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クリエータ紹介⑦齋藤旭さん、押田叡進さん - 技術と情熱、二人の信頼で切り拓くゲーム開発の新地平

このnoteでは、福岡未踏的人材発掘・育成コンソーシアム(通称・福岡未踏)のプロジェクト採択者について、プロジェクトの詳細や福岡未踏にかける思いをご紹介します。

齋藤旭さんと押田叡進さん、彼らは異なる分野から手を組み、ゲーム開発の世界に革新をもたらすべく、独自のプロジェクト「ScenarioFlow」に取り組んでいます。この記事では、彼らの来歴、プロジェクトの概要、福岡未踏への応募理由、そして彼らが成し遂げたいことに迫ります。

一番左)担当PM中村直人氏、中央左)担当PM小出洋氏、中央右)押田叡進さん、一番右)齋藤旭さん

プロフィール

  • プロジェクト名:ScenarioFlow: ゲーム開発におけるストーリー進行実装のための 新たなアーキテクチャの提案

  • 支援プランと期間:Grow 3ヶ月延長(23年8月~24年1月)

  • クリエータ:齋藤旭さん(九州大学 工学部 電気情報工学科 3年生)、押田叡進さん(九州大学 工学部 地球資源システム工学科 3年生)

これまでの歩み、来歴

高校からの同級生である二人は、それぞれ異なる専門分野において学問を追求している一方で、共通の目標であるゲーム開発における新たな挑戦に向かっています。

齋藤さんは九州大学工学部、電気情報工学科の3年生で、茨城県出身です。彼の学問への興味は、高校時代までは物理学に向けられていました。しかし、高校2年生の中盤頃から、情報系への関心が芽生えます。彼の興味の転換点は、福岡のゲーム会社の作品に触れたことでした。特に脱出ゲームの1作品に強く魅了され、ゲーム開発への情熱を抱くようになりました。それが後の彼の道の選択に大きな影響を与えることとなります。

押田さんも九州大学工学部に在籍し、地球資源システム工学科の3年生です。彼は、高校からの同級生である齋藤さんと同様に九州大学へ進学しました。彼の研究分野は、一見すると今回のプロジェクトとは直接関連しないように思えますが、地球資源、特に石油や石炭の勉強に従事しています。押田さんの興味は宇宙へ向けられており、特に宇宙の探査技術に関連する学問に魅了されています。彼のこの分野への関心は幼少期からあり、隣県の茨城にあるJAXA関連の施設への訪問が、そのきっかけとなりました。

中間発表会の様子

プロジェクトの概要

「ScenarioFlow」は、ゲーム内での会話シーンやストーリー進行を簡単かつ効率的に実装できるように設計されたライブラリです。このツールを使用することで、ゲーム開発者はシナリオに沿った会話システムを容易に構築できます。

このプロジェクトは、プログラマー、スクリプター、シナリオライターの3者が協力して機能することを想定しています。シナリオライターが物語を創造し、スクリプターがそれをプログラムに適応可能な形に変換し、最終的にプログラマーがそれを実装するという流れです。既存の手法では、このプロセスは時間がかかり、技術的な課題が多かったのですが、「ScenarioFlow」はこれらの作業を簡素化し、よりアクセシブルにします。

福岡未踏への応募理由

齋藤さんは、福岡未踏を知る前から「ScenarioFlow」の開発をすでに始めており、プロジェクトを進めるにあたり、開発資金が重要な要素であることを認識していました。特に、「ScenarioFlow」のプロジェクト進行には、イラストの外注などの必要経費が発生します。これらの費用をまかなうために、福岡未踏に参加し、資金的な支援を受けることが重要な判断となりました。

また齋藤さんは、未踏プロジェクトに応募することにより、単独での開発からチームでの協力作業へと移行する機会になると捉えました。きちんとプロジェクトとして進行していくには、一人の力では限界があると考えたのです。プログラミングの知識や経験がなくても、サポートしてもらえることはたくさんある。そう思い、押田さんを誘うことにしました。特に、高校時代からの友人である押田さんの真面目な性格や、受験勉強の際に目標に対して熱心に取り組む力があることを知っていたので、プロジェクトに貢献してくれるに違いないと信頼できたのです。

押田さんは、齋藤さんがプログラミングに取り組んでいることは以前から知っており、有意義なことをしている印象はあったものの、具体的なことは分かっていなかったと言います。それでもプロジェクトに参加したのは「誘ってもらえて純粋に嬉しかった」から。実際に今プロジェクトを共同で進めるなか、押田さんが想像した以上に技術レベルの高いことに取り組んでいることや、開発に大きな情熱を持っていることを知り、改めて齋藤さんを尊敬したと話します。

福岡未踏で成し遂げたいこと

齋藤さんと押田さんが福岡未踏プロジェクトで目指しているのは、彼らの革新的なアイデア「ScenarioFlow」を実現し、それを通じてゲーム開発の新たな地平を開拓することです。

彼らは、「ScenarioFlow」プロジェクトを完成させることを最優先の目標としています。
プロジェクトの成功は単に完成にとどまらず、その成果を世界に発信し、実際にゲーム開発の現場で使用されることでこのアイデアの効果を実証したいと考えています。

また、二人は、このプロジェクトが二人の将来の可能性を拡げたとも感じています。押田さんは、齋藤さんがいなければ知ることのなかったプログラミングの世界を知り、福岡未踏に参加する他のクリエータと交流するなかでも、「こんな分野に課題を感じるんだな」といった新たな価値観を獲得するきっかけとなりました。また齋藤さんも、普段はエンジニアが周りに多いものの、将来就職した際を想定すると、プログラミングの知識がない人とも円滑にコミュニケーションを取り、共働できるようになりたいと感じていました。押田さんと取り組むプロジェクトにおいて、技術的な知識が多くない人に技術のことを分かりやすく伝えるという命題に挑戦した機会は、彼がいつかエンジニアとして働く際に活きることでしょう。

おわりに

福岡未踏に採択されるプロジェクトは、開発者のみで構成されたチームであることが多く、異なる領域を専門に学ぶ二人が、お互いの人間性・専門性への信頼を軸にプロジェクトを進めるのは珍しいケースでした。彼らの手がける画期的なプロダクト「ScenarioFlow」が、異なるミッションを持つ人同士のコラボレーションを容易に・高品質にするという特徴があるように、彼ら自身のプロジェクトも相互へのリスペクトがベースになっていることに感銘を受けました。実際に、「ScenarioFlow」がゲーム開発の現場で使われる日を楽しみにしたいですね。

担当PM小出氏(左)とお二人

福岡未踏とは

福岡未踏的人材発掘・育成コンソーシアム(通称、福岡未踏)とは、福岡県在住の若手クリエータを発掘・育成し、クリエータの「何かを作るための第一歩」を支援し、また、IPA未踏と同等の支援に加え、複数のIPA未踏経験者からなるPM・メンター陣にて、プレ人材向けの支援を行います。