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Stones alive complex (Himalayan Aquamarine)


鮭茶漬け警部の捜査は、暗礁にのりあげていた。

この難事件は、半年前の犯行によく似ている・・・
ひとり娘の誕生日だったから、よく覚えていた。

おままごとの延長で料理に目覚めた幼い娘が、わさびを珍しいジャムかなんかと間違えてパンに塗り、断末魔の悲鳴をあげた日だ。

かわいい娘は幼く、この世界のことはまだよく分かってない。

さて、今回のこの事件だ。
納豆をかけることにオカルト的儀式の要素があるというのは、どれだけ信憑性がある?

現場を深刻な表情でうろつくタラコ茶漬け博士は、この種の猟奇的事件の分野では鑑識界の第一人者である。彼女は、犯人が危険な悪魔崇拝者だとすぐ決めつけて妄想にとり憑かれるスピリチュアルかぶれではない。それは明らかだ。鮭茶漬け警部の妻という立場でもあり、公私共に信用ができるリアリストなのだ。

しかし、しかめっ面で現場の状況を調べる博士の鑑識結果が出るのを待ってる時間が惜しい。
一刻も早く犯人を逮捕して自白させなければ、次の具材が猟奇的な犯人の餌食になってしまう!
鮭茶漬け警部は現場を一目見た瞬間から、犯人は危険な悪魔崇拝者だと断定していた。

相当に悪魔的な事態が起こったことは間違いない、それを確信させる現場のありさまだった。

書斎に戻り必要な文献を調べて、これが悪魔崇拝者がとりおこなった儀式だという根拠を見つけ出そうか?
今はそれ以外に、何か手立てはあるのだろうか?

引き裂かれたカラの納豆パックが、この現場に散乱していた。
その白いプラスチックの破片は、取り出し切れなかった納豆のねばねばな糸で繋げられ、幾何学図形となってランダムな位置に散らばっている。
中年にさしかかる年齢の警部でさえも、納豆パックを手を汚さずに開けられるようになったのは、つい最近のことだ。

パックはミシン目から切ると簡単に開けられるという逆転の発想も最近知ったが、その次のぴらぴらセロファンにはどう対処すればいい?そこがいちばんの難関なのに。

台所の床の、もとい現場の床の、幾何学図形は悪魔的に計算され尽くした配置で置かれたものなのか、それとも、いつもの自分と同じようにイライラして引き裂いてしまったのか・・・?
ぴらぴらセロファンは、ドリームキャッチャーの効果を狙ってるのか不敵にも窓ガラスに貼りつけられてる。
これらの証拠物件は、どれも謎だらけだ。

タラコ茶漬け博士が、お茶漬け警部へ面倒くさげに手招きしてきた。

鑑識の結果がでたようだ。

彼女は腕を組み、とてもうんざりしていて、

「犯人は。
納豆茶漬けが美味しいらしいとどっからか聞いたようだけど、お茶漬けの元も入れずに、単に納豆だけでお茶漬けを作ってみたらしいわね。
だから薄まった納豆の味しかしなかったんだわ。
ひと口だけしか食べられず、この遺体を放棄したわけよ。私たちがちょっと目を離したスキをついて・・・」

現場である台所テーブルには子供用のドンブリが置かれ、中に放置された米の遺体はぶよぶよにふやけ、ねばねば糸で縛られ冷えきっていた。

「被害者の死亡推定時刻は、
30分~1時間前よ」

と、博士は続け、

「犯人のプロファイリングもできてるわ。
正しいレシピをググれるスキルは無く。
マニュアルも読まずに電化製品をガチャガチャいじくって、メーカーが想像もできなかった故障を起こさせることが可能な知能の持ち主ね」

「素晴らしい推理だ!
犯人の目星もついてるのか?」

「現場の状況から明らかね。
内部犯行に間違いないわ。
単純な消去法を使ってみても、
内部の人間からあなたとわたしを除けば、残るはひとりよ」

「残る人間?
よく分からんが・・・」

「分からん・・・って、なによ今さら」

「い・・・いったい誰なんだ?」

「しつこい!すっとぼけないでっ!
あなたが悪魔的な儀式で造った娘のことでしょっ!
だから、ここの掃除はやっといてね」

(おわり)

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Mituyuki Takatuki

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