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⑤最低限の負荷で最大限の効果を生み出す計画なんて存在するのか?

 このマガジン「経営計画はなぜうまくいかないのか?」のもととなる書籍を書いたきっかけは、ある会社の経営企画部長からの相談でした。計画を作るときにはいつももめる。役員には立派な親会社から来た人もいて、そういう人は相応の高いレベルを求めるために「なんだこのレベルは!」となる。ところが「現場が動いてなんぼ」の人たちにとってはどうでもいい指摘で、実際に計画内容のレベルと業績はどこまで関係があるのかどうかもわからないといった具合でした。

 ただ、実際に現場から提出された計画書を見ると、たしかに人によってばらばらで、かつ、内容、言葉遣いすらも到底外に出せないくらい恥ずかしいものであり、どうやって指導すればいいのかという相談でした。

 あるべき考え方を教えたところでそれを自分で理解して自分の状況に合わせて考え出すようなアプローチが有効だとも思えない。それよりも、「こんな例はダメ」という例をいくつか教えてもらえる方がかえって手っ取り早そうということでした。

 会社の内部事情、外部環境、事業特性は様々ですので、教科書的なものを書こうとすると、どうしても抽象的なものに終始してしまいます。それに沿って自分たちの状況に合わせたものを作り出そうとすると、相当、そうした物事の考え方についていなければできません。人それぞれには特性がありますので、感覚的に売ることが得意な人は論理的に考えることが苦手であったりもします。

 であれば、「仕上がりの姿がこんな風になっていたらダメですよ」ということを示しておくほうがまだ使っていただけるものになるのではないか。そうした問題意識からできたものです。

 基本的に文字に残るものは「これはダメ」という後ろ向きの切り口よりも、「こうすべき」という前向きな切り口のほうが、前向きな人間を惹きつけると思います。ですので、このような失敗からの切り口で書くのは少し躊躇がありました。

 しかし、自分が今までしてきた「業績の悪い会社を良くする」という仕事を振り返ると、他の方に貢献できる情報としては「こうなったらまずいですよ。その前に回避しましょう」ということをきちんと書くほうが、読む方としても嘘が少なそうでいいのかもしれないかと思い、いろいろと記憶を掘り起こして記載していった次第です。何か1つでもヒントになれる部分がありましたら幸いです。

 計画というものは本来、いたってシンプルなメッセージが誰にでも感じ取れなければならないはずです。そうでなければ、社員は日々の行動においてどう判断していいのか迷う瞬間が出てきてしまいます。

 独裁者のようなオーナー社長がいてどんどん成長していく会社で、計画なんてものは大胆な売上目標があるくらいで、何もないことがよくあります。そうした会社は、その内容の良し悪しは別としても、社員の全員が「社長が考えそうなこと」を理解しているということがあります。つまり行動基準が統一されています。隠れて何かこそこそとやることにも限界がありますので、PDCAもよく回ります。そうした有様を見るにつけ、「しっかりした」会社で優秀な社員が計画作りにてんやわんやとしている姿を思い浮かべ、企業経営の奥深さを感じてしまいます。

 このマガジンが、どこかの会社で計画を作成したり見直したりする際にお役に立てれば幸いです。

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ありがとうございます♪
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中沢光昭

経営者として破綻会社や業績低迷企業の再建・変革実績を多数持つ。また、事業承継の受け手として小規模事業会社を所有。著書に『経営計画はなぜうまくいかないのか?』『事業承継による、中小企業を売却するときの基本』『会社員が一生モノの“実のある仕事”を創る方法』などがある。

経営計画はなぜうまくいかないのか

計画策定について、抽象的な「あるべき論」を読んでも、自社の個別事情に照らし合わせようとすると、「うちは特殊だから」といって途中で閉じてしまうことが多いと思います。本書では失敗パターンを示し、本来の考え方の大枠も示すことで、反面教師として使っていただきたいと思います。計画をど...
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