見出し画像

第52回 カウンセラーのTシャツと言葉のサラダ 深層心理学的に呪いの効果を分析する

 カウンセラーとスタッフの日常会話の記録です。
  
Mi代表:深層心理学が専門のカウンセラー。Mitoce代表。
すたっふ:カウンセラー見習いのスタッフ。少々オタクらしい。



Mi代:前回のTシャツとサラダは、あまり評価が良くなかったみたいで、反省を踏まえて分析しています…。

すた:きちんとそのあたりは確認されているんですね。もう一度読み直してみます…。
…たしかに、呪術廻戦の話なので、知らない人はあまり興味を持たないかも。呪術廻戦が好きな人が読んだら、批判されていると読めるかもしれないですね。でもクリエーターの人たちの視点から見ると、面白いと思います。どうやってオリジナリティを出すかという話なので。

Mi代:このような話をするときには、ターゲットを誰にするかというのが大事ですね。でもターゲットを考えて書くのは実際には難しいですね。結局、私の話は「オタク系の話をする深層心理学を専門としたカウンセラーの話」に興味を持って頂いた、コアな人たちに向けられていると思います。私自身のキャラクターを考えたとき、広く誰からも受け入れられるタイプではなく、一部の人には強く興味を持って頂ける特殊なキャラであるのは自覚しています。

すた:広く読者を確保するのは難しいですね。

Mi代:そうですね、でも色々と書くことは大切ですし、そういったコアの方たちにも向けて書き続けたいと思っています。

すた:それは大切だと思いますよ。そこでMi代表らしい話を聞けたらと思うのですが、あの…呪術って今でもあるのですか?

Mi代:ああ、それは…。

すた:最近、思ったのですが、カウンセリングって一般から見たら、占いや何かの不思議なおまじない程度に思われているかなと思って。何かあったらお祓いっていう人もいますし。でも全然違うので。逆に呪術ってどうなのかなって。

Mi代:基本的に私は怪力乱神を語らずなので、呪術が効くとか、そういう話はしないのですが。あるなしでいうと、呪術を行っている人たちがいるとは聞きます。実際に効果があるかは別として。一応、文化人類学の観点からすると、呪術に効力があると考えている文化圏内にいる人同士では、呪術は作用すると言われています。

すた:それは現代の日本でもですか?

Mi代:そうですね、現代の日本でも呪術文化はあります。ただし、マンガのように派手な何かが起きたりとか、ゲームの魔法みたいなことは起きません。深層心理学的にいうと、いつのまにかこころの深層に作用して、何か起きるという感じでしょうか。

すた:何か起きるって、ちょっと怖いですね。

Mi代:はい、その文化圏にいる人たちにとって、呪術はとても恐ろしいことです。

すた:私のイメージでは呪術って誰かを生贄にして、それで神様にお願いするというような話なのですが。

Mi代:インカ帝国では人間が生贄にされていたことで有名ですが、これは元々、世界中にあった方式だろうと私は思います。ただし、人間を生贄にするだけではなく、いろいろな方法を取ったと思います。人間の代わりかわかりませんが、家畜など別の生き物を使う文化もあります。人形など生き物以外の呪具を使う文化もありますね。

すた:呪術って効果はあるのですか?

Mi代:呪術自体に効果があるかどうかは、なんともいえません。現代の日本人の多くは呪術に親しみのない生活をしてるので、効果の有無については実感はできません。しかし例えば、集団のために誰かを犠牲にすることで、ほかの人が繁栄するという構造は、カウンセリングの観点からは納得できます。

すた:えっ、どういうことですか?

Mi代:これは家族療法の観点にもつながるのですが、家族内でこころの病いを抱えている人がいます。しかし家族全体をみると、その人が病いでいることによって、家族内のこころのバランスが取れているのではという事態があります。本人も家族も自覚はないのですが。
家族は自分たちが悩む代わりに、病いを抱えている人がいることによって、自分たちのこころの課題に触れずにいられる。でも病いを抱えている人の状態が良くなってくると、今度は家族がそれぞれ自分の課題と向き合わなければならない事態が起きる。場合によっては、病いを抱えていた人は良くなった一方で、家族に身心の病気が出たりします。そういうことはしばしばあります。
これは家族療法ではIPと言いますが。深層心理学でいうと、家族の影をその人が担っていたけれど、影が解消していくことで家族に影が返っていく、といえるかもしれません。家族も影を自分たちで担うのは大変ですから、影を誰かに負わせて安定する。

すた:もし影を返そうとしたら、どうなるのですか?

Mi代:病いを抱えている人が良くならないように、無意識のうちに抵抗します。たとえば「カウンセリングは意味ない」「カウンセリングは良くない」と家族が批判したり、カウンセリングを辞めさせようとすることもあります。たしかに家族から見たら、カウンセリングは悪でしかないですからね、自分たちに影をもたらすので。

すた:ああ、なるほど、それでその影を担っていた人が生贄だったと。

Mi代:生贄と言ってもいのちを奪うわけでもないし、意図的に生贄にしたわけでもない。影を担う役割というのが似ているということです。
カウンセラー同士で時々話すのは、家族の中で実は一番力があって、健康的な人ほど影を担うことになって病気になる、という話です。これは良くあるパターンだと思います。しかし家族はそんなこと思ってもみないですから、影を担う人が家族の中で一番不健康であり、弱いに人間であるとします。呪術の生贄でも子どもや幼い動物が生贄にされたりするのは、そういう意味もあるかもしれませんね。最も力のない存在のように見えて、ある意味では神とつながる特別の強い力を持っている。ある意味で聖なる生き物だと。
この辺りはマンガでも良く出てくるモチーフですね。大変な家庭環境のなかで弱い立場で育った主人公が、実は家族内で一番力を持っていたという。たとえばハリーポッターも当てはまります。

すた:でもそういう呪いの話を聞いていると、対症療法的というか。とりあえず症状を抑えるのが目的みたいな。

Mi代:そういえるかもしれません。目的がはっきりしていて、明らかな効果を求める。現世利益といえるでしょうね。

すた:でも、カウンセリングで影を返すとしても、一度で解決ってないですよね。

Mi代:急に返そうとしても、反発されてしまうし、効果が出たとしても一時的です。影を返すときには家族のバランスをみながら、徐々に返していくのが大事だと思います。そうでないと表面的に良くなったように見えて、結局は同じ悩み事のパターンを繰り返してしまう。根本的なパターンの解決には至らないんですね。
私が深層心理学的な観点を大切にするのは、その辺りが理由です。表面的に症状を抑えることはできても、根っこから変わっていかないと本当の意味で悩みは解決しない。だから深層心理を扱う。どうしても時間がかかるという短所があるのですが。
これはゲームを例えるとわかりやすいかもしれません。始めてすぐに目的が達成してしまったら、ゲームとして何も意味がない。紆余曲折を経て、ようやく課題解決に至る。だからこそ、プレイをしていてこころが動かされる。もちろん現実の悩みでは、ゲームと違って娯楽の要素はありませんが、解決までにいろいろな経験を積み重ねていくのが大事という点は似ています。

すた:そうなるとMi代表が最近、久しぶりに『ぷよぷよ』をしてハマったと仰っていましたが。あれは、1回1回結果が出るから楽しいのじゃなくて、少しずつ経験が積み重なるから面白いのですか。

Mi代:まさにそうです。『ぷよぷよ』をプレイしていて1回ごとに必ず内容が違う。毎回違う経験をするなかで少しずつ上達していく。

すた:どうすれば上手くなるのですか?

Mi代:まずは連鎖を覚えることは大切だと思います。私であれば、紙に書いて基本的な連鎖パターンを憶えました。実際に手で書きながら分析しつつ、連鎖を考えるとパズルみたいで面白いし、得ることも多いですね。

すた:行動が明らかにオタクですよ、Mi代表…。

Mi代:あくまで分析と研究です!

すた:深層心理がオタク気質というのは、隠せていないと思いますが…。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?