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「クラーケンは放たれた!(release the Kraken)」世界のツイッターでバズってるこの言葉の意味はなに?シドニー・パウエルってどんな人?

2020/11/23

 22日、トランプ米大統領の弁護団を率いるルディ・ジュリアーニ氏は会見で、最近トランプ米大統領自身のツイートによって近々大統領弁護団に入ると予告されていた弁護士のシドニー・パウエル氏が、米国大統領の弁護団には属さず、トランプ氏の個人的な弁護依頼も受けていない、と事実上の「無関係」宣言をした。

 一体なぜ、わざわざ会見をしてまでシドニー・パウエル氏との業務上の関係を否定したのだろうか?シドニー・パウエル氏とはどんな人物なのか?

 ここには、日本の新聞が報じない実に興味深い事情がある。

米国史上最も危険な会見

 シドニー・パウエル氏が注目されたのは、彼女のエキセントリックで荒唐無稽な発言の数々が発端だ。

 特に、先週木曜日19日に行われたパウエル氏の会見は、さすがのジュリアーニ氏も関係をはっきりさせないといけないと決心させるほどのものだったようだ。

 米Vice紙によると、19日の会見でパウエル氏はこのように発言したという。

「ここ米国では、選挙への干渉においてベネズエラキューバ、そしておそらく中国を通じた共産主義のお金の大きな影響があることが明らかになりつつあります。」

 その後、彼女はQAnon信者のアカウントが日々インターネットで振り撒く陰謀論の数々を公の会見で開陳し続け泣かんばかりの勢いで「まだ目覚めていない」人々に訴えかけた。

「私たちは後退するつもりはありません」とパウエル氏は語った。 「私たちは今、この混乱を一掃するつもりです。 トランプ大統領は地滑り的勝利を収めました。 私たちはそれを証明し、自由に投票する人々のためにアメリカ合衆国を取り戻すつもりです。」

 最近、電子選挙システムの不正はなかったと明らかにしたことでトランプ米大統領に解雇されたサイバーセキュリティおよびインフラストラクチャセキュリティエージェンシー(CISA)の責任者であるクリス・クレブス氏は、木曜日の記者会見を「アメリカ史上最も危険な1時間45分のテレビ放送」と呼んだ。 「そしておそらく最もクレイジー。」

ハードコアなQAnon信者

 しかし、この会見も日頃からシドニー・パウエル氏の言動を追っているウォッチャーたちには珍しくもないものだった。

 上述のVice紙によると、 木曜日の記者会見のちょうど1年前に、パウエル氏はQAnonのYouTubeショーに出演し、彼女の弁護士仕事の顧客である元国家安全保障補佐官のマイケル・フリンに対するQAnon信者であるホストのサポートが「巨大で非常に役に立った」と称賛した。

 パウエル氏がQAnon信仰を公に支持したのは、このショーが初めてではなかった。QAnonとは、ドナルド・トランプ大統領が、米民主党とハリウッドのエリートが運営する人食い悪魔のような子供の性的人身売買ネットワークの秘密を明らかにしようとし、密かにディープステート(影の政府)と戦っていると主張する根拠のない陰謀説だ。

 QAnonの教祖であるQという人物は、2017年10月に米国の匿名掲示板である4ちゃんねるで初めてその投稿が確認されたが、Qが4ちゃんねるに投稿していた初期の頃からシドニー・パウエル氏はQの投稿を一般の人々に届ける強力な3人のQインフルエンサーのうちの1人であったことがNBCニュースによって確認されているという。

 彼女のツイッターアカウントでは有力なQAnon信者のアカウントも数多くフォローされている。トランプ氏の主要な陰謀推進者の1人になる前は、パウエル氏は元国家安全保障補佐官のマイケル・フリンの弁護士として最も有名だった。フリンは彼自身がQAnonの神話の中で重要な人物だ。

 パウエル氏は、自身のQAnonへの信仰を隠すことは全くせず、彼女のツイッターのプロフィール写真にはQAnonの重要なモチーフである「ホワイトハウスと嵐」(トランプ氏が民主党などの悪党を逮捕するが来ると予言がある)、また背景画像にはQAnonのフレーズである「Wethepeople」が書かれている。

クラーケンは放たれた!

 シドニー・パウエル氏のツイッターアカウントには、またこのようなハッシュタグがある。

#ReleasetheKraken (クラーケンを解き放て!)

 これもまた、QAnonたちに広く受け入れられている言葉だ。

 これは、今月13日にシドニー・パウエル氏がFoxニュースのインタビューに対し、ドミニオン投票機がどのように投票を変更したか「驚異的な」統計的証拠を持っていると述べた時に、その証拠を出す比喩として使われ、以来ツイッターでバズり人気のフレーズとなっていた。

 人々はインタビューの抜粋をツイートした。「マイケル・フリンの弁護士シドニー・パウエルは、ドミニオンの投票機が投票用紙を変更したことを示す“驚異的な”統計的証拠と証言を持っていると言っている。この不正はベネズエラ、キューバ、中国に端を発している。彼女は “クラーケンを解放するつもりです”と言っている。」


 meaww.comの説明によると、 'release the Kraken'と言う英語は、今日の若者言葉で「ケツ(お尻)を蹴っ飛ばす」や「うんこをする💩」という意味で使われていると言う。だが、パウエル氏はその意味で使っているわけではないようだ。

 そもそもクラーケンとは、Wikipediaによると北欧に伝わる「海の怪物」。タコやイカなど巨大な頭足類のような絵で表されることが多いとのことだ。


 meaww.comによると「クラーケンを解き放て」というフレーズは、2010年の映画「タイタンの戦い」からのものだと言う。 モンスターがオリンポスの神々の武器として紹介されているこの映画でリーアム・ニーソン扮するゼウスのセリフに「クラーケンを解き放て」というものがあり、それ以来インターネットミーム(コピペ)になった。 怪物としてのクラーケンは、「海底2万マイル」、1981年版「タイタンの戦い」、「レゴ・バットマン映画」、「水爆と深海の怪物」、「ジャック・ザ・ジャイアントキラー 空飛ぶ城と天空の王国」、「アトランティス/帝国最後の謎」、 「パイレーツオブカリビアン:デッドマンズチェスト」、「パイレーツオブカリビアン:ワールドエンド」、「ホテルトランシルバニア3:サマーバケーション」などの数多くの映画に出演している。

 また、小説にも何度も登場している。たとえば、ジョージ・R・R・マーティンの「氷と炎の歌」では、パイクのハウス・グレイジョイの印章は黄金のクラーケンだ。 また、「アルテミス・ファウル:タイム・パラドックス」、「シャンナラの願い歌」、「スイングの少女」などの本にも登場している。 「アンブレラアカデミー」のクラーケンは、水中で呼吸する能力があるため、海の怪物にちなんで名付けられた。 「Kraken」は、2015年のEP「TriggerWarning」で取り上げられたナイフパーティーの曲でもある。

 なお、22日のジュリアーニ氏の会見の後、シドニー・パウエル氏は「ステロイドで補強されたクラーケン」#KrakenOnSteroids というパワーワードを繰り出し、またもバズっている。

追記 シドニー・パウエルの犬笛で一斉にジョージ・ソロスの偽ニュースが世界中で発信される

2020/11/24

 ニュースサイトViceによると、パウエルは先週の会見で億万長者の慈善家ジョージ・ソロスが運営するグループが、大統領選挙が不正に行われたという根拠のない非難の中心にある会社であるドミニオン社とオフィススペースを共有していると主張した。

 主張は嘘だったが、それは問題ではない。問題は、会見から数日経った現在、ソロスが選挙干渉で逮捕されたと主張する偽情報がソーシャルメディアに殺到していることだ。

 この出来事は、法的手段が潰えたトランプ大統領とその仲間たちがますます乱暴な陰謀論を受け入れ、かつそれを自ら犬笛を吹いて、新しい偽ニュースを作り出させようとする工程を明らかにしている。

 パウエル氏のソロス陰謀論の元になったと思われるのは、カナダの反イスラム極右団体「グローバルプラットフォーム」のウェブサイトであるRebel Newsが先週出した記事で、トロント市でドミニオン社と環境団体MakeWayが同じ建物にオフィスを構えており、その環境団体にソロス氏が献金しているというものだ。しかも、この建物からMakeWayの名前が「不自然」に消されたという!

 だが、これは偽ニュースだった。MakeWayの名前が建物から消されたのは、MakeWayの事務所が昨年実際に引越ししたからであり、この団体がソロスから金を得ていた事実もなかった。これはMakeWayの声明で明らかになった。

 その事実を知らないパウエル氏は、木曜の会見でこのように述べた。

「 ドミニオン社の幹部は今どこにも見つかりません。 彼らはオフィスを一晩で別の場所に移動しています。 トロントにある彼らのオフィスは、ソロスの団体の1つと共有されていました。」

 この偽ニュースをさらに間違って広めたパウエルの言説は、反ユダヤ主義のQAnonにとって見逃せないユダヤ人富豪のソロスという陰謀のアイコンと相まり更なる新しい偽ニュースを作り出す源となった。

 これまでにも誤った情報を広めた実績のあるウェブサイト、YourNewWireは、月曜日に「選挙干渉のためにフィラデルフィアで逮捕されたジョージ・ソロス–裁判官が言論統制を命じる」という見出しで記事を公開した。その記事では、ソロスが選挙の正当性を損なうためにドミニオン投票機会社と協力していたという「証拠」として、ドミニオンとMakeWayに関するカナダのニュースの誤った記事を引用している。

 分析ツールCrowdTangleのデータによると、このストーリーはすでに5,000人近くで共有されており、Facebookだけで12,000件を超えるインタラクションを獲得しているという。

 しかし、それはほんの始まりにすぎない。別の偽情報ウェブサイトであるConservativeBeaverは、YourNewsWireのレポートに基づいて同様の記事を公開した。これは、Facebookでの8,500の共有と23,000を超えるインタラクションを含む、さらに多くのエンゲージメントを獲得した。

 トランプの偽情報でいっぱいのFacebookは今とてもホットだ。

追記 クラーケンは放たれた!パウエル氏がジョージア州に選挙不正について訴訟を起こす。でも字が間違ってた。11/25




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