北海道は、スポーツで儲かる?意外な未来を見た。【12/22(土) 札幌開催 北海道スポーツビジネスサミット 参加レポート】

<概要>

開催日:2018年12月22日
開催場所:HTB社内
イベント内容:スポーツ選手やその市場に関連する業種だけでなく、一般企業はスポーツとどのように関わっていくべきか、またスポーツを文化とするためにはどうすべきかを、日本を代表するスポーツイノベーターがスポーツの可能性を語り合う
登壇者:
●オーガナイザー 山田 聡
●岡部 恭英
Jリーグアドバイザー/TEAMマーケティング (UEFAチャンピオンズリーグ) ヘッド・オブ・アジアセールス
●小川 太郎
株式会社北海道日本ハムファイターズ ボールパーク構想推進担当
●三上 大勝
株式会社コンサドーレ 取締役・ゼネラルマネージャー / 一般社団法人コンサドーレ北海道スポーツクラブ 代表理事
●富山 浩樹
サツドラホールディングス株式会社 代表取締役社長
●池田 憲士郎
株式会社ヴォレアス 代表取締役
●村中 悠介
DMM.com COO / シントトロイデン(サッカーベルギー1部リーグ)会長
●福田 拓哉 九州産業大学 准教授
●西谷 義久
株式会社ディー・エヌ・エー スポーツ事業本部 戦略部 部長
客層:30代から40代の男性が中心。ビジネスマンがほぼ7割を占めている。

<セミナー内容>
「1」最新VR技術を利用したレジェンド投手との対戦機器のデモンストレーション
登壇者:NTT Data 荒智子、山田 聡
<要約>
元ヤクルトの伊藤智仁選手のスライダー体感ができるVRシュミレーター。
プロの投手の球種やスピードが自由に設定できるため、主にバッティング練習に活用が期待されている。
現在では、東北楽天ゴールデンイーグルスなどで、選手向けのバッティング練習シュミレーター、ファン向けのアトラクションとして導入されている。

<気になるところ>
今までのバッティング練習は、対戦相手を想定した実球(おおよそ)を使い練習、その様子を動画で撮影、それをモニター越しで確認。
それを参考に、改善点を洗い出す方法を取っていた
これが、VRを導入することで、様々な諸条件を無視して、対戦相手の球種に近い条件下でバッティング練習を行える。

<深掘り>
他にスポーツ競技トレーニングで、VRを活用している例は?
・フェンシング
→五輪メダリスト太田選手とVR上で対戦できるコンテンツ。
・ゴルフ
→「My Swing Pro」唯一の3D全身モーションキャプチャーでスイングの状況を確認しながら、練習が可能

何故、スポーツにVRが活用されているの?
VRは「コツのビジュアル化」を可能にするからです。
抽象的な言葉でしか表現できなかったコツをVRで可視化し、実際に体験することで、技能習得は確実に早まる。
さらには、対戦選手の細かな動きをVRで計測し、データとして蓄積することで、勝率が上げることができる。

「2」ファイターズとコンサドーレのスポーツを軸とした地域振興及び海外戦略
登壇者:株式会社コンサドーレ 三上 大勝、株式会社北海道日本ハムファイターズ 小川 太郎
このタームでは、小川氏、三上氏のお二人が自分たちの事業内容を参加者へ交互に説明する形で行われた。
まず、最初に小川氏から
<要約>
①ボールパークの建設。
・ボールパークがあることでスポーツが生活の中にあるようにする。
・ボールパークで周辺エリアとのシナジーを目指している
    ・ボールパークは、スマート・アベニューを目指している
※スマートアベニューとは
スタジアム・アリーナーを起爆剤に、地域を盛り上げること。
    ・球場内に日本最大級の大型ビジョンを2つ導入を予定している。
    ・球場に温泉を設置する予定
②ファイターズの海外戦略について
    ・台湾のスター選手、王柏融の獲得により、台湾の野球ファンが球場へ足を運ぶ。
<気になること>
ボールパークができることで、海外旅行者やビジネスマンなどの誘致や地域の活性化が図れる。
また、ボールパーク内に、温泉施設やBBQ施設が併設されることで、スポーツ以外の楽しみ方が生まれ
地域の方が、持続的に訪れる場所になり、他球場との差別化ができる。

<深掘り>
・ボールパークって、他の球場と比べて何がすごいの?
試合がない日でも、来場者が楽しめるように、常に出迎える姿勢を保っている。
例えば、ショップが開店していたり、キャンプができたり、遊園地があったりなど、球場をテーマパーク化すること

・他にユニークな球場施設の事例
●Koboスタジアム宮城・・・観覧車、メリーゴーランド、カフェテラスがあり、野球以外にも楽しめる。
また、大型LEDビジョンのスコアボードを導入しているため、球場スタンドのファンは、ビジョンで選手のリプレー映像を大迫力で楽しめる。
そして、来場者のSNS投稿もビジョンに映し出されるため、来場者同士で共有することができる

●アオーレ長岡(新潟県・長岡市)
アリーナと市役所窓口が併設されているため、役場としての機能がアリーナに備わっている
※バスケットプロチーム 新潟アルビレックスBBの本拠地。

※アオーレ長岡の相乗効果。
 ・アオーレ長岡周辺の飲食店が、増えている
 ・アオーレ長岡周辺の歩行者数の増加

※何故、市役所の機能がついているのか
 コンパクトシティ化の目的があった。 
 市役所職員の通勤時の利便性向上

●Away Center(アメリカ フロリダ州オーランド市)
中心市街多機能型のエンターテイメントセンターとして機能し、スポーツ以外にもショッピングや娯楽を楽しめる。所有・運営はオーランド市。
※Away Centerを本拠地としているプロチーム
 NBAのオーランド・マジック
 WNBAのオーランド・ミラクル
 アリーナフットボールリーグのオーランド・プレデターズ

<空港で活かすには?>

①空港⇔ボールパーク周回バスの運行
②センタープラザでAR疑似ボールパークの設置

次に、三上氏。
<要約>
    ・コンサで活躍しているトレーナーや通訳を、観光案内や入管所、医療施設など外部に派遣している
    ・バトミントン、カーリングチームの発足。
    ・アジア戦略。ベトナムのスター選手、レコンビン選手の獲得や、タイのスター選手  チャナティップ選手の獲得により、アジアへのプロモーションで成功を収めている。

<気になること>
コンサドーレの海外戦略の経緯が、今後のスポーツビジネスの戦略に変える大きな転換期点になると思い、特に気になった。
①7年前にコンサドーレ札幌へ札幌市が、アジアからの観光客を誘致したいと要望があった。
(当時の観光客は、中国・韓国がほとんど)
②コンサドーレ札幌へ相談した理由としては、ASEAN14カ国中、10カ国が好きなスポーツNo.1がサッカーであることが大きな理由
③コンサドーレは、ベトナムに注目。ベトナムのスター選手、レコンビン選手を獲得。
レコンビン選手を架け橋に、ベトナムからの札幌観光を誘致に成功した。
(ベトナムで一番行きたい街は、札幌に)
⑤次に、タイのスター選手 チャナティップ選手を獲得。
獲得の理由としては
・彼のサッカー技術が日本でも通用すると確信があった
・北海道と札幌もタイとの関係を強めたかった。
・背が小さくてもプロで活躍できるという夢を子供達に見せてあげたかった。
⑥チャナティップ選手の活躍は、タイで連日ニュース放送。自然と「コンサドーレ札幌」「札幌市」の情報が流れて行くようになった。
⑦今では、チャナティップ選手の影響力に、注目して、日本企業の製品をチャナティップ選手で、「ガリガリくん」のタイプロモーションを行った。

<気になること>
プロサッカーチームが、チャナティップ選手で、海外向けに日本企業の製品をプロモーションすることは、
Jリーグにおいて、新しいビジネスの創出として、大きな転換期だと思いました

他のスポーツ団体の事例
・2016年に、ヴィッセル神戸所属 元ドイツ代表のサッカー選手「ルーカス・ボドルスキ」を起用した、ドイツ向けに訪日旅行プロモーションを展開。

<深掘り>
何故、コンサドーレ札幌が、カーリングチームとバトミントンチームを発足させたの?
→バトミントンは、北海道が競技人口全国2位。
バドミントンはアジアでは国技になるほど非常に人気の高いスポーツで、クラブのアジア戦略のコンテンツのひとつともなり得ることなどから、この度のチーム設立の運びとなった。
【補足】バトミントンの世界競技人口は5000万人以上。アジア(特に東南アジア)には強豪国が多く、インドネシア、マレーシアでは国技とされている。
他に中国、韓国、タイ、シンガポールも強敵。ヨーロッパでは発祥のイギリスよりデンマークが特に盛んで、強豪として知られる。

→カーリングチーム。日本で第3位の実力を持つチーム。
しかし、元々のカーリングチームを持っていた団体の運営が困難となったため
コンサが参入した。
(北見市を活動拠点とするカーリングチーム「4REAL」をそのままコンサドーレ札幌が引き継いだ。以前の運営は、選手・関係者など身内で行っていたため、収益に繋がりにくい状態が続いていた)

チャナティップ選手って、何がすごいの?
タイのスター選手。低身長ながら、巧みなドリブルと貪欲なシュートの姿勢で「タイのメッシ」と呼ばれている。
2014年にAFFスズキカップで優勝し、大会選定の最優秀選手賞(MVP)を史上最年少受賞した(当時21歳)。
また、2016年のAFFスズキカップでも最優秀選手賞を受賞した。
2018年 Jリーグアウォーズでは、東南アジア初のベストイレブンを受賞した。

「3」スポーツを活用した一般企業のブランディングやスポンサー活用戦略
登壇者:山田 聡、岡部 恭英、小川 太郎、三上 大勝、富山 浩樹、西谷 義久

サツドラ社長 富山社長が主に語った。
<要約>
「サツドラで発行している「EZOCA」×コンサドーレ札幌とのコラボで、どんなシナジーが生まれたのか」が主な話。
また、サツドラとコンサドーレで電力会社を設立した話も出ていた。

サツドラのポイントカードEZOCAとコンサドーレの提携が何故、実現したのか?
当時サポーターの年齢層はJクラブで一番上でサツドラが欲しいユーザーとマッチしていた。
コンサドーレ札幌としては、古くからのファンが多く新規ファンは獲得しずらい課題があった。
新たなファンの獲得方法としてサツドラと提携を組んだ。
また、コンサのサポータがサツドラに行くという循環作用も。
勝利ボーナスポイントを付与するなど、マーケティングの見える化のための施策を実施

電力会社を設立した理由
スポーツクラブが入ることで、消費者に安心感を与えることができる。

<気になるところ>
スポーツクラブで他業種に参入しているところは、あるの?
・湘南ベルマーレ eスポーツに参入。
・東京ヴェルディが幼稚園を運営。通常の基礎教育に加え、東京ヴェルディのOBが幼稚園でサッカーを園児に教える。

「4」日本人・日本企業がグローバルのスポーツ・ビジネスで戦うことの価値や可能性
登壇者:岡部 恭英、福田 拓哉、村上 悠介
DMM.com COO 村上氏が主に語った。
<要約>
ベルギー1部リーグ シントトロイデンの運営について
経緯の説明
・元東京GMの立石敬之氏から、サッカークラブ参入への提案があった。
・クラブ経営で事業・収益化の見込があった。
・ベルギーリーグが。外資の受け入れ易く参入しやすかった(当初は、外資への抵抗感はあったが、交渉していく中で解消していった)
・ベルギーの立地が、オランダ、ドイツ、フランスなどに囲まれているので
 試合の遠征での旅費が安く済み、スカウトも頻繁に来やすいため

シントトロイデンを選んだ理由
・ファンの熱量が高い、スタジアムが綺麗であったこと、前オーナーが高齢でクラブを譲りたいと考えていた。

将来のビジョン
・グローバルスポンサーの獲得など、スポーツビジネスにおいてこれまでにない事業スキームを創出する
・日本のテクノロジーをベルギー、そして欧州に展開する
・日本人選手・指導者・スタッフがチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグに挑戦できる環境を提供する。
(ヨーロッパリーグは、チャンピオンズリーグより下位のリーグ)
・3シーズン以内に、プレーオフ(6位以内)に進出
・STVVのアカデミーに積極的に投資し、トップチームのメンバーに育て上げる。

ベルギー現地での苦労話
・移籍金収入に対する意識の違い
・スポーツサイド特有のスピード感(選手決定のスピードの速さ)
・現地のスタッフとの摩擦

<気になるところ>

<深掘り>

他にベルギーのサッカークラブを運営するメリットはあるの?
・サッカーの切り口だと、すぐにニュースへ取り上げられやすい。
・外国企業(DMMを指す)が、市民に受け入れやすい。

ベルギーのサッカー観戦文化
・ベルギーには、娯楽としてのスポーツが「サッカー」しかない

「5」最新スポーツクラブ経営事例や
その可能性、スポーツを通じた人材育成
登壇者:岡部 恭英、西谷 義久、富山 浩樹、池田 憲士郎

ここでは、「ヴォレアス北海道」の代表 池田氏が主に語った。

<要約>
バレーボールプロチーム「ヴォレアス北海道」のクラブの運営について

バレーボールクラブをはじめたきっかけ
・経営している建設会社の人材確保の方法として、バレーボールクラブを始めた。
・地元を盛り上げたい気持ちもある

斬新な試合演出
・「Vシアター」として、照明や音楽、ダンスでバレーボールをショーとして見せている。
・DJライブ、津軽三味線の生演奏、和太鼓、ヴォレアス北海道専属のキッズダンサーによるパフォーマンス

<深掘り>
「勝つためのスポーツ」から「魅せるスポーツ」へ移行した事例
・フェンシング
フェンシングをより理解しやすく、誰もが楽しめるスポーツへ進化させるために
ルールと技を、感覚的にわかるように可視化するシステムを開発。
2018年度の大会では、赤外線・モーションキャプチャーではなく、機械学習による画像解析技術を用い
選手に負担をかけず剣先の軌跡を可視化した。

<空港>
旭川空港または、新千歳空港のセンタープラザで「Vシアター」を開催。

訪日中国人向け 教育スポーツツーリズムの紹介

登壇者:株式会社GACO Dannie Xu さん

急遽、株式会社GACO Dannie Xu さんがピッチで自社のサービスについて熱く語った。
<要約>
・事業内容の説明

①中国のこども達と、日本の子供たちを合宿させてスポーツを通じ、双方向の理解を深める
②訪日中国人観光客向けに、スポーツを通じた現地の人との交流、地方のアリーナの見学を企画実施している。

・中国スポーツ産業、訪日観光の紹介
中国のアスリートは、国が管理している。そのため、スポーツができる人との差が激しい。
東京⇔京都の観光ルートが、ほとんど。日本の隠れた名所を巡りたいという人が増えつつある。

<気になるところ>
中国のスポーツ事情
・中国のスポーツ市場は、2016年で約30.5兆円
・人気スポーツは、卓球、サッカー、バスケ、バトミントンなど
・アスリートは、国が育て管理する。そのため、アスリートは整った環境下でトレーニングを積むことができる。
・日本と比べ、中国の競技場は少なく、競技場のレンタル代は高い

<深堀り>
中国独自のスポーツ文化
多様なスポーツくじ(お金をかけられるスポーツの種目数は、36種。日本ではマイナーな「レガッタ」「ブリッジ(トランプゲームの一種)」などがある。)

<空港で活かすには>
①空港の観光案内所で、株式会社GACOのスポーツツーリズムを提案できるようにチラシの設置、
②インバウンド向けフリーペーパーやおみやげガイドに、サービス内容の紹介するなど企業自体のブランディング


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