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「自分に合った仕事」なんてない

最近養老孟司先生の本にはまっている。バカの壁は2003年に発行されてヒットしたが一度も読んだことがなかった。

しかしひょんなことから彼に興味を持ち、本を読んでみたらとてもおもしろかった。特に「超バカの壁」には学ぶことがたくさんあった。

その中で一部気に入った文章について書きたいと思う。

ニートやフリーターの人は現状に満足しておらず、何かを求めている人が多いらしい。働かないのは「自分に合った仕事を探しているから」という理由を挙げる人が一番多いという。これがおかしい。二十歳やそこらで自分なんかわかるはずがありません。

二十歳どころか30代後半の私ですら自分に合った仕事は見つかっていないのだっ!

自分に合った仕事ってなんだろう?ってずっと考えてきた。

日本では大企業に勤め、社内で賞をもらい、昇進したことで自分にはこの仕事が合っていると思っていた。

しかし実際、昇進は周りの御膳立てがあったおかげだし、自分の実力ではなかった。ただの運だったのだ。

私は海外にも出てきて、いろんな会社を渡り歩いる。5年間で勤めた会社3社。全然長続きしていない。

そして転職というのは自分がやりたいからとか、自分に合っているからと採用されるわけではなく、全て経験が重視である。

経験があれば同じような職で採用される。これが全て。なので私の仕事は新卒時から今まであまり変わっていない。


仕事というのは社会に空いた穴です。ともかく目の前の穴を埋める。それが仕事というものであって、自分に合った穴が空いているはずだなんて、ふざけたことを考えるんじゃない、と言いたくなります。
目の前の穴を埋めていれば給料をくれる。仕事とはそもそもそういうものだと思っていれば、「自分に合った仕事」などという馬鹿な考え方をする必要もないはずです。

新卒でも転職でも海外転職でも、仕事というのは空いた穴を埋めるものなのだ。

転職をするとき、とりわけ海外転職をするときは大きな対しを抱いている人が多いと思う。

私も例外ではなく、海外で働くことに憧れを持っていた。海外の企業に採用された、わくわくハッピーライフが始まる!と期待もすごかった。

しかし、実際は特に華やかな仕事でもなく、期待していたような仕事ではなかったので一年ほどで転職した。転職してからも自分に合わないと思ったり、自分にはもっと合った会社があると思い込んでいた。

完全なる勘違いだ。

私は単に人手が足りない会社で、たまたま経歴がその職種に合っていたから採用されただけだったのに、自分が海外に来たということや日本で賞をとったり昇進したことで自分は特別だとか、海外で活躍したいと思い込んでいた。

本当にばか。でも本気でそう信じていた。


合うとか合わないとかいうよりも大切なのは、いったん引き受けたら半端仕事をしてはいけないということです。一から十までやらなくてはいけない。それをやっていくうちに自分の考えが変わっていく。自分自身が育っていく。そういうふうに仕事をやりなさいよということが結論です。

目の前の仕事を一生懸命やる、それが大切だ。

私は海外で働いた2社目はコロナでクビになり、現在の会社に拾ってもらったのだが働き始めて一年、毎日楽しく働いている。

自分の期待していた職種ではなかった。もっと高みを目指したかった、もっとキラキラした会社に行きたかった。しかし苦しい状況の中私を採用してくれた会社に感謝しかなく、一生懸命仕事をしようと毎日がんばっているのだ。

この仕事が自分の期待していた仕事ではなかったが、今までの経験を生かせる仕事であったし、毎日真面目に仕事をすることで同僚にも褒めてもらえることが多くなった。

この会社に穴が開いていた、それを私が埋めた、真面目に働き、会社から給料をもらう。それで十分なのである。


今の時代、「自分らしさ」とか「自分探し」「自分に合った仕事」「ナンバーワンよりオンリーワン」という言葉が一般的になってきて、それに踊らされている自分がいたけど、無理する必要はないんだって気づいた。

この本で養老先生が言っていることをうんうんと言いながら読んでいると心がすっと軽くなった。



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