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クリエータ紹介(20) 奥隆輔さん、尾上悟嗣さん、小紫仁嗣さん、執行凱斗さん、宋容輝さん - 広告とグラフィック、LLMの融合で創造する、新時代の購買体験

このnoteでは、福岡未踏的人材発掘・育成コンソーシアム(通称・福岡未踏)のプロジェクト採択者について、プロジェクトの詳細や福岡未踏にかける思いをご紹介します。

今回は、新しい時代の購買体験を、広告とグラフィック、LLMを掛け合わせて創造しようと奮闘する小紫仁嗣さん、奥隆輔さん、尾上悟嗣さん、執行凱斗さん、宋容輝さんの挑戦をお伝えします。

プロフィール

  • プロジェクト名:LLMを活用したサービス比較チャットボット

  • 支援プランと期間:Solve (23年11月〜24年1月)

  • クリエータ:奥隆輔さん(九州大学 工学部 電気情報工学科 2年生)、尾上悟嗣さん(九州大学 工学部 電気情報工学科 2年生)、小紫仁嗣さん(九州大学 工学部 電気情報工学科 2年生)、執行凱斗さん(九州大学 工学部 電気情報工学科 2年生)、宋容輝さん(九州大学 工学部 電気情報工学科 2年生)

左)宋容輝さん、中央)小紫仁嗣さん、右)執行凱斗さん ブースト会議の様子

これまでの歩み、来歴

今回ご紹介するプロジェクトのメンバーは5人で構成されています。小紫さん、奥さん、尾上さん、執行凱斗さん、そして韓国からの留学生である宋容輝さんは、ともに工学部の電気情報工学科に所属する同級生です。彼らは計算機工学コース(CMコース)に属し、主に計算機科学、つまりコンピューターのプログラミングやアルゴリズムについて学んでいます。それぞれが持つプログラミングへの興味と情熱は、小さい頃からのものづくりの経験や家族の影響に根差しています。

小紫さんは、幼少期から父親の影響で技術に興味を持ち始めました。特に小学1年生からものづくりに魅了され、4年生の頃にはプログラミングを始めたと言います。Arduino(アルデュイーノ)を使った電子工作から始め、文字ベースのプログラミングを行い、自分で考えたものを形にする楽しさに目覚めました。高校時代には、ずっとプログラミングを続けることに迷いながらも、最終的に楽しみを追求することを選びました。

奥さんもまた、技術系の職に就いていた父親からの影響を受けて育ちました。PCに囲まれた環境で育ち、幼い頃からパソコンが身近な存在でした。小学校から中学校にかけての夏休みにUnityなどでゲームを作るセミナーに参加し、プログラミングの楽しさに目覚めました。高校時代にはPythonの学習プログラムに触れ、プログラミングの奥深さを実感し、もっと上達したいと思うようになりました。

尾上さんのプログラミングへの関心は、大学に入ってから始まりましたが、思い返すと幼い頃からデジタルデバイスやインターネットコンテンツには親しんでいたと言います。幼少期、祖母が購入したパソコンでインターネットを使い、その楽しさを知りました。小学生の頃にはスマホが普及し始め、これらのデジタルデバイスに魅力を感じました。また、大学受験期になると、機械翻訳への興味も深まり、現在の道を選ぶことに繋がりました。

執行さんも、10歳前後からパソコンを使い始め、新しい技術への関心を深めました。小学6年生の頃、拡張機能を自分でプログラミングできるゲームに出会い、他のプレイヤーが開発した機能に感激した彼は、どのように作られているかに興味を持ち、真似して書いてみるなか、文字を並べるだけでゲームにいろんな表現を加えられることに感動したそうです。その後、高校で進路を選ぶ際、改めてプログラミングを体系的に学ぶことを決意しました。

宋さんのプログラミングへの関心は、中学生の頃、叔父が関わっていた「Method-2」という二足歩行の大型ロボットの開発を目の当たりにしたことから始まりました。高校時代までは学ぶ機会が限られていましたが、プログラミングに長けた人々が集まる大学に進学しようと決め、日本へ留学することを決めました。半導体への関心も強かったことから、日本の中でも半導体産業が盛んな福岡に照準を定め、現在の進路に至りました。

プロジェクトの概要

  • 課題提供:株式会社オプト

5人は、株式会社オプトから提示された課題に取り組んでいます。この課題で彼らは、LLMを活用した革新的な広告体験の開発を目指しています。彼らのプロジェクトは、GPT(言語理解AI)の出現によって変わりつつある広告業界の新しい形を模索しています。従来のネット上での比較サイトに代わり、チャット形式の対話を通じて、GPTがユーザーに合った商品を選んで提案するというものです。

彼らのプロジェクトのユニークな点は、「人は商品を選ぶとき、おすすめポイントや値段など、グラフィカルな配置も重要視しているのではないか?」という仮説です。テキストベースの情報だけでなく、商品のカタログのように、さまざまな情報を視覚的にも魅力的に提示することで、ユーザーの購買意欲を高めることができると考え、広告とグラフィック、LLMを掛け合わせた未踏のプロダクト開発を目指しています。

たとえばスマートフォンの購入を検討しているユーザーがいたと仮定します。ユーザーは、日頃から使い慣れているコミュニケーションツール「LINE」を用い、チャットを通じて好みやニーズを伝え、その情報から、ユーザーにとってベストなスマートフォンの選択肢を絞ったカタログをGPTが生成。個別に最適化されたPDF形式のカタログを出力します。このアプローチにより、一人ひとりに合った商品提案が可能になります。

福岡未踏の期間ではスマートフォンに絞った商品比較チャットボットとして完成させますが、最終的には、どんなジャンルの商品でも使える新たな広告手法としてのチャットボット開発を目指します。

宋容輝さん 成果報告合宿での様子

福岡未踏への応募理由

このプロジェクトチームは、以前から福岡未踏を知っていて、誰かと一緒に挑戦したいと考えていた小紫さんの呼びかけにより集められました。小紫さんは、技術をを実践の場で試す機会を求めていたことはもちろん、チームでの共同作業やプロジェクト管理、グループ開発の経験をしてみたいと考えていました。また、LLMやGPTに関する開発も行ってみたいと考えていたので、絶好の機会であると考えました。

プロジェクトが始まってみると、思っていなかった壁がいくつもあったと言います。技術的な面では、たとえばエンべディング(商品やレビューに関する情報を取ってきたあと、LLMが処理しやすい表現に変換する技術)を担当する執行さんは、プロンプトの不確実性に想定よりも悩まされたと話します。意図しない出力に合わせてプロンプトを調整する試行錯誤には、労力と時間を取られたそうです。また、ちょうどプロジェクト期間中に、LLMに基づいてアプリケーションを構築するフレームワークであるLangChainがアップデートされ、新たな手法に関する知見がインターネット上には不足しており苦戦したとも言います。

さらに、5人という大人数によるチームのため、時間を割けるタイミングが合わないなど、進行管理にも壁があったそうです。機能ごとに開発の担当を分けて進めているものの、コードが揃わないと動作テストが難しく、その点でもプロジェクトメンバーは苦労しました。

宋さんは、今回初めてチーム開発に携わるなか、「他の人が担当している技術についても理解していないと連携が取りづらくなるため、幅広く知識を持ったり、他の分野も学んだりすることが必要と気付いた」と話します。

福岡未踏への応募のきっかけは、小紫さんの誘いによるものでしたが、結果的にメンバー全員が、新たな技術への挑戦やグループ開発の経験を得ることができたプロジェクトになりました。

福岡未踏で得られたこと

彼らのプロジェクトは、LINEでの情報取得からPDF形式でのカタログ出力まで、いくつかのプロセスでまだ開発すべき点を残していると言います。福岡未踏の期間中に、彼らが目指す新たな広告体験をユーザーに提供するまで追求したいそうです。

彼らの今後のビジョンについても伺いました。

小紫さんは、個人開発プロジェクトとして、法律や規定などが絡むガイドラインをGPTを用いて生成する、企業向けのプロダクト開発を進めているそう。これまではGPTをあまり使ってこなかった彼は、GPT-4になり、プログラミングでも活用するようになりました。また、今回、福岡未踏でGPT活用のプロジェクトに携わったことで得た知見や経験を個人開発の方にも活かしたいと考えています。

奥さんが福岡未踏のプロジェクトで学んだ最も重要なことは、「誰かに聞くこと」の大切さです。自分で解決できない問題があって開発が行き詰まったり、辛い期間が続いたりした彼は、チームメンバーに相談すると意外なほどすぐに解決するシーンがあることに驚いたと言います。今後の開発人生にも彼の教訓は活かされることでしょう。

尾上さんにとっては、学校の授業で学んだ知識や技術が、実際に人の役に立つサービス開発に繋がるという経験自体が初めてのものでした。また、チーム開発も初体験だった彼は、スケジュール調整や進捗に関するコミュニケーションなど、誰かと一緒に開発する際にどんなスキルが求められるかを学んだと話します。また、今の彼に不足している技術についての解像度も上がり、学びたい領域が定まってきたそうです。

執行さんもまた、今回のチーム開発の経験全般に価値を感じています。さらに、他者に評価をされ、その評価やフィードバックをもとにプロダクトを改善していくプロセスも貴重なものでした。現在彼は、音声処理関連のAIを開発する企業でインターンをしているそうで、今回の経験がインターン先の業務にも直結し、活かせそうだと手応えを感じています。

宗さんは、触れることができるプロダクトを生み出したことで、これまで学んできたことが役に立つということを実感できたと話します。さらに、韓国からの留学生である彼にとっては、福岡未踏でのチーム開発を通し、日本特有の文化やミーティングの作法、役割分担などを学ぶ機会にもなりました。彼が分からないことがあっても、チームメンバーは待ち、サポートしてくれたそうです。この経験から自信をつけた彼は、日本でさまざまなプロジェクトに今後も積極的に参加できそうだと考えています。

おわりに

5人という大所帯プロジェクトで、広告とグラフィック、そしてLLMを組み合わせた未踏領域に挑戦する皆さん。共通しているのは新たな技術や学びへの探究心・好奇心と、それに向けた真面目でまっすぐな姿勢です。

福岡未踏は彼らにとって、分担して取り組む技術領域という観点でも、チームでの開発という観点でも初めての経験となった点が多かったそうで、彼らが話してくれた学びについてもその多彩さに「なるほど、そんな意外な収穫があったのですね」と感心をしてばかりでした。

彼らの人生において、今回の大きな一歩がさまざまな点で良い影響を与えることは間違いありません。今回のプロジェクトが世の中に出る日も、彼らの未来もとても楽しみです。

成果報告会 修了式でのみなさん

福岡未踏とは

福岡未踏的人材発掘・育成コンソーシアム(通称、福岡未踏)とは、福岡県在住の若手クリエータを発掘・育成し、クリエータの「何かを作るための第一歩」を支援し、また、IPA未踏と同等の支援に加え、複数のIPA未踏経験者からなるPM・メンター陣にて、プレ人材向けの支援を行います。