水谷みつる/Mitsuru Mizutani

かつては芸術関係の仕事をしていました。ここ数年、当事者研究に取り組んでいますが、いまは…

水谷みつる/Mitsuru Mizutani

かつては芸術関係の仕事をしていました。ここ数年、当事者研究に取り組んでいますが、いまはとくにトラウマとグリーフをめぐる当事者研究やアートや演劇との協働の可能性について考え、実践しています。他の関心は、自死遺族支援、障害×アート、哲学対話/相談など。アイコンは齋藤陽道さん撮影です。

最近の記事

五輪開会式での森山未來のパフォーマンスについて

五輪開会式での森山未來のパフォーマンスについて、森山の直前の出演作である岡田利規作・演出『未練の幽霊と怪物―「挫波(ザハ)」「敦賀」―』を見た者の一人として、記録を残しておきたい気持ちになったので、いくつか重要と思われるリンクをここにまとめておく。 (1)まず、今回の五輪開会式でのパフォーマンスについて、藤田直哉がハフィントンポストに書いた詳細なテキスト。仏教と能、そして『未練の幽霊と怪物―「挫波」「敦賀」―』の文脈から、パフォーマンスが論じられている。 (2)『未練の幽

    • 29年目の命日に――力ではなく対話を

      今日は2020年4月27日。1991年4月27日に自死した弟、水谷哲史の29年目の命日を迎えた。 例年なら、弟の誕生日の3月30日から命日まで、どこか調子が悪く重い気持ちで過ごし、27日を過ぎると急にふわっと心と身体が軽くなって、ああ、やはり命日の影響を受けていたと思うのだけれど、今年はやはりずいぶんと感じが違う。 木蓮や桜が咲き、散り、新緑が芽生え、季節が春から初夏へと移り変わっていくのは、いつものこの時期と変わらない一方、日々、入ってくるニュースはコロナウイルス一色に

      • スティグマの毒に抗うために――「スティグマ化もロマン化もしない」と決めた28年前の夜について

        4月21日から23日にかけてBuzzFeed Newsに掲載された、岩永直子記者による入江杏さんインタビュー全3回を読んだ。当事者が語ることと、同時に、内なる他者を含むさまざまな他者によって、眼差され、語られることの狭間で、入江さんがいかに誠実に丁寧に思考し、内にこもらずに外へと活動を広げてきたかが伝わる内容で、その途方もない歩みを思って胸が詰まった。 入江さんから贈られた言葉 実は入江さんは、前回のnoteと大きく重なる内容を、2016年に私自身が企画に携わった東京大学

        • 困難を表現すること――個にとっての重みに辿り着くために

          春の盛り。身近にある桜は、ほとんどが散り、咲き始めがゆっくりの幾本かが葉桜になっている。時は、新緑が眩しい季節に移りつつある。死んだ弟、水谷哲史の誕生日3月30日と命日4月27日に挟まれたこの季節は、いつも弟を思い出しながら過ごす。とりわけ、死の一週間ほど前に(ちょうどいまの時期だ)、入院中の精神科病院から一時帰宅していた弟と二人で実家の近くを散歩していて、新緑が春の陽射しに神々しいまでに光り輝いていた一角に同時に立ち止まり、「きれいだね」と言葉を交わしたことは忘れられない。

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          『沖縄スパイ戦史』(三上智恵×大矢英代監督)の問いかけるもの

          尊敬する友人の三上智恵さんと若きジャーナリスト大矢英代さんの共同監督作品『沖縄スパイ戦史』を見て感じたことを綴りました。もともとFBのノートとして書いたものですが、思いのほか多くの方に読んでいただけたので、noteというものを初めて使って、WEB上に公開します。 映画の細部に触れているので、見る前に予備知識を入れたくない方は、ご覧になってから読んでいただければ幸いです。 * * * 『沖縄スパイ戦史』は、どんなにぼんやりとした観客であっても読み取り間違えようのないほど、

          『沖縄スパイ戦史』(三上智恵×大矢英代監督)の問いかけるもの