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レディファースト

 僕は3年間の海外生活を終えて日本に帰ってきた。
 久しぶりに女友達に会い、街に出かけた。

「ドンドンドンキで買い物しようか?」
 と僕は彼女に言った。
「何それ? 買い物ならドンキでしょ?」
「うん、じゃあドンキにしよう」

「KFCでフライドチキンを食べないか?」
「何それ? フライドチキンならケンタッキーでしょう?」
「うん、じゃあケンタッキーにしよう」

「バンスキンロビンスでアイスクリームを食べようか?」
「何それ? アイスクリームならサーティワンでしょう?」
「うん、じゃあサーティワンにしよう」

「ねえ、あなた変わったわよね。何でも私に合わせてくれて、海外生活ですっかりレディファーストが身に付いたっていうわけね」
 彼女はすっかりご機嫌だ。
 言い方が違うだけなんだけど。

 ドンキは海外ではドンドンドンキっていう名前だし、ケンタッキーはKFCだしサーティワンはバンスキンロビンスだ。
 みんなおんなじだ。

「はい」
 そう言って彼女は手を広げた。
「何?」
「海外じゃあ仲の良い友達はハグするんでしょ?」
 彼女は「シン仮面ライダー」の緑川ルリ子が映画の中で言った「ヒーローと言ったら赤なんでしょう?」というセリフのようにそう言った。
「うん」
 僕は迷うことなく彼女を抱きしめた。

 ああ、うれしい、うれしい、うれしい。
 僕は彼女が大好きだ。
 大好きな彼女のことが抱けるなんて。
 なんて僕は幸せなのだろう?

「海外じゃあさあ、仲の良い男女の友達は普通にセックスしたりするんだけど、する?」
 僕は調子に乗ってそう言ってみた。
「え、うそ」
 と言って彼女は驚いた。
 さすがにそれはないよね。
 さすがにそんなの信じないよね?

「うん、じゃあしよっか?」
 と彼女は答えた。
「え?」
 信じた?
「私のことが好きなんでしょ? 嘘までついて、私としたいんでしょ? わかってる。欲しいいんでしょ? オトナブルーなんでしょ?」
 そそ、そうだけど。


「条件があります」
「何?」
「友達関係は解消。今日から恋人同士になること」

「オッケイ!」


おわり。


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