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「イノセント・デイズ」読むの二回目

この小説を読むのは2回目で、購入したのはやはり帯の見出しだったと思う。最後にひっくり返るミステリー小説とか、書いてあったと思う。
1度目読んだときは、すっと読み終わり「あれ?」と思ってしまった。内容が思い返せなかったので、再度「どこに心に響くところがあるのか」と疑問を持ちながら、再読したのでメモします。

前半、田中幸乃の短い生涯を、いきなり最初に裁判の判決文で否定してしまう。が、そこに行き着くまでの道程が心に苦しく伸し掛かる。人間の性格、感情は、周囲の生活環境が大きく影響するものであり、本書でも緩やかに幸乃の性格と人生を決めていくのが読んでて理解できてしまうのが悲しい物語。理不尽この上ない所に、環境に染まっていくのは小説の中だけではないでしょうが、本書がそれほどまでに丁寧に書かれているのは、作者の文才を遺憾なく発揮した証拠と感じました。
後半、判決後では旧友の翔がなんとか判決を覆せないかと面会し、真実を追い求める。も、真実はえてして奇なるものであり真実がわかるまで右往左往する。真実を明らかにするのには、時間というものが必要であり、刑期に間に合わない中、刑に服す終盤看守が感じる幸乃の「死ぬために生きる」姿が真実であり人とは諭すとは難しいと感じたところである。ここが文字を通して想像でき、手に汗握る1場面だった。これらの描写は、巻末の参考文献の多さと取材による裏付けがあってこそ。
 冤罪、死刑、町内いじめ、貧困、事件、DVと明るいことがない濃い内容で、今の世の中でも共通の話題である。
読み終わったあとに最初から少し読み返すと、色々繋がるところもあり発見がおしろいところもあり、読み応え十分な小説です。

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