PB(パクるための正当な企業努力)VS

先日、あるメーカーから「取扱店から取引終了宣言を受けた途端、そのお店のPBで類似商品がつくられていた。」という相談を受けた。正直、それは初めて聞いた話ではなく、似たような話は過去にも何度かあった。

光浦醸造のメイン商品となった「フロートレモンティー」はいろんなお店で取り扱っていただいているけど、取引量が増え始めて依存度が高くなった途端、そのお店のPBとして類似品がつくられ始めて取り扱いが終了〜、なんてことは当然起こり得ると思っているし、その覚悟はある。

「売れそうな商品を仕入れて、売れると分かったらPBつくってサヨウナラ。」

これはひとつの流れになっている。

最初の頃はそういう大きい企業が零細企業のアイテムを飲み込むようなやり方は理不尽だなと思っていたけれど、インターネット時代の今、ただパクればその企業のイメージが悪くなるのは明白であり、そのハードルを乗り越えるだけの、「パクるための正当な企業努力」をしているのを幾度も目にしてきた。

それは、より高品質なものを安く提供することだけではなく、魅力的に伝えるための優良コンテンツを作り続けることであったり、多くの広告費を投じることであったり、知財リスクを回避するためのコストであったり、PBブランド全体のブランド力を高めることであったりする。

展示会で意気投合し、取り扱いを開始してくれた信頼のおけるバイヤーも、残念ながらいつまでもそのポジションにはいない。
次の担当になったら「ん?何のこと?」というシーンはよくある。
そんな状況でPBを増やしていくと上が決めたら従わざるを得ないし、遠慮はないのだ。

本来であれば特許や意匠、商標といった「知財」こそがその砦なんだけど、コストもかかるし、そこまでのオリジナリティーのある商品なんてそんなに簡単には作れないし、「微妙な知財」であれば、いくらでも簡単に攻略されてしまう。
以前、ある知財のプロから、

「企業がその気になれば崩せない知財はない。」

と言われた時は鳥肌が立った。あぁ怖い。

結局のところ、長い間取引をしてくれた店舗がPBを出して取引が終了したら、残念ながら卒業式だと思うしかない。殿堂入りしたのだ。

泣き寝入りをしろということではなく、嫌だったら開発段階から「知財」を相当意識した商品づくりを行わなければならない。
逆にいうと、もし、知財を意識せずに「ひょんなこと」からできた商品だとしたら、その「ひょんなこと」は誰かの知財を侵害している可能性もある。

「パクられた!」と自信を持って言える状況をつくるのは実は結構大変なのだ。

じゃどうするか?
B2BでもB2Cでも何でも、最終的に「人」が使うアイテムの場合、ありきたりだけどもやはり『ファンをつくる。』ことに尽きると思う。
1曲だけじゃファンにはなってくれない。
パクられても、パクられても、10曲くらいリリースして、アルバムを作って、何度も何度も聴いてもらって世界観を出すしかないのだ。

だからメーカーは開発の手を止めちゃいけないんだと思う。ロングセールやロングテールを最初から狙うのはカッコイイけど今のPB時代においてはリスクが高い。
品質と価格、オリジナリティー、知財、SNS、総力戦で、少しずつ成長させながら先ずは10曲出そう。10曲出せば世界観が伝わると信じて。

アイテムはパクられる可能性はあるけど、世界観は簡単にはパクれない。その世界観のファンになってくれたお客さんはきっとメーカーを助けてくれる。
「パクるための正当な企業努力」をしてくる企業に抵抗できるのは「知財」じゃなくて「ファン」なのだろうと思う。


・・・実は、今回相談をしてくれた当事者の方にはそんな綺麗事は言っていない。
あまりにも辛そうだったから。
PBになってサヨウナラは、零細メーカーにとってとても辛い状況だということは痛いほどよく分かる。そのPBのメーカーとしてすら選定されないなんて。
「バイヤーと信頼関係を築いていたと思っていた。」という言葉を聞くと、本当に辛く、綺麗事は言えなかった。

でも、小売店が成長してくるとPBが選択肢として出てくるのも十分理解できる。
なにかwin-winな方法は無いんだろうかね?

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