自制できない人」がどういう人かを知る必要がありそうです。

以下の内容は、私が教員免許更新研修で受けた心療内科医による講義内容をもとに、約10年間ハラスメントを受けてきた私の経験を分析したものです。

私が受けた研修によれば、クレーマーや、モンスターペアレント、DV、パワーハラスメント、いじめをする人たちは、境界性パーソナリティ障害であると理解しようというものでした。これらは全て、別々の問題ではなく、1つの精神疾患の問題として扱うという考え方です。

境界性パーソナリティ障害とは

不安定な自己 - 他者のイメージを持ち、感情・思考の制御不全、衝動的な自己破壊行為などを特徴とする障害(wikipediaより引用)。

50人に1人の割合(うつ病よりはるかに多い)で発症する精神疾患です。幼少期の家庭環境が原因であると考えられていますが、加齢により、その特徴が和らいでいくこともあるようです。

・自分でも制御出来ない衝動性
普通の人が10で怒るようなことでも120ぐらいで怒ります。異常なまでの叱責、場合によっては物を壊したり、暴力を振るったりします。

・異常なまでの疑り深さ
彼らは人の優しさや忠誠心を疑い、自分に優しくしてくれた人を、少し攻撃するなどして、試す傾向があります。それさえも受け止めてくれたら真実の優しさ、受け止めてもらえなかったら偽善だったと判断します。しかし、仮に受け止めたとしても、いつしかそれさえも疑うようになり、前回より少し強めの攻撃をし、それを繰り返します。この「優しさ確認」は永遠にエスカレートしていき、パワハラやDVに発展します。

・過度なコンプレックス
彼らの自己肯定感は極めて低く、過度なコンプレックスから、自分が持ってないものを持っている人を、引きずり降ろそうとする傾向があります。パートナーの出世を喜べなかったり、親友の陰口を言ったりします。

・虚言癖
自分の立場の優位性を示すためには、情報のニュアンスを変えたり、デマや嘘も厭いません。一度対立すれば、自分を守るために、相手を引きずり降ろすような言動がしばしば見られます。職場やSNS上で、ありもしない話を拡散させ、コミュニティから排除したり、孤立させたりします。しかもこれらは「優しさが嘘であった」という本人の思い込みだけから発展することが多いので、被害者からすれば、全く身に覚えがないことだったりします。

・権威主義
目上の人には媚を売り、そうではない人には、自分を特別扱いすることを求めます。そして、自分以外の誰かを特別扱いする人を許せません。

・見捨てられ不安
人から見捨てられることに、異常なほどに恐怖します。人を疑ったり、試したりするのは、その反動によるもの。また、DVの後、激しい後悔に苛まれ、涙ながらにパートナーに謝罪するのはこのためです。

・「事情説明」を「言い訳」と解釈する。
「事情を説明しろ」と言われるので、説明すると、「言い訳するな」と言われます。本人に事情説明と言い訳の境界がなく、事情を聴くのは相手を攻撃するために他なりません。

・学歴や知能とは無関係
精神疾患なので、学歴や頭の良さ等は関係なく発症します。

個人としての対応

では、彼らにターゲットにされてしまった場合はどうすればいいのでしょうか。

基本的には距離をおくのが賢明です。彼らを正面から相手にすると、自尊心も、交友関係も、大切なものは何もかも奪われるので、いいことは何もありません。恋人がこのタイプであれば、さっさと別れたほうがいいでしょう。仮に治療に専念したとしても何年もかかります。相手からの攻撃が致命的なものになる前に、転職やコミュニティからの脱退を検討することが望ましいと思われます。

しかし、それができる人は限られてるので、以下に、付け焼刃的ではありますが、対策を示しておきます。特に私のように、理屈で相手を理解しようとする人間は、ターゲットにされやすいので注意が必要です。人を上下関係で見る傾向があるため、ターゲットにされる前であれば、イラッとした表情を見せるだけで、ターゲットから外されることがありますが、一度ターゲットにされる(格下であると認識される)と、「生意気だ」と激昂し、逆効果になるので注意が必要です。

・論破しようとしない
理屈が通じる相手ではないという前提に立ちましょう。仮に論破できたところで、相手は感情的になってしまい、急に別のクレーム(例えば何年も前のこと)を持ち出してきたりするし、声を荒げてこちらを黙らせようとします。私の知人は、職場で源泉徴収票を出してもらえないというパワハラを受け、税務署に相談したところ、その税務署員も恫喝されて帰ってきました。彼らは敵とみなすと容赦しません。

・否定語は使わず、寄り添う姿勢を見せる
否定語に敏感な人たちで、尚且つ自分にメリットのある人間を集めたがる傾向にあるので、「ん〜困りましたね…」と一緒に考える姿勢を見せると、冷静に会話できる場合があります。こちらにそのつもりはなくとも、本人がぞんざいに扱われていると感じると激昂するので注意しましょう。

・出来ることと出来ないことをはっきりさせる
態度は一貫性を保ち、同情や親切心を見せながら、出来ないことは明確に示しておく必要があります。また、出来ないことは相手を軽視しているわけでも、職務怠慢でもないことを理解してもらいましょう(これがとても難しいのですが)。

・おどおどした態度はNG
彼らは権威主義者なので、おどおどした態度や、頼りない姿勢を見せると、一気に畳み掛けてきます。弱みを見せると、それを武器に脅してきたりするので、場合によっては、警察や弁護士に相談するなど、毅然とした態度で挑みましょう。

組織としての対応

では組織としてはどう対応すべきでしょうか。境界性パーソナリティ障害は、50人に1人という、うつ病よりも多い割合で存在するので、ある程度の規模の組織であれば、真剣に考えなければならない問題です(とは言え、彼らの攻撃の矛先は、弱者に向かうので、必ず組織内で問題になるとは限りません。その場合は、家庭内で発散したりします。それがDVであり、交友関係に向けられるのがいじめです)。ここでは、組織内で問題になっている場合を想定します。

・組織として当事者に寄り添う姿勢を見せる

信じられないかもしれませんが、これが唯一にして、最も効果的な対策だと考えます。うつ病対策と同じですね。一昔前は、うつ病は、ただの怠慢であると認知されており、攻撃の対象でした。しかし、周囲が理解を示すことで、組織内で共存しながら、治療できるようになったのです。

ハラスメントも同じく、「ハラスメントはダメ!」という姿勢ではなく、感情を抑えられないということを理解し、組織としてどうしていけばいいかを一緒に考えていく姿勢が必要です。彼らは権威に弱いので、立場が上の人が、寄り添いながら、かつ毅然とした態度で、ヒアリングするといいでしょう。もし、彼らが、自分の感情を抑えられないことに悩んでいて、「性格の問題ではなく、病気であることを示すと安心するタイプ」であれば、通院を始め、一定の効果が出る場合があります。

ただし、この場合でも、自分のハラスメントを認めない人は多数いるので、その場合の対策はまだありません(少なくとも私は知りません)。

こういう話をすると、「加害者に寄り添うこと」に拒否反応を示す人が一定数出てきますが、私個人としては、加害者を憎むのは、被害者のみでいいと思っています。直接的に攻撃されたわけでもない人間が、攻撃をするとややこしいことになるからです。実際、私は数々のハラスメント被害にあってきましたが、彼らに対し、周囲の人間も一緒になって攻撃してほしいとは思わなくなりました。彼らの背景を想像し、それほどまでに壮絶な人生を歩んできたということは、理解できるようになったからです。今ではむしろ、克服して幸せな人生を歩んで欲しいと、心から願っています。

調べれば調べるほどに、ハラスメントの構造は、ドラッグ中毒のそれに近いように思います。ドラッグ中毒者がドラッグにのめり込むのは、孤独が原因であることが、科学的に明らかになっています(※1)。ドラッグの依存症については、周りとの人間関係がしっかり構築できれば、そのほとんどが克服可能だそうです。一度ドラッグに手を出してしまうと、良い人間関係を構築するのは難しくなります。孤独な人が、さらに孤独になり、その孤独を埋めるために再びドラッグに走る、それが依存症の正体です。

ハラスメントもそうなのではないでしょうか。彼らは自分の感情を抑えられないが故の孤独の中にいて、自分でも、どうしていいか戸惑いながら生きています。どんなに優しい人も、自分から離れていくことを何度も経験していて、それ故の、見捨てられ不安の中で生きています。異常なまでの疑り深さはそのためなのでしょう。人は必ず自分から離れていくという前提に立っていて、それ故に恐怖で人を支配し、繋ぎとめようとします。とても悲しい病気です。

かといって、素人が彼らを助けようとするのは、オススメできません。私は、以前、知識もないままこのタイプの人と出会い、全力で助けようとしましたが、SNS上にあることないこと拡散された経験があります。職場内や業界内、コミュニティ内で妙な噂を立てられたりして、自尊心も交友関係も居場所も何もかも奪われました。いわゆるサークルクラッシャーというやつですね。彼らは非常に巧妙にこの病を隠しており、ターゲット以外の人間(特に従順な人間)には、好意的に見えるのが特徴です。そのため、一定の立場に立っていることもあり、周りの人間は「あんないい人が嘘をつくはずがない」と、いとも簡単に彼らのことを信用したりします。本当は嘘で塗り固められた噂なのですが。

加害者に理解を示すことはとても難しく思います。私も何年もかかりました。しかし、彼らも絶望の中にいて、そこから抜け出すことに必死なのです。個人の不幸は連鎖し、また別の他者を襲います。仮に自分だけがそこから逃れたとしても、また別のターゲットが同じ被害にあうでしょう。加害者を理解し、環境を改善していくことでしか、ハラスメントはなくなりません。とはいえ、私は、被害者までが、加害者に理解を示す必要はないと思っています。自分がつらい思いをしたのなら、憎めばいいでしょう。ただ、周りの人たちだけは、加害者にも、被害者にも、寄り添える姿勢があればいいと思います。個人として寄り添うことは難しくても、組織としてなら、寄り添うことはできると私は考えます。

それは、「ハラスメントが発覚したとしても罰しない。ただしそれを治療していくために一緒に考えていこう。」という姿勢です。具体的には、加害者側が相談できる窓口を作るといった感じでしょうか。もちろん、被害者のケアは必須で、それ以上被害が起こらないような体制を整える必要はあります。

組織がこういう姿勢を示すことで、地下に潜っていたハラスメントが表に出て、本当の対策が打てるようになるのです。もちろん、加害者側が相談できる空気が出来上がるまでに、何年もかかるでしょう。そこは根気強くやっていくしかありません。かつて、うつ病対策がそうであったように。

組織として寄り添いながら、個人としては一定の距離を置き、治療そのものは、本人とプロに任せる。

ハラスメントやDV、いじめが世の中から消滅することを、切に願って。

《参考資料》
※1 ジョハン・ハリ(2015)『「依存症」―間違いだらけの常識』TED Talk.
https://www.ted.com/talks/johann_hari_everything_you_think_you_know_about_addiction_is_wrong/transcript?language=ja

本記事の転載元はこちらです。


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