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2022上半期に聞いた音楽20(前編)

少し早いですが2022年上半期によく聞いた音楽を少しまとめてみます。
前半は邦楽寄り、後半は洋楽寄りです。

まずは前編をどうぞ。

■Are U Romantic? / UA

最近一番聞いている盤。
ここ最近メッキリ90−00年代再評価もあってか、私の中でUA再評価が勝手に上がってきていた中でリリースされた新譜。GEZANマヒト、ハナレグミ、中村佳穂、くるり岸田、ナルバJQ、DragonAsh kj…と六者六様の実力派ミュージシャンの楽曲提供が豪華なのに、全然ばらつきがなく居心地の良い「UA」のEPにまとめ上がっている奇跡。相思相愛のリスペクトがあって成り立つものだなあ…
ヤンハスが筋肉を歌うように、ただただお茶について歌う「お茶」はとりわけ白眉。


■Tokyo State Of Mind / KAN SANO

これもSpotify立ち上げて何聞こうか?ってなった時にスッと選ぶことの多かった盤。
Kan Sanoのアーティストキャリアとしては11年目、アルバムとしては6枚目の作品。いかれたBabyのカバーや、客演へのともさかりえの起用など、うなる人の目を引くポイントも素晴らしい、のですが、なんというか、それ以上にシティポップ界隈的に「盤石」なアルバム。小手先なく直球。タイトルから完璧じゃないですか。Tokyo State Of Mind。そしてそのタイトルに偽りのない楽曲たち。
おまけで言うと、何かの彼のインタビューで「30代後半になって、吉田豪の『サブカル・スーパースター鬱伝』を読んで、みんな鬱になるんだなと思った」みたいな話をしていて、まあそんな雰囲気も少し漂っていて、そこに共感したのもあったのかもしれません…たぶん鬱にも優しいアルバム。


■脈光 / 大石晴子

ベストオブ新人枠。
カテゴライズするなら、青葉市子や中村佳穂の隣だろうか。あるいは空気公団、原田郁子。フリーフォーク以降のフォークソングに糸のようにポロポロと紡がれる言葉が気持ちよい。レースカーテン越し日差しを浴びているような、心地よい光と影の加減。「許し」「恐れ」のような影の言葉と「懐かしさ」「手の届く」のような光の言葉がほんとうにさりげなくポロポロと交互に編み込まれる、等身大の宇宙。
アルバム最後の「発音」のずっとジワっと引き上げてエンディングに向けて絞っていく感じは本当に心地よい。


■春火燎原 / 春ねむり

「今何を聞くべきか」「2022年にお前は何を言いたいのか?」と問われれば、春ねむり氏のアルバムは絶対に外せない。何気なく聞いては、何度も泣いた。本当に泣いた。
宇多田ヒカルと並んでpitchforkで8.0…も勿論すごいのだけれど、そんな見出しで語るのも本当に惜しい。ポエトリーリーディングからミクスチャーロックまで全部混ぜ込み、楽曲中でも自称する「ライオットガール」のジャンルに見事に着地している。戦争、マイノリティ、生きづらさ、すべてを真正面から巻き込んで感情、感情、徹頭徹尾感情の応報ラッシュ。しかも惜しみなく21曲1時間2分。もはや怪物。
過去作と比べてとりわけ感じるのは「悲しみ」や「悔しさ」や「怒り」の【表情】が歌い方からすごい見えるようになったよね…というところ。節々で演劇を見ているよう。
あとは私はこのアルバムに何をいえばよいのだろう…とにかく私が言葉にできないことを彼女が叫んでくれている。聞いてほしい。彼女のことを信じている。


■BADモード / 宇多田ヒカル

pitchfork8.0の話が出たので…こちらもpitchforkが何点つけようが関係ないのですが…
急に発表されたアルバム、客演プロデューサーはエレクトロニカの至宝floating Points。その情報だけでもう衝撃的なのに、もちろんFloating Pointsを含め海外のコンポーザーを乗りこなしてちゃんと「JーPOP」の枠の中に着地させるし、表題曲の「BADモード」はコロナ禍の全鬱パーソンに効く言葉を全部選んでるし…チャレンジ精神の観点からも、普遍的なポップスとしても、非の打ち所がない100点満点の王者のアルバム。
個人的に刺さったのは2020年リリースだけれど「誰にも言わない」の「一人で生きるより」「永遠に傷つきたい」からポロポロ並ぶ言葉たちの、散文的で全ては言葉にしないけれど、そのパラパラ並べられる言葉だけで十分何か心象風景が伝わる「行間」のような力。いやあ、とんでもないよ…


■Victory Of Hardcore / BBBBBBB

なんかマジメなディスクレビュー続いちゃってますね?真面目すぎません?そもそも今の音楽シーン、ボカロにしろシティポップにしろ、なんか凄いのわかるけどマジメすぎませんか?ハイパーポップは勢いあるけど、あれだってなんかマジメじゃない?疲れちゃいません?そういうの。もっと「うるさい!!!はやい!!!やったー!!!」みたいな音楽聴きたくないですか?
そんなあなたにはこれ。うるさい!!!はやい!!!ハードコア!!!ビクトリー!!!最高ですね。必要です。今こういうの。ちなみに私は五月蝿いのでこのアルバムを最後まで聴けていません。


■Explode / JUBEE

ハードコアは聴く人を選ぶかもしれない(ハードコアだからね)けど、ミクスチャーロックはみんな好きじゃないですか。男の子はみんなカレーとラーメンとミクスチャーロックが好きでしょ?「車内で聴かせる竹内まりや/本当は聴きたい銀杏BOYZ」パンチラインでしょ?
BIMのお友達、JUBEEのミクスチャーロック愛溢れるアルバム。ハイパーポップ寄りのヒップホップ…それこそ(sic)boyとか…が00年代回帰もあって最近大分ミクスチャーロックに隣接している感じがあるのですが、JUBEEのこのアルバムはもう直球であの頃のDragonAsh。あるいはマッドカプセルマーケット。つまりはミクスチャーロックそのもの。
とはいえ老人会に収まらず、パワーポップ方面とも繋がっているので「新しい音楽」としても勿論聞けるよ。


■20(Complete Mixtape)/ LEX

LEX好きなんですよね。気前いいし、自信いっぱいだし、でも間違ったり人を傷つけちゃったりしたらちゃんと相手の気持ちを心配しながら御免なさいできる(これめちゃくちゃ重要)。「良いやつ」じゃないですか。
昨年リリースの「LOGIC」はインパクトのある曲を派手にたくさんいれて彼のキャリアの名刺がわりになりそうな名作でした。それと比べると「ミックステープ」でもありもう少し等身大のLEXが並んでいるのがこの20。フォークギターのサンプリングに寂しげな歌を載せる様は今は亡きテンタシオンを少し思い起こさせる。「日常」って感じですね。個人的にはストラングラーズのGolden Brownをサンプリングで持ってきてるのが好き。


■TOKYO VIRUS LOVE STORY / mizuirono_inu

World End’s Girlfriendでお馴染みVirgin Babylonから刺客のバンド。1枚目のアルバム。
レーベルとジャケットだけでもう「一筋縄で行かない」ことは十分に読み取れると思うのですが、とにかくいろんな激情全部のせの小劇場状態。バンド、エレクトロニカ、激情、ポエトリー、ナードカルチャー、コロナ禍、全部全部載せてキラキラ泣きながら笑ってる。完璧な形で蘇るゼロ世代の続きの物語。
「まだ音楽で新しいことが生まれる可能性あるんだ、期待していいんだ」という気持ちです。ワクワクします。ワールドエンド、調子はどう?


■道ーSTORYー / DJ KRUSH

アルバム単位で全部選びたいな…と思っていたのですが、どうしてもこれだけは無視できなくて…DJ krushのラッパー3人を客演に迎えた3曲EP。
Ralphもすっかり波に乗っててカッコいいのですが、志人が完全に卍解している。完全に感情の鬼になっている。必聴。

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後編に続く

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