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クリエータ紹介(19) 伊﨑柊平さん、小栁慶さん - クレジットカードの最適な選択をサポートするチャットボットの開発

このnoteでは、福岡未踏的人材発掘・育成コンソーシアム(通称・福岡未踏)のプロジェクト採択者について、プロジェクトの詳細や福岡未踏にかける思いをご紹介します。

今回は、ユーザーに最適なクレジットカードの提案をしてくれるチャットボットの開発に取り組む、伊﨑柊平さん、小栁慶さんの挑戦をお伝えします。

プロフィール

  • プロジェクト名:LLMを有効に用いたクレジットカード比較チャットボット

  • 支援プランと期間:Solve (23年11月〜24年1月)

  • クリエータ:伊﨑柊平さん(九州大学 大学院 システム情報科学府 1年)、小栁慶さん(九州大学 大学院 システム情報科学府 2年)

左)小栁慶さん、右)伊﨑柊平さん 成果報告会の様子

これまでの歩み、来歴

伊﨑さんは、高校時代から情報系に対する興味を抱き、大学でプログラミングサークルに参加したことで、開発の道に進みたいと強く思うようになりました。彼は、サークルでの活動として企業から開発業務を受託し、プログラミングスキルと実践的な開発経験を積んだほか、サークルの先輩との個人開発プロジェクトにも参加し、開発に対する情熱を高めていきました。個人では、画像だけでコミュニケーションするWebアプリケーションを作り、コンテストに出すなどの活動をしましたが、賞を取れずに悔しい思いをしたと言います。

一方、小栁さんは、普段スマホを使うなか、目に見えないものがどう動いているのかの仕組みに興味をもち、情報系の道を選びました。大学入学後、当初は通信系を学んでいましたが、想定よりも電気系の内容に近いことが分かり、ソフトウェアの方向へと舵を切りました。小栁さんは「4年生から本格的にソフトウェア開発を始めたので、経験は浅いんです」と話しますが、アルバイト先の飲食店で、締め作業を効率化するアプリ開発に挑戦するなど、すでに研究以外の場での技術の応用を経験しています。

伊﨑さんと小栁さんは高校時代からの友人で、同じ学部に所属しながらも、異なる研究室で学び、それぞれの分野で独自の道を歩んできました。高校時代の繋がりが続き、大学時代も互いに影響を与え合いながら、少しずつ技術を身に付けてきました。

伊崎さん 成果報告合宿での様子

プロジェクトの概要

  • 課題提供:株式会社オプト

伊﨑さんと小栁さんが取り組んでいるプロジェクトは、「LLMを有効に用いたクレジットカード比較チャットボット」です。ユーザーは、チャットボットと会話のやりとりをすることで、特にクレジットカードの内容を比較し、それぞれの用途に合ったクレジットカードを選択できるようになります。

このプロジェクトの一つの大きな挑戦は、ChatGPTのようなLLMが、その性質上、最新の情報に基づいて回答することが難しいという点にあります。この問題を解決するために、外部データベースとの連携が必要となります。当初彼らは、データベースと連携すれば、適切な情報を得られると考えていました。しかし、ユーザーがデータを入力し、その情報をもとにデータベースを検索する際、文字列だけでは適切な情報を取り出せないことがあるという課題にぶつかりました。そこで、検索元となるデータの収集方法を変更したことで、より精度が高まる形で候補を抽出することが可能となったそうです。

このプロジェクトのもう一つの重要な要素は、ユーザー体験の最適化です。ユーザーがチャットボットに提供する情報量は、使いやすさと精度のバランスを取る必要があります。あまりに多くの情報の入力を要求するとユーザーは使いづらくなりますが、情報が少なすぎると適切な提案ができなくなります。ユーザーが入力する情報の種類や量を適切に設計することは必須の課題と言えます。LLMにはChatGPTを採用していますが、ChatGPTは与える情報やプロンプトによって返ってくる内容のクオリティが大きく変わるため、試行錯誤を繰り返して残り10日で精度を高めていきたいと語ります。

福岡未踏への応募理由

伊﨑さんは以前から福岡未踏を知っており、応募してみたいとの思いを持ち続けていました。しかし、自身のアイデアを固めて応募するには時間が足りず、2期での応募を断念。3期で、企業の課題を解決する形で参加できるプラン「Solve」があることを知り、課題一覧を見ると、以前から取り組んでみたいと考えていたLLMの利用に関する課題を見つけ、挑戦したいと考えました。また、福岡未踏ですでに採択されたプロジェクトのメンバーに、かつて一緒に開発をしていたメンバーがいたこともあり、「面白そう!」との思いも高まっていたと言います。

また、未踏プロジェクトは彼にとって、好きな開発をしながら報酬を得ることができる絶好の機会でもありました。彼はアプリ開発の経験はありましたが、データスクレイピング(データを集める処理)の経験がなかったので、得意な人にプロジェクトに入ってもらいたいと思うようになりました。そこで、高校からの友人である小柳さんに声をかけたのです。

小栁さんは伊﨑さんからの誘いを受け、当初は「足を引っ張ってしまうのではないか」という不安もあったと言います。しかし、データスクレイピングに関しては経験があったという自負もあり参加しました。

プロジェクトが始まってから、彼らは、課題を提供した株式会社オプトでAIに関する開発を担当する方とも相談の場を設けてもらったり、プロジェクト管理やチーム開発に関する実戦的な学びを得たりと、想定以上に貴重な体験をしていると感じているそうです。

福岡未踏で得られたこと

彼らは、プロジェクトの完遂、つまりユーザーにストレスのない最適な量の情報を取得し、適切な結果を返すというプロセスを仕上げることは最重要の課題と捉えています。

伊﨑さんは、福岡未踏に参加したことで、発表の場での周囲からのフィードバックや、定期的なミーティングでのアドバイスなどを通して、アプリに改善を重ね、中長期的に取り組むことでプロダクトの精度を高めていくということを学んだと話します。今後も研究を続けつつ、個人でものづくりに携わっていきたいと考えているそうです。

一方、小栁さんはこのプロジェクトでの経験を、自身の未来のキャリアに活かすことを目指しています。彼は、就職先でのアプリ開発やシステムの企画において、未踏で学んだ知識と経験を活用することで、業務の効率化や新たなサービスの開発に積極的に貢献しようと考えています。

おわりに

伊﨑さんと小栁さんは、お互いの知識・技術を信頼し、「自分にないものを補完してくれる」とお互いを評するようなチームです。インタビューを通し、彼らの挑戦が、福岡未踏の終了と共に終わるものではなく、むしろ彼らの技術者としての長期的なキャリアの始まりなのではないかと感じました。

想定と異なる状況や壁にぶつかったとき、さまざまな手法を試行錯誤しながら乗り越え、福岡未踏でのプロジェクトを間も無く完走しようとする姿。とても頼もしく見えました。これからの彼らの活躍がとても楽しみです。

右)担当PM岩本智裕氏とお二人

福岡未踏とは

福岡未踏的人材発掘・育成コンソーシアム(通称、福岡未踏)とは、福岡県在住の若手クリエータを発掘・育成し、クリエータの「何かを作るための第一歩」を支援し、また、IPA未踏と同等の支援に加え、複数のIPA未踏経験者からなるPM・メンター陣にて、プレ人材向けの支援を行います。