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赤いキャップの彼(はじめて買ったCD)

唐突ですが、わたしには小学生の息子がいます。
アホ全開の息子。
だけど当然、年を重ねるたびに
心も身体も大きくなっている。
わたしも気を引き締めなくては。
最近そう思うことがしばしばある。
なぜならば、
わたしの趣味や好みが芽吹き始めたのは
小学校の中学年くらいだから。

わたしが小学三、四年生の頃、
その人は突然わたしの前に現れた。
軽快な音楽にのせて手を叩き、
赤いキャップを被り、赤い服と短パン。
インカムをつけて歌っていた。
そう、ポンキッキーズのBOSEだ。
すぐに夢中になった。
かわいいお顔の割に、賢いトーク。
うさぎになってる安室ちゃんや蘭々さんにも
デレデレしたりしない。
スーパークール!!(かっこいい!!)
小学生のわたしはたちまち恋に落ちた。

わたしには姉がいて、とても優しくて、
そして大変話のわかる姉だった。
「この人、好きになった。誰?なに?」
そう尋ねたその日の午後には、友だちから借りたというシングルCDを貸してくれた。
そう、『今夜はブギーバック』

(シングルカットのやつはありませんでしたが、借りたのは、あのちいちゃなCDシングルです)

ご厚意に平伏し、エンドレスリピートした。
なんてかっこいい。
なんてすごい曲をつくるんだ!!と。
ブラボー!BOSE!!
ブラボー!スチャダラパー!!

話のわかる姉は、それだけにとどまらず、
何日か後に、またCDを貸してくれた。
そう、『ドゥビドゥWhat?』
小学生ですからね、毎日毎日呪文のように唱えるわけですよ。
ドゥビドゥワッ、ドゥビドゥワッドゥワ♪
母は気味悪がった。でもやめろと言われることはなく、延々と歌わせてくれた。
最終的に止めたのは姉。うるさいと。
姉には御恩があるので、歌うのをやめました。

そうこうしているうちに、
スチャダラパーがアルバム出す。
そんな情報が小学生の目に入ってきた。
当時はCD屋さんに、来月の新譜みたいなカレンダーが貼ってあった。
そのカレンダーに載っている、
あのスチャダラパーが!!
買う、絶対買う。
強い決意でした。
母の承諾のもと、お年玉貯金から三千円を用意。
買い逃しがあってはならないし、
田舎だったので流通しないおそれもあり、
はじめての予約をした。
姉はその頃からジャニーズに精通していたので、予約の手順もお手のもので、優しくおしえてくれた。

発売日当日、予約の引換券みたいなものを握りしめて、CD屋さんに向かった。
店の奥から、店員さんがうやうやしく持ってきたそれは、輝いていた。

今となっては予約特典なのか初回限定版なのか、よくわからないけど、
とにかくCDケースはオレンジ色で、
下の緑色の歌詞カードがあやしく透けて、
かっこいいもの買っちゃった感が溢れていた。
しかもポスターと、
オレンジ色の二段重ねのお弁当箱(もしかしたらマルチケース的なもの)がついてきた。
なにもわかっていなかったわたしは、
これもわたしがもらっていいの?
とあわあわ取り乱したが、
店員さんは冷静に袋詰めしてくれた。
そうしてお宝を自転車のカゴに乗せ、
猛スピードで、でも段差には最善の注意を払って、自宅に帰ったのだった。

AM0:00の
ひとをそわそわさせる音楽から始まり、
怒涛のスチャダラタイム……
小学生には意味のわからない言葉や、
知らない、未知の世界の部分がたくさんあった。
それでも気だるく楽しげに流れていく音楽とライムに、わたしは笑顔になった。
満喫しているうちに、
始まりと同じ雰囲気をもった、
AM8:30が
流れてきて終わりを知る。
スチャダラパーの世界が終わる。
余韻を知らない小学生のわたしは、
リピートボタンを押した。

それからは「5th WHEEL 2 the COACH」を
毎日聞いた。
まわりにポンキッキのボーズいいよね!
という子はいても、
スチャダラのBOSEいいよね!
新アルバムも最高!!
という人はいなかった。
わたしはあやしげな曲を口ずさむ女だったろう。
でもだれも否定はしなかったのだ。
へー、知らないという友だちはいた。
気味悪がる母もいた。
今夜はブギーバックから
小沢健二にハマる姉もいた。
けれど、そんなマイナー(子ども向きでない)なの
やめなよとか、
まわりに良さを共感してもらえないのに
楽しい?とか、
ラップってなんだそれとか、
全然誰も言わなかった。
それって本当にしあわせだったな、と
今になって思う。
好きなものを自分で選んで、
楽しく聴けていたこと。
好きなものは音楽に限らず、小説や漫画や、
写真、映画、好きな人だって、
全然否定されなかった。
だから今の私がある気がするのだ。

そうして冒頭の決意に戻る。
わたしも息子の選んだものを、否定したくない。
時々突飛すぎてついていけないけれど、
彼がすきだと言ったものに、
賛成や同意はできずとも、
いいんじゃない。すきにやれ!
そういうふうな位置にいたい。
今は選べる選択肢が多いから、
心配にはなるけれど、
親の前で堂々と聞いたり読んだり観たりするものは、否定したくない。
そういう心づもりをしておこうと、
最近強く思う。


最近、5th WHEEL 2 the COACHを聴く機会があって、思わず走り書きました。
思い入れある……
サマージャム’95とか名曲。
ライダッ
て一緒に言いたくて練習したり、
ライダッ
て歌詞カードのうしろに書いてあるんだけど
その口はBOSEですきっ歯に萌えたりして……
勿論ファンレターとかも書いたし……
溢れ出る好き!!をどうにかこねくり回して落ち着けてましたね〜!!

その後に出た

こちらも好き。
初見ではノイズとかも多くてこわかった。
小学生のときはあんまり聴かなかったけど、
その後中三とかそのくらいになって聴いて、
かっこいいなと思った気がする。
とくに『彼方からの手紙』はもはや、
わたしの好きな世界を閉じ込めてくれている。
二曲目の彼方からの手紙が好きなんだけど、
リミックスがバッファロードーターなんだよね。
それは好きだわ!と大人になってからも、
また味がしました。



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