見出し画像

あやしい絵展at国立近代美術館(2021/04/26)

 「あやしい絵」展 、7月3日から大阪会場で開催中だそうですね。というわけで重い腰を上げて、残念ながら4月に会期途中で終了してしまった東京会場での「あやしい絵」展のレポートをアップしようと思います。これからご覧になる方のご参考になれば!

駆け込みで見てきました

 「あやしい絵」展は展覧会の告知時点から「どうしても見たい…!」と思ってまして、プライズ(解説カード)付きチケットを事前に購入しつつも、子二人の卒業入学が重なり、なかなか行けず。

 そうしている間に4月最終週を迎え「明日から緊急事態宣言!」となったため、慌てて駆け込みで見てきた…というのが見に行った経緯です。

 その後の東京会場は、残念ながら休会のままで展示終了となってしまったので、滑り込みで見れて本当に良かったです…(だから普段から早めに見に行けと)

流れで感想をつらつらと

 基本的に、展示は撮影自由でした(一部撮影不可の作品もあり)。撮影した写真は、作者・作品名・所蔵を明記すれば掲載可能とあったので、こちらの記事中の画像もその基準に準じて掲載させていただきます。

・月岡芳年の絵がリアルすぎる…!本物の死体を見ながら書いていたらしいですよ。

月岡芳年「魁題百撰相 辻弥兵衛盛昌」町田市立国際版画美術館

画像1


・与謝野晶子の「みだれがみ」の原本が。意外と小さい。文庫本より小さい。

・私の好きなミュシャの「JOB」。こちらは逆にデカくて迫力。この辺りは導入として、よく知られた作品が並んでいるなあという印象。

・青木繁の作品は、洋画ということもあり、一見古事記モチーフには見えなくて面白い。

青木繁「≪わだつみのいろこの宮≫下絵」栃木県立美術館

画像2


・歌舞伎でも有名な「道成寺」モチーフの作品がいくつか。これは話の筋から怖いですよねー! 道成寺のあらすじはこちら

個人的には小林古径バージョンが、当時の絵巻っぽくて一番怖い。

小林古径「清姫 日高川」山種美術館

画像3

木村斯光は清姫の無表情が怖い。

木村斯光「清姫」笠岡市立竹喬美術館

画像4

橘小夢は「入墨」(後述)も含めて全体的に「妖しい」。

橘小夢「安珍と清姫」弥生美術館

画像5

・高畠華宵の、良妻賢母ではないモダンな女性を描いた画風は当時の女性の憧れだったそうな。理想とされる女性像の変化が見て取れます。

高畠華宵「『少女の国』1巻10号」弥生美術館

画像6

※2021/7/29現在、竹久夢二美術館では高畠華宵の展覧会をやってますね。よかったらそちらもご覧あれ。(会期は2021/9/26まで)

大正ロマン・昭和モダンのイラストレーター 高畠華宵展 ―ジェンダーレスな まなざし―

・矢部季の画集は雰囲気があって、全編通して見てみたいな…

矢部季「矢部季詩画『香炎華』(大正8年)扉絵」弥生美術館

画像7


・「高野聖」の挿絵のいろんなバージョン。

 特に、鏑木清方の絵看板のバージョンはずっと見ていられる。撮影不可のため画像はなし。残念。

 今回展示されていた鏑木清方の作品は「金色夜叉」の挿絵もいいし、「不如帰」の屏風絵の一幅も良かったし、この展覧会で鏑木清方の良さがわかった気がします…!今後、積極的に見に行きたいです。

・村上華岳の裸婦図は観音様のよう。

村上華岳「裸婦図」山種美術館

画像8

そのとなりの北野恒富の淀君はコワイ。この2つを並べて展示するセンスが好きです。

北野恒富「淀君」耕三寺美術館

画像9


・梶原緋佐子の絵は「これ、私ですか…?」と思うような絵。それがリアリティというものかな。

梶原緋佐子「古着市」京都市美術館

画像10

・畜生塚の絵、題材を知ってるだけでゾゾ毛が走るよね。大作の上、未完なのがまた余計に不気味。

甲斐庄楠音「畜生塚」京都国立近代美術館

画像11

ちなみに畜生塚の題材はこちら↓

「毛抜」も、薹が立った若衆の描写がリアル。

甲斐庄楠音「毛抜」京都国立近代美術館

画像12

・「ぼっけえきょうてえ」の表紙でおなじみの「横櫛」は切られお富がモデルだったそう。モナリザにも表情の着想を得ているのではないか、とのこと。

甲斐庄楠音「横櫛」京都国立近代美術館

画像13

・上村松園の絵はもともと好きなのだけれど、やはり凄い。山奥の病院に行ってスケッチしただけのことはある。そして、これも表情がないのが怖い。「進撃の巨人」の諫山創先生も同じことを言ってました。

上村松園「花がたみ」松伯美術館

画像14


・刈萱道心の「嫉妬」や横溝正史「鬼火」の、物語を印象付ける挿絵。

竹中英太郎 挿絵「『新青年』16巻2号 横溝正史『鬼火』」個人蔵

画像15

竹中英太郎 挿絵「『新青年』16巻4号 横溝正史『鬼火』」個人蔵

画像16

・小村雪岱。

この展覧会の直前にやってた三井記念美術館の展覧会「小村雪岱スタイル」には行けなかったけど、ここで見れてうれしかったー!

でも、こちらの展示を見たら、もっとたくさん見たくなりましたよ…。残念。

小村雪岱「おせん 傘」資生堂アートハウス

画像17

 ちなみに「おせん」は江戸三大美人とされた笠森おせんの話で、「お伝地獄」のお伝も実在の人物です。

マイベストオブ「あやしい絵」

 現地で一番あやしいと思った絵は、谷崎潤一郎の同名小説に着想を得たこちら。

橘小夢「刺青」個人蔵

画像18

 逆に、一番美しいと思った絵は、谷崎潤一郎「人魚の嘆き」の挿絵。文章にある「凄惨な苦笑い」の挿絵での表現が見たかったなあ。

水島爾保布「人魚の嘆き」弥生美術館蔵

画像19


 なぜかともに谷崎潤一郎からの着想というのが、自分らしいというかなんというか…。

 個人的に、谷崎潤一郎はストーリーが抜群に「あやしい」と思っているので(「秘密」なんて大好きです)、その物語への導線、かつ本筋と溶け合っていっそう輝きを増す「あやしい絵」に対して、私は特に魅力を感じたのかなーと思いました。

「あやしい絵」のあやしさとは

 この展覧会で紹介された「あやしい絵」には、女性が多く描かれています。女性は本流から押し出された「異界」の存在であり、さらに美人画の流れの対極として、あやしい雰囲気の女性が多く描かれたとのこと。

 その目的に適していたのは、背景や構図に頼りすぎることなく、人物の描写によって内面を掘り下げることに力点をおく画法を持つ日本画でした。

 「あやしい絵」といえば日本画を想定しがちだし(私だけでしょうか)、この展覧会でも日本画を中心に展示されていたのは、その結果ではないかと思いました。

 洋画、版画にも「あやしい絵」はあるのですが、やはりおどろおどろしさの描写と言った点では日本画は強いなあ…と思ったのでした。

以上です!

この記事が参加している募集

イベントレポ

記事を読んで「美味しいコンビニスイーツとかアイスをおごってやるか…」というお気持ちになりましたら、よろしくお願いいたします。 すごく美味しいモノに巡り合えたら、こちらで紹介するかもしれません…!