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第46回 カウンセラーのTシャツと言葉のサラダ 『百姓貴族』と冷静なカウンセラー

カウンセラーとスタッフの日常会話の記録です。

Mi代表:深層心理学が専門のカウンセラー。Mitoce代表。
すたっふ:カウンセラー見習いのスタッフ。少々オタクらしい。



すた:私がヴィンビ君のことについて書いた、スパイダーマンオタクの見解。あれはうるさいオタクの意見のようで、良かったのかなと思っていて。

Mi代:Youtuberのスパイダーメーンの正体であるヴァンビ君について、スパイダーマンのオタクの立場としてどう思うか、という意見ですね。
私としては、あのように意見をきちんと伝えることは大事だと思います。相手を貶める意図もないですし、内容をきちんと読むと、今後の展開を楽しみにして期待して待つみたいな結論だったので。

すた:そうです。スパイダーマンをもっと知ってもらいたいという思いで。作品に寄せていくと、もっとファンが増えるはずなんです。オタクも、スパイダーマンに興味を持つ人にはもっと優しく教えてくれると思います。

Mi代:だから排斥しようという意図ではない。どちらかというと、自分たちの仲間にも入ってもらえれば、という感じかと思って。前回の話にあった、オタクは他人を沼らせるのを志向するという話ですね。なので、そんなに悪い意見ではないと私は思いました。

すた:そうなんです。

Mi代:それを聞いているとオタクの世界も、少しずつ変わってきているのかなと思って。今でもいわゆる知識マウンティングのように、オタク同士でも勝ち負けをつけようとする人もいるかもしれませんが、それよりもすたさんの話を聴いていると、仲間を作ろうとする意識が強いのかなとも思います。一方で、気になる情報としては、最近はマンガを読む人が少なくなってきているという話を聞くことがあります。漫画家が食えていけない。元々、漫画家で食えていけるのは、少数の人だったとは思いますが、それよりも最近は厳しくなっているそうです。

すた: うーん、どうでしょうね。アニメ化したら、当たりが大きいかなと思いますが。グッズとかの売り上げも出るそうなので。
考えてみると、私は紙に印刷してあるものが好きなので持っていますが、紙でマンガを読む人は少なくなってきているかもしれません。最近は広告がついていたら、1日1話を無料で見れるとか、そういうのがあるので。それで見ている人たちも多いと思います。今の若い人は、あまりお金を使わなくなっているかもしれません。

Mi代:私たちの世代とは、かなり違う感覚ですね。先日、開催されたコミケではあれほど人が集まっていて、しかもインタビューをすると、グッズに100万近く払っている人もいた。

すた:ああ、オタクは違います。自分が欲しいものにお金を注ぎ込みますから。たぶん一般的な若い人はお金を使わない…。

Mi代:どういったことに興味を持っているのでしょうか。

すた:YoutubeやSNSとかを見て、時間を過ごす人はいると思います。

Mi代:確かに時間の使い方は変わってきているかもしれませんね。マンガをしっかりと読んで時間を過ごす人は少なくなってきたのでしょうか。たとえば、Youtubeやサブスクで動画を見ながら、作業をするというのは多いでしょうね。

すた:私もそれはします。

Mi代:自分の好きなことに対して、時間を過ごすというのは大事だと思います。これは、こころの状態にとってもそうですね。自分の好きなことに集中していると、こころが成長する。前回にも話した、こころの窓理論です。

すた:でも、Mi代表はあまり自分の好きなものをいわないですよね。静と動でいうと静。それでは周りの人には伝わりにくいかなと思います。Mi代表がどのような人なのか。

Mi代:たしかに、そこは問題ですね。というのもカウンセラーを探すとき、クライエントはカウンセラーの人柄がどのような人なのか知りたいと思うんです。場所や料金や技法ももちろん大切ですが、それ以上に自分の悩みを話す相手なので人柄をみると思うんです。でも、その手掛かりがない。とりあえずは写真で様子を見るけれど、それでは情報不足。私がこのような文章を上げているのも、自分を知ってもらうというのも目的の一つなので。しかし、どのように伝えたらよいのか、模索中で…。

すた:どういうところが好きなのか、推しを語れば早いと思います。

Mi代:好きな作品の説明とか?

すた:説明であると、ただ自分語りをするオタクになってしまうので。そうではなくて、どこが面白いか、楽しいかなどを出していく。たとえば岡田斗司夫さんって感情豊かじゃないですか。あれが伝わるんですよ。

Mi代:そうですか…。私がニヤニヤと笑みを浮かべながら「あそこに宮崎駿の趣味が出ているんですよー」といいながら話す。うーん…。私はあのような感情を出すタイプではないので、もしあれほど出したら不自然になってしまう。というのもユングタイプ論で考えても、私は思考優位な人なのだと思います。タイプ論では思考の反対が感情。つまり思考が有意な人は、感情表現が弱いという傾向があるんです。

すた:直接出さなくてもいいんです。自分が好きなものを、どうして好きかを語るだけで伝わる。

Mi代:そうですね…。私は好きなものを語るというのは殆どしないので。しかし、それでふと思い出したのが私が昔、ひそかに見ていたのが、セーラームーンですね。好きなのかは自覚はないのですが。あの作品は男性にこびた女性像じゃなくて、生き生きとキャラクターが描かれているのが印象的でした。そしてその当時好きだった漫画家が冨樫義博さんなので。セーラームーンの原作者である武内直子さんと冨樫さんが結婚されたとき、私にとっては神々の結婚のような感じで衝撃的でした。

すた:その言い方のほうが伝わってきます。思い入れがあるので。

Mi代:カウンセリングという仕事をしていると、かなしみや寂しさ、といった相手が抱える負の感情を察知するアンテナは強くなるのですが、自分の感情を動かすことには鈍感になってきます。とくに自分の好き嫌いという価値判断に基づく感情の動きは鈍くなりますね。
これは大変な現実を経験してきた人の中にも、私のように感情の動きが少なくなるタイプの人もいます。医療現場のスタッフもそうですし、レスキュー隊もそうです。あとは戦場に出掛けた兵士なども典型例でしょうか。そういう人たちは、まわりからは「落ち着いた人」といわれるのですが、本人としたら「ほかの人がそんなことに感情を揺れ動かしているのかがわからない」という冷めた感覚です。感情に大きく負荷がかかるようなストレスを長い間経験していると、感情の機能が鈍化してしまう。ある意味で部分的に感情が解離しているのかもしれませんが。
これとは背景事情が異なるのですが、最近、荒川弘さんの『百姓貴族』のアニメがアップされています。内容としては農家がどれだけ大変かという話です。百姓仕事の大変さに比べて、荒川弘さんの語り口がかなり冷静です。あくまで仕事は仕事と割り切っているような。大量廃棄の野菜を作る農業や、いのちを頂くことになる畜産業など、知らない人からすれば大変な話です。しかし荒川弘さんは淡々としています。ときどき、感情を爆発させるのですが。その緩急自在な感じが面白いです。
大変な現実を淡々と描ける。そして読んでいる人が楽しめるような伝え方をする。それはかなり胆力がいると思います。私も荒川弘さんの姿勢に学びたいと以前から考えていますね。

すた:そのように、あまりメジャーではない作品を扱うのも、Mi代表の特徴ですね。

Mi代:私にしたら、ものすごくメジャーな作品なのですが。荒川弘さんだし、百姓貴族だし。でもいわゆる一般の人と比べると、私の関心は一般的ではない、ということは最近気づいてきました。でもそれだからこそ誰かと話が合ったときは嬉しいですね。たとえば最近、気になるアニメ作品ある?と聞いたら、即答で「百姓貴族です」という人がいたら、それだけで信頼できるというか。

すた:それはあります。同じ趣味が合ったときの、お互いに「わかりあえる!」という感覚。まさにオタク同士の交流!

Mi代:それぞれお互いに全く違うルートで作品を見てきた。しかも、色々な作品があるのにかかわらず、なぜか好みが一致する。それは大きいと思います。
クライエントと話すときに、私の好みと一致するクライント出会うということ望んでいるわけではありません。しかし、少なくともクライエントが自分の趣味を話したときに、その内容がどういうものなのか、大まかに理解したいと思います。そのための準備として、さまざまな知識を貯めておこうとはします。クライエントにとっても、自分の趣味を話したときに、大まかに理解してくれるカウンセラーであると安心すると思います。趣味について話したら「なにそれ?」と引くようなカウンセラーだったら、それ以上、話そうとは思わないですよね。私はそういう意味で、いろいろな広い領域に関心を持つようにしています。

すた:だからもっとMi代表のオタクの部分を出していったらいいんです。

Mi代:いえ、私はオタクではありませんから。

すた:え?

Mi代:私のアイデンティティはあくまで深層心理学が専門のカウンセラーです。

すた:相変わらず、そこの部分はものすごく頑固!

Mi代:あくまで、オタクもしくはオタクに親和性がある人たちがこころの悩みを抱えたとき、カウンセリングにつながるようにするため、オタク傾向の話題を提供しているだけです。

すた:そのわりに「最近流行りの『推しの子』が好きだと公言している人よりも、好きなキャラと聞かれたときに「メイドインアビスの「ナナチ」と即答する人がいれば、その人の方を私は信用するかもしれない」といって、さっきナナチのグッズを探していたじゃないですか。

Mi代:それはあくまで研究としてでありまして…。決してオタクということではなく。

すた:苦し紛れのいいわけですよ、Mi代表…。

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