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デンマーク流アウトドア、ネイチャートイレの洗礼

北欧と聞けば何を思い浮かべるだろうか。

高福祉社会、洗練された家具や街、おしゃれな人達、ゆとりのある丁寧な暮らし、雄大な自然。人によって想い浮かべるものは様々だが、私は特に「アウトドア大国」のイメージが強かった。

私たち夫婦は登山やキャンプが趣味で、好きなアウトドアギアのメーカーが北欧発祥のものが多かったのだ(お洒落で機能性が良いものが多い)。また、アウトドア雑誌でもしばしば、「北欧の自然」について特集しており、その特集を見ては、美しい自然の中でアウトドアを楽しんでいる人たちの写真に目を奪われた。

そういった経緯で、「北欧で暮らしてアウトドアを楽しみたい」と憧れを募らせ、ついに夫婦で会社を退職。2019年8月からワーキングホリデーを利用してデンマーク生活を始めた(当時、北欧でワーホリ対象国はデンマーク🇩🇰とノルウェー🇳🇴のみ)。言葉も文化も違い、「北欧流のアウトドア」について詳しく知らなかったので、北欧独自の成人教育機関「フォルケホイスコーレ」に入学し、アウトドアクラスを受講することにした。(フォルケホイスコーレについては下記サイト参照)

そうして始めたデンマークでのアウトドア生活で私たちは、自然を楽しみながら日本との違いを学び、双方の良いところを再発見し、非常に満喫している。


デンマークの自然とアウトドア

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まず、デンマークにきて驚いたのが、都市と自然の距離が近く隣り合わせになっていること。もちろん日本にも美しい自然が広がっており、隣り合わせに住むことができる場所もある。

だが、北欧諸国では日本に比べ、人口密度が低いために居住エリアと自然がより近く感じられる印象を受けた。街から徒歩で森や湖までアクセスできることが多く、たくさんの人が乗馬や散歩、ピクニックやカヌーなど、各々自然を満喫している。

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日常で自然を感じ、アウトドアを楽しめるのだが、トイレの数が少なすぎるため、困る事が多い(都市部はまた別の話)。

日本ではもちろん場所にもよるが、登山やハイキングのコース上、道の駅など、トイレ設置数が多いため、トイレマネジメントについて困ることは少なかった。だがデンマークでは圧倒的にトイレが少なく、人気ハイキングスポットに1つもトイレがない事が結構あり、トイレマネジメントが難しいのだ。

忘れもしない、アウトドアクラス初日のハイキング。お弁当(サンドイッチ)を持参して、1日ハイキングの予定だったがスタート地点の駐車場にしかトイレがないという事実を到着直後に教えられ、

「ハイキング中にトイレに行きたくなったらネイチャートイレを使うこと。」

という、少し衝撃の事実を教えられた。

ちなみにネイチャートイレとは、大自然の良さげな(最低限のプライバシーを確保できる)場所でするトイレのこと。自然を感じつつ、開放的に、ときには野生動物とトイレスポットをシェアしながら使うことができる。ちなみに公衆衛生の観点から、川や湖の近くなど水辺を避けるのが望ましい。

この日は夏だったので、水分補給は必要だし昼休憩も挟む予定で、食べるもの食べて飲むもの飲んだら、トイレに行きたくなるのが正常な生理現象。

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(c)2019 Shoma Fushimi All rights reserved.

男性陣は女性に比べてネイチャートイレのハードルが低いので、昼休憩後にむちゃくちゃカッコいい背中を見せながらネイチャートイレを探しに行った。

アウトドアクラスの先生(女性)も何でもないことのように、「ちょっと行ってくる」と一言おいてネイチャートイレを探しに行った。その背中を頼もしく眺め、その日の私はギリギリ我慢ができたこともあり、ネイチャートイレデビューは果たせず終わった。

日本を出てから(ある程度予想はしていたものの)、日本のトイレ文化や各所にトイレが設置されている環境というのは、非常に恵まれていたな、と改めて実感させられた。その後もハイキングやサイクリングを楽しんでいるのだが、「トイレ問題」は非常に悩ましい。

もちろん、日本にも「ネイチャートイレ」はある。登山雑誌などで「どうしても我慢ができなかったら、こういうルールを守って使いましょう」という記述をちらほら見ることがある。ただし、ゴリゴリの登山家などを除いて、一般人が登山やハイキング等を楽しむにあたって、「ネイチャートイレの使用」は最後の手段に近い。なので、私も未だ未経験だった。

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だけどある日、旦那さまと森の中を散歩していたら、出かける前に2杯も飲んだコーヒーの影響でトイレに行きたくなり、「森デビュー」を果たすこととなった。この日は、帰るまで我慢すると人としての尊厳を守れなくなる可能性が高かったため、デンマーク生活7ヶ月にして満を辞してのデビューを果たしたのだ。

*ちなみに、「日本ではトイレに行く」の隠語として「お花摘みにいく」(主に女性が使用)、「鹿を撃ちに行ってくる」(主に男性が使用)という表現があるが、デンマークでは「お花を出してくる」という言い回しがあるらしい。

意外とプライバシーを守れるスペースがあったことと、ちょっと開放的な気分になれたのが大きな発見だったが、精神衛生上よろしくなかったので、できれば今後はあまり使いたくない。今後も、トイレマネジメントに気をつけながら、デンマーク流のアウトドアを楽しみたいと思う。






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