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第61回 カウンセラーのTシャツと言葉のサラダ 葬送のフリーレンと動揺しないこころ

カウンセラーとスタッフの日常会話の記録です。

Mi代表:深層心理学が専門のカウンセラー。Mitoce代表。
すたっふ:カウンセラー見習いのスタッフ。少々オタクらしい。



Mi代:大変申し訳ないです…。申し訳ない思いでいっぱいです。

すた:いきなりどうされたのですか?

Mi代:noteの更新が遅れています。すみません。

すた:ああ、約3週間、空いてしまいましたね。

Mi代:はい。せっかく読んでくださる方が少しずつ増えているのに、こうやって更新頻度が落ちてしまうのは大変申し訳ないと思っていて。

すた:最近は多忙でしたから…。

Mi代:私は「忙しい」という言葉はあまり使いたくないのですが。漢字では「こころを亡くす」と書くので、心理カウンセラーとして避けたい言葉です。
でもホント、いいわけにしかならないのですが、カウンセリングや心理検査などの業務のほかにも、次の企画も立てていて、そういったことに時間がとられています。今まで仕事の時間配分を考えずに来ましたが、ちょっとそのあたりを考えないといけない状況で。

すた:今後仕事が増えていくと考えると良いのですが、回らなくなる。

Mi代:そうですね。作業効率を上げようと考えたとき、すたさんに以前に伺った「ながら勉強」を思い出したんですね。作業を続ける仕事のとき、とりかかってもなかなか手が進まなくなる。でもそのときに音楽をかけたりして、気持ちの負担を小さくすることで作業に集中できる。そのような方法をとっている人が多いと聞いて、私も挑戦しました。

すた:どうでしたか?

Mi代:結構、効果ありましたよ。作業効率は上がったと思います。

すた:ちなみにどのような作品でながら作業をしたのですか?

Mi代:アニメ『メイドインアビス』の動画ですね。サブスクで流して。最新話が発表されたので、振り返りも含めて流していました。映像というよりも、音声で聞いている感じになりましたが。でもそのサブスクでは映画版が有料だったので、一旦途中で止めてしまって。では代わりに何にしようと考えたときに観たのが、『葬送のフリーレン』です。あの作品も流行っているので、これはチェックしておかないとと思って。現代人を知るのに良いかとも考えました。

すた:そこに来ましたか。どうでしたか?

Mi代:あの作品は原題の若い世代の特徴をものすごく表しているなと思って、それが面白かったです。

すた:どういうことですか?

Mi代:主人公のフリーレンは、エルフの魔法使いです。そして初期のドラクエのイメージだと思いますが、フリーレンは勇者のパーティに属していたという設定です。パーティは勇者と魔法使いと僧侶と戦士。ドラクエⅢの世界観に近いですが。そして勇者と一緒に魔王を倒して、パーティは解散した。そのあとの話が、フリーレンの物語りの始まりです。
設定はシンプルなのですが、一番の特徴はフリーレンの性格ですね。普段は感情の表現がものすごく少ない。原作ではもう少し表情の変化が描かれていますが、アニメでは平板さがさらに強調されているような印象です。他人への関心をあまり持たない。感情の動きも少ない。しかし、自分の趣味である「魔法収集」には取り組んでいる。ただしその魔法収集も、表面的にはとりあえず続けている程度で、夢中になっているとか、新しい発見をして喜ぶとかそういった感情の動きはほとんどみられない。
でもそのフリーレンが、自分の大切な人が亡くなったときに涙を流すんですね。ほんと、このあたりが、今の若い世代にみられる特徴を捉えて描いていて面白かったんです。

すた:私にとってはフリーレンはとくに事件も起きない話なので平和と思っていて。でもどうして流行っているのかがよくわからなくて。

Mi代:たしかに作品中に事件はあまり見られません。ものすごい葛藤を生むとか、大きな事件が起きて、必死にその課題に取り組むとか、そういったエピソードはあまり出てきません。勇者もドラクエⅢのような「魔王をやっつける!」とう勇ましい感じがなく、フリーレンではなにかイケメンで優しい感じの勇者です。そのあたりが今の世代と重なっているかなと。何か大きな目標を見つけて、それに立ち向かっていって必死になって獲得し、目的達成する、というタイプではない。

すた:感情が動くのはエネルギーがいるので、出来る限りエネルギーを使わない。

Mi代:そんな感じです。そして苦労して、努力して能力を身に着けるというのではなくて、自分にはもともと高い潜在能力があって、自分の好きなことをしていたら、いつの間にか能力が高まっていた、というような感じです。苦しい試練やひたすら大変な修行を経て身に着けるという感じではない。

すた:たとえば異界転生ものの作品だと、なぜか異界に入ったとたんに、ものすごく能力があるという状態でそれで活躍するという話なんですね。そんなもの現実にはないですよね。中2病っていわれたりしてますけど。

Mi代:そういった感情の動きが少ない生活を送っていたのに、大事な人を喪失した瞬間、突然強い感情が沸き上がってくる。でも、本人自身も普段感じていないので、そのような感情がどうして沸き上がってきたのか理解できない。このあたりはまさに現代的なテーマだなと思いました。
実際のカウンセリングでも、「自分の感情が分からない」とおっしゃる方が来られます。とくに病気ではないにもかかわらず、何となくしんどい。それで何がしんどいといわれても「原因はよくわかりません」という。そういう方がカウンセリングに来られたとき、カウンセラーとしてもかなり難しい。内面を振り返ってもらおうとしても、何も語ることができないので。当人にしても、カウンセリングに行ったらしんどさが解決すると思ったのに、行ったとしても解決しない。だからカウンセリングにも通わない。
カウンセリングに来たら、突然何かを解決するような能力が付与される、または解決する魔法のような方法がある。潜在的にそのような求めているような感じもします。
このような方はかなり増えている印象です。

すた:カウンセリングではそのような方にどのように対応するのですか?

Mi代:深層心理学としては難しいですね。内面を表現して頂くような方法論を使っても、そもそも表現をすることが苦手だったりする。認知行動療法のように、あらかじめどのような状態になりたいか目標を立てて、具体的に何をするか検討していく。その方が合うかもしれないです。

すた:それって根本解決になるのですか?

Mi代:とりあえずの解決を目指し、それを繰り返すことで根本的な解決を図るということでしょうか。

すた:なんかそういう「お手軽カウンセリング」は違うかなと私は思っていて。それを求めている人もいるし、それに対応しようとするカウンセラーもいると思うのですが。なんかアプリを入れて解決する、みたいな感じですよね。でもカウンセリングって、もっと大変なものなのだと思います。深層に深く潜っていくには、それなりの苦しみや大変なことを経験する。だからこそ得られるみたいな。メイドインアビスも、そういう話だと思っていて。フリーレンとは少し違う。

Mi代:メイドインアビスも不思議な現象ですが、内容はものすごく重いテーマです。内容によってはかなり残酷で、見ているのも苦しくなるようなシーンもある。しかしながらキャラクターが可愛い。作者のつくしあきひとさんのX(旧Twitter)をみると、キャラクターを可愛く描いたファンアートが取り上げられたりしています。確かにキャラクターの見た目は可愛いのですが、キャラクターの性格や行動は、原作を見るとわかるのですが、決してかわいいだけではない。だから不思議に思ってしまいます。

すた:私もメイドインアビスを見ること自体が大変だったのですが。でも知り合いは、普通に気にせず、最後まで見たようで。作品に対して苦しみを感じたりすることもない。でもその人は、フリーレンにハマっているようなので、なんだろうなと思っていました。

Mi代:メイドインアビスのような残酷さを孕んだ作品から、痛みや苦しみ、恐怖を感じないでいられる。それがまさにフリーレンの態度といえると思います。自分のこころの様相を重なる部分があるから、その作品に惹かれる。そういった側面はあるのではないでしょうか。そして、そういった方々が人生を生き抜くためにはどうするかというのは、かなり考えさせられます。

すた:人生のなかで、葛藤を憶えず、感情を平板なままに過ごせるようなことなんてないですからね。いろいろなことが起きてきますから。

Mi代:カウンセラーという仕事を考えると、そういったいろいろなタイプの方のストーリを理解しないといけない。そのためには自分の経験で考えるだけでは、どうしても対応できなくなる。だから、いろいろな物語りや作品に触れておくことが、カウンセラーとしてのキャパシティを広げるのには大切だなと思っています。フリーレンを観たのも、その延長にあります。現代人のこころを知るには、現在流行っているストーリーを把握するのが手っ取り早いし、理解がしやすい。そう思って、選んだという理由があります。

すた:相変わらずですね。ストーリーのある作品であれば、ほかにも小説や映画もありますし、芸術系でもたくさんジャンルがあるのに、なぜかMi代表は、アニメとかオタク系を選んでいます。それはMi代表の趣味としか言えません…。

Mi代:さてこのあたりで作業に戻りたいと思います。(といってフリーレンの映像を流そうとする)

すた:それって、早く続きを観たいだけじゃないですか!!

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