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クリエータ紹介(18) 尾山幹大さん、 吉田隼人さん、瀧口諒久さん - 消防団の活動のデジタル化・効率化に「オールインワンアプリ」で挑む

このnoteでは、福岡未踏的人材発掘・育成コンソーシアム(通称・福岡未踏)のプロジェクト採択者について、プロジェクトの詳細や福岡未踏にかける思いをご紹介します。

今回は、デジタル化が進んでいない消防団の活動を、オールインワンアプリの開発で前進させようと奮闘する尾山幹大さん、 吉田隼人さん、瀧口諒久さんの挑戦をお伝えします。

プロフィール

  • プロジェクト名:消防団の活動をより円滑かつ正確に行えるソフトウェア

  • 支援プランと期間:Solve (23年11月〜24年1月)

  • クリエータ:尾山幹大さん(九州大学 工学部 電気情報工学科4年生)、吉田隼人さん(九州大学 工学部 電気情報工学科4年生)、瀧口諒久さん(九州大学 工学部 電気情報工学科4年生)

 吉田隼人さん ブースト会議での様子

これまでの歩み、来歴

「消防団の活動をより円滑かつ正確に行えるソフトウェア」は、九州大学 工学部 電気情報工学科に通う4年生3人で構成されたチームによって開発が進められているプロジェクトです。

尾山さんの関心は、情報技術とスポーツの融合にあります。彼はもともと情報技術に興味を持っていたわけではありません。小中高と続けた野球では、体の小さかった尾山さんは、自分のプレーを分析し、PDCAサイクルを回すことこそが活躍に繋がると信じ、パフォーマンス向上のためのデータ分析に興味を持ちました。ある日高校の先生から情報技術を利用することを勧められたのが彼の進路にとっての転機となりました。大学では野球部のデータ分析スタッフとして活動し、エクセルやアプリを使用してデータでチームに貢献。現在は、荒川研究室に所属し、競技かるたの研究を通じて、スポーツセンシングの分野の学びを深めています。

瀧本研究室に所属する吉田さんは、現在は理論的な研究に従事し、機械学習のブースティング分野に焦点を当て、計算効率を高めるための新たな手法の提案について研究しています。彼は、大学に通いながらも企業から業務を受託し、独学でWeb制作やWebデザインを始めました。現在はベンチャー企業でもWeb制作やWebデザインの業務に携わっており、そのクオリティに対し、高い評価をもらえることに気付いたそうです。彼のデザイン能力は、プロジェクトにおいても重要な役割を果たしています。

瀧口さんは、幼児期からパソコンに触れる環境で育ち、Youtubeなどのメディアやコンテンツを見るうちに、漠然と「作る側に回ってみたい」と思うようになりました。プログラミングを始めたのは大学1年生の時ですが、本格的に学び始めたのは4年生になってからだそう。彼が所属する荒川研究室でアプリコンテストが行われ、尾山さんと他の同級生とともに取り組んだことをきっかけに、開発の世界にのめり込みました。現在彼は、大学で、推薦システムの研究に取り組んでいます。

プロジェクトの概要

  • 課題提供:糸島市

彼らが取り組むプロジェクトは、消防団の業務をデジタル化し、効率化を図ることを目的としたソフトウェア開発です。

現在の消防団員の活動には、入退団手続きや災害状況の報告に適したツールが存在せず、紙ベースでの手続きや、コミュニケーションアプリのグループチャットでやりとりをするなどの状態です。また、現状は団員証が存在しませんが、今後は団員を対象とした飲食店での優待企画なども行いたいというニーズがあるそうです。そういった背景から、消防団員の活動のデジタル化を進め、入退団や災害時をはじめ、消防団員の活動に関するコミュニケーションを一元化できるオールインワンアプリを作るのが、このプロジェクトの全容です。これにより、手続きの簡素化、情報共有の迅速化、そしてペーパーレス化などを実現し、消防団員は業務効率が向上するとともに、相互コミュニケーションの促進も期待されます。

このアプリの技術的な工夫ポイントは、インターフェースとシステムの双方にあります。まずは、普段の業務でそんなにデジタルデバイスに触れる機会が多くない消防団員の方々にとって分かりやすいインターフェースを採用すること。またシステムの面では、データ入力や管理に関して、効率的かつエラーの少ないシステムが求められます。

左)担当メンター 糸島市江藤氏とみなさん

福岡未踏への応募理由

プロジェクトメンバーは、尾山さんが吉田さん・瀧口さんに声をかける形で集まりました。

福岡未踏の説明会に参加した尾山さんは、1期、2期で採択されたプロジェクトの発表を聞き、アイデアも技術力も高く驚いたと言います。「自分も参加して、こういう人たちに刺激を受けたい。自分自身でものづくりに取り組む中で技術力を高めたい」そう思いながらも、アプリ開発を始めて半年程度だった尾山さんは、ひとりではなく技術を持つ友人と一緒に取り組みたいと考えました。そこで声をかけたのが、Web開発の技術力とデザイン力を持つ吉田さんと、バックエンド開発に信頼を抱いていた瀧口さんです。

吉田さんは、当初福岡未踏の存在を知らなかったものの、尾山さんからの熱心な説得とプロジェクトの実用性に魅力を感じ、参加を決めました。特に、消防署という公的な機関のプロジェクトに携わることができる点に興味を持ちました。また、プロジェクトが始まってみると、これまで避けてきたデータベースとの連携など、新たな技術領域への挑戦が必要な状況が発生し、エラーが起きるなか なんとか導入するなどのシーンで技術力が磨かれたと言います。他のクリエータたちとの出会いも印象的で、「今まで狭い世界で生きてきたと実感しました」と吉田さんは振り返ります。

一方、瀧口さんは、以前から福岡未踏に関心があり、実際に過去の応募経験もありました。尾山さんからの誘いを受けて、改めてプロジェクトに挑戦することを決意しました。ゼロからソフトウェアを作る経験がなかったので、自分で作ってみたいという思いがあり、そのことが参加への大きなモチベーションとなりました。実際、中間発表などで他のプロジェクトの参加クリエータを見ると、より技術を磨かねばならないという刺激になると言います。

福岡未踏で得られたこと

中間発表までの期間でアプリの大枠はできているという3人。最終発表までの間に実際に消防団員の方にも使ってもらい、フィードバックをもらいながら、アプリをさらに良いものに仕上げていくフェーズです。

一方、吉田さんは、本当に現場で使ってもらうため、福岡未踏の期間が終わった後も糸島市や消防団の方と連携を取り、アプリを継続的に良いものにしていく必要があると考えています。彼は、「完成発表まででなく、大学院卒業までの2年間で、糸島市の消防団で利用されるまで見届けたいと思っています」と話します。

また、3人の今後のキャリアについても伺いました。尾山さんは、小学校から大学まで野球に関わってきた背景から、野球のデータ分析に関するアプリを開発したいと考えています。野球×ITで、彼の挑戦は続きます。吉田さんは、人工知能を利用したマーケティングツールの開発に関心を持ち、それをキャリアに結びつけたいと考えています。瀧口さんは、今回のプロジェクトを通じて、データを用いた機能開発への関心がさらに強まりました。メディアの改善点やペインを解消すること、特に推薦システムの改善についてますます研究を深め、裏側からメディアを良くすることに貢献したいと考えます。

おわりに

尾山さんのスポーツとデータ分析への情熱、吉田さんのWebデザインと人工知能への興味、そして瀧口さんの推薦システム改善に対する熱意。普段は異なる分野にそれぞれ大きな関心を持つ3人の得意分野が融合することで、消防団の業務効率化という社会全体に恩恵をもたらし得るプロジェクトが前進しています。

技術レベルや自分たち自身の成長、そしてプロダクトの改善にまっすぐ向き合う彼らが福岡未踏のプロジェクトで過ごした時間は、彼らにとっても、糸島市の消防団の活動にとっても、大きな価値を生み出すと確信しました。まだまだ続くであろう発展が楽しみです。

左)担当PM中村優吾氏とみなさん

福岡未踏とは

福岡未踏的人材発掘・育成コンソーシアム(通称、福岡未踏)とは、福岡県在住の若手クリエータを発掘・育成し、クリエータの「何かを作るための第一歩」を支援し、また、IPA未踏と同等の支援に加え、複数のIPA未踏経験者からなるPM・メンター陣にて、プレ人材向けの支援を行います。