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Stones alive complex (Iris Quartz)


物事の配分ってやつを見えないかき混ぜ棒でなんとでもできるボスから権限を託された風格の声が、
グラスのアイスにカランカランと響く。

びっくりして発泡液の中を振り返る。
復刻祭で出会った、あのアイリスだった。
すべてが始まる虹の目で、クロスワードした白い花びらのドレスを着てるリソース醸造新聞のコラム担当だ。

「あんなとこにあった虫の居所のショックで眠ったフリしてる者どもと、カクテルパーティーしたわ。
とんでもない話よね。
喜びの踊りが尊厳を満たすのは、忠実なる自分への従者だけということになってきてるのに。
彼らにとっての思慮深さの表し方は、定着するはずがない月末金曜の早引けルールのキャンペーンなみ。
複数の言葉からなる身の程の釈明ばかりだったから、論点が早業の指摘してやったあげく・・・」

そこまで言って、フチ子さん風にグラスのふちに肘をつく。

「ワタシという飲料は、足取りが軽くなる道筋を探すレンズでもあるという揺るぎない事実を呑ませてあげたの」

そう彼女は勝ち誇りぎみ。

「だって、使い回しの仮面の交換ばかりに夢中で、何もできない。
いずれの仮面も運命のタイヤに砕かれる砂利になる。
でもアナタたちは運命を支配する側よ。
笑っては閉じる唇が道を切り開く革命な側。
もうこの水の星に正義をもたらすことはできません。
あの準備不足を正すことはできません。
けれどね。
二元に分かつ半身の件はもうすぐ精神駆動重力と話がつき、
ちょっとした感情的な矛盾を迎えるプロセスを挟むにしても、
自己で自己を独裁する酩酊状態になると、
自己が隠している財宝は自分で奪い放題よ!
カクテルパーティー効果で仕込まれたメッセージが伝わるかしら?」

アイリスは語尾で少し叫ぶ。
手持ち無沙汰な聞き手であるボクは、
記憶を検索し始め、リアクションの糸口を探す。

してるうちに。
このアイリスの、手順の凝った独白も掻き消されてしまった。
グラスのそこここから、プチプチした泡のつぶやき声があがり、
そのつぶやきの匂いには、慎重に重ね築き上げてきた夜の説得力があったからだ。

パワーストーンらしい惑星規模なメッセージ性が、
炭酸たちのシェアで星の溶解二酸化炭素ネットワークを駆け巡ってゆく。
ボクは想った。
もしかしたら信念の一部は、臆病に含まれるのかもしれない。
大半は、無知ゆえの空騒ぎと言える。

最近ではパーティ気分な瞬間を喜んで、
大声をあげたり冗談を使ったりして、
無知を逆手にとった運気のアベレージ変更を盛んにやっている。

「もつれた思考パターンは、缶詰幼稚園かすり傷組からの友だちだったわ!!」

なるべく喉の奥からの甲高い声で、うつ向いた発泡聴衆でもその前頭葉へ、互いのためになることをしてやるべき。
と、それに続くアイリスの言葉は気泡から足の小指をくすぐられ半ば切れ切れになった。

「マインドグラスの底まで、短すぎて届かない信念の支柱など。
ひと息をついてから、ひと泡吹かせてやりなさい」

脳内検索が検索上位を発表し、興奮した字体で、
その封鎖線は操作されていると告げられる。
年齢確認が必要な情報も多分に含まれていることもあって、
ホントに知りたい事柄は検索サービス上位にはリストされてこなくなった時代の到来は確かだ。

アイリスの閉じかけた瞼と息づかいを見ていると、
ぼんやりデジタル化されたペーパーレスの人影が、
腕まわりに、ためらいがちに集まり。
グラスをつまむ指先を圧して、
個人的なためらい度の脈拍を診た。

道徳的な辻褄合わせがしたいらしい発泡の指の泡がアイリスの足首もつかむ。
アイリスの眉がすっと跳ね上がり、喉の奥から剣の舌を覗かせる。

ああ、こちらとは対立要素ながら完全犯罪トリックの喉越しはたまらない、と言う。
通報されない事件の後味、釘を刺された証言はアイスキューブ製証人席の手前で縮みあがってる。
傍聴席最前列で涙を浮かべる親族。
道徳的な務めを果たす善良なそれら関係者の、根も葉もないソツのない優等生な同調圧力。
発言の前に宣誓させられるのは、羞恥心で本音を隠すことを誓わされる凍った思考統制。
掛け値なしな衰退をもたらす清らかで美しい作為の泡で偽装されてるこのトリック。

「その光景を頻繁に目にしだした時こそ、アイスなアイズを愛す合図だとは考えられない?」

そのフレーズにフリーズしてアイリスを見つめた。
そのフリーズにフリーズして、アイリスが見つめ返してきた。

(おわり)

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