ミッドタウンに住んでるという紳士なおじさんにナンパされた

(この話はすべて実話です)

先日の夜、ミッドタウンの前を1人で歩いていた。

すると突然「あれ?どこかでお会いしましたっけ?同じマンションですか?」と横から男性の声がした。

声の先に目を向けると白髪で目鼻立ちがハッキリしているタイプ、体型もシュッとしていて紳士的な雰囲気のある50〜60歳くらいのおじさんが、花粉症で手放せないだろうマスクをわざわざとって話しかけてきた。

「どこかでお会いしましたっけ?」

なんて、声を掛けられたので私も知り合いかと思い顔を覗きこんで確認した。言われてみれば確かに、どこかでお会いしたことのあるような顔。でもそれがどこなのか、思い出せないし、もしかしたら、人違いなのかもしれない。

「同じマンションってミッドタウンですか?私は住んでないです。違いますよ」と気付いたら自然に会話に応えていた。「ではどこにお住まいなの?仕事は何されているかた...?」

そんな感じで歩きながらおじさんとの会話が始まった。「どこかでお会いしていたかもしれないですね。なにかのパーティーでした?」私が聞くとおじさんは「日本のパーティーはあまり行かないからなぁ。僕が日本で行くとしたら大使館のパーティーぐらい」とのこと。

「どうですか?一杯珈琲でも飲みませんか?」気づいたらおじさんにリードされていた。「このへんはスタバぐらいかなぁ、それかお酒は飲めます?どこか近所のバーでも行きます?」

さらに、おじさんにリードされていた。

「リッツのラウンジありますよね?あそこはどうなんです?」と私が言うとおじさんがまた「0時で閉まっちゃう。あと、あそこは騒がしいから」と却下され気付いたらタクシー乗り場まで歩かされていて「西麻布に行ってください」とタクシーに乗っていた。声をかけられてからタクシー乗車まで、約3分。

先に言っておくけど私はナンパについて行ったことなど過去にない。

もしかしたらおじさんは知り合いの知り合いぐらいの人物かもしれないという期待と、この人はいったい何者か?もしも話してみて楽しかったら友達になろうという好奇心と、これが詐欺師のナンパだとしたら完成度がたかすぎるので騙されたフリをしてこの後どんな展開を仕掛けてくるのだろう、モニタリングしてみようとちょっとワクワクした。

タクシーの車内で「海外から帰ってきたばかりで、3日間で7時間しか寝てないんだよ」とおじさんの寝てない自慢が始まった。おじさんの仕事はコンサル系だそう。「お仕事、大変ですね」と言っておいた。

「普段はどんな食べ物食べるの?僕は洋食ばかり」とまた聞いてもいないのに三つ星レストランで毎日いい食事をしているんだと言ってきた。

西麻布の交差点のちょっと入ったところにある、こじんまりとした、客層の落ち着いたバーに到着。おじさんは私の履いていた靴を褒めてくれて「ナンパの教科書に書いてありそうなことを全部コンプリートしてくるな」と内心思っていた。「とりあえず女性の持ち物を褒めておけ」とナンパの教科書に書いてありそうだ😛

「いつもここにご飯を食べにくるんだよね」とおじさんは言いながら、私は白ワイン、おじさんは赤ワインを注文していた。すべてがスマートで紳士的。白ワインがきてからおじさんのワイン解説がはじまった。ワインの名前は忘れたけど「とっても良いワインだよ」ということは覚えていて、味はおいしかった。「無知な私にそんないいワインを選んでいただいて有難うございます」とお礼をつたえた。

ワインを飲みながら、私はおじさんの正体を暴きたくなっていた。気になったのは、おじさんは本当にミッドタウンに住んでいるのか?という点。

ミッドタウンに住んでいた知人何人かの顔を思いうかべて、そういえばあの人があんなこと言っていたっけと記憶をさがした。そして、おじさんに質問を投げかけた。

「ミッドタウンって審査厳しいんですか?たしか、一年契約になったとか、法人契約じゃないとダメとか、芸能人はお断りになったなど、聞いた記憶があるような。だけど記憶が定かじゃないんですが、、」とおじさんに言ったら「僕は普通に三年契約だよ」「あんまり部屋でパーティーやりすぎると追い出されちゃうみたいね」「芸能人が住むといろいろ大変なんだよ、写真撮られたりさ」「あと、脱税で逮捕された人がいたよね」そのようなことを、おじさんは話していた。

私がテーブルに両手を置いているとおじさんが私の短い爪をみて言った。「あれ?爪が長くないね。珍しいね。今の若い女性はみんな爪が長いじゃない。どうして?」おじさんはさすがだ。紳士だから、女性の細かな違いをよく発見する。

「実は私、マッサージセラピストなんです。今はマッサージのお店で働いていないんですけど過去に働いていたことがあって、その時のクセで爪を短く切っちゃう....」言い終わる前におじさんは嬉しそうな顔で被せてきた。「えーー!マッサージできるの?指圧も上手なひと?僕、かなりマッサージが好きなんだけどなかなかいい先生に出会えなくて困ってるんだ。本当に身体が疲れていて、マッサージしてほしいなぁ。頼んだらしてくれるの?」

「はい!クロージング、きました〜!モニタリング終了時刻に近づいています〜」と心のなかで思いながらもおじさんと会話を続けた。

「僕はパリではね、すっごい上手なセラピストさんがいてお願いしているんだよ。彼女の技術はすばらしくて、でも高額なんだよね。日本円でいうと1時間5万円ぐらい」

日本でなかなかいいマッサージセラピストに出逢えない話は、マッサージ好きの人達はみんな言っているので、おじさんのマッサージ通はピュアで本物なことだけは分かった。そこからおじさんの交渉が続いた。「1時間いくらでマッサージしてた?」「もう忘れちゃいましたけど、お店にいたときはお店の値段でやってましたよ。最近はプライベートで友達に頼まれるときはいくらでもいいよって言ってやりますけどね。時間と内容にもよるけど、1万〜5万ぐらいですかね。プライベートでしか最近やらないので料金は適当ですね」「じゃあ今から、1時間2万円でマッサージしてよ。触るとわかると思うけど背中張ってるから大変なんだ」

かなり怪しかったけど、おじさんは私を女としてだけじゃなく、仕事人としても見てくれているのはわかった。「感動したら2万以上にしてください」って値段交渉をしつつ、私もちょっと施術しようかなって気にもなってきた。

「あ、でも、場所がないんですよ。このままマッサージできるけど、マッサージする場所がないんです。だから最近はマッサージの仕事をやれていないんですよね。出張マッサージでミッドタウン、行きますか?」と言いながらおじさんが本当にミッドタウン居住者なのか、カマをかけてみた。

「いやあ、さすがに家に来るのはちょっとなぁ」おじさんにやんわりと断られた。「あ、そうだ!近くのビジネスホテルはどうですか?僕は泊まったことがないけど海外から社員がくるときに泊まってるから見に行ったことはあるんだよ」

ん?もっと怪しい匂いがしてきた。なぜミッドタウンではなくビジネスホテルに誘導するのだろうか。ミッドタウンの自宅に出張マッサージ(今回のセラピストは私)を呼べばいいだけの話なのに。

そして、ミッドタウンに住んでいなかった場合の、おじさんの今夜のワンチャンプランを頭のなかで料金計算してみた。

クチで言っている内容の生活をしたら相当なお金がかかる話ではある。ミッドタウンに住んでる、大使館のパーティー、三つ星レストラン、パリにお抱えセラピストがいる、海外にいる社員を日本に呼んで泊まらせる経費など、もろもろ。けれどこれらはまだ私が目で見て確認したわけではないので架空。本当かどうかわからないので、今晩かかってくる正確な費用を計算した。

ミッドタウンに住んでいる紳士のおじさんをブランディングするためにかかる費用・・・0円。

ミッドタウンから西麻布のバーまでのタクシー代・・・1000円以内

西麻布のバーでお酒一杯ずつとフルーツ・・・ちょっとこれは確認できないので定かではないがそこまで大きな料金にはならないだろう

ビジネスホテル一室・・・1〜2万円

施術料金・・・2万円

およそ5万円前後でお酒を飲みプロのマッサージの施術を受けあわよくばワンチャン狙ってるということになる。コスパが良いな。

紳士のおじさんはミッドタウンに住んでいない線が濃厚になりつつあったけど、まだわからない。本当にミッドタウンに住んでいる潔癖症でケチなお金持ちという線もあり得る。ミッドタウンには一緒に住んでいる誰かがいるから部屋に入れられない線もあり得る。

「ちょっと私、お手洗いに行ってきますね」

バッグを残して席を立つのはなにか心配だったのでバッグごとお手洗いに持っていき、軽く化粧直しをしながら考えた。

「1時間で終わる時給2万のアルバイトって考えればマッサージ自体は悪くはないか。まあ、仕事だしね。おじさんも本当にマッサージ好きだろうし気に入ってもらえばお客さんになるかもしれない。でもホテルでマッサージはリスクが高すぎるので、ちゃんと主導権を握ろう、大丈夫。」

頭を整理して席に着いたころにはお会計が終わっていた。さすが港区。さすが紳士なおじさん。スマートである。ごちそうさまです。

私は残りのワインを飲み干そうとしてグラスをクチにつけようとしたけど、「危ない!もしかしたらヘンなクスリでも入ってるかもしれないからやめとこ!」と頭によぎって飲むのをやめた。

店を出る準備をしながら「あそこのホテルの部屋は空いてるかな?フロントに行って確認しよう」とおじさんが言うので、「今、何時ですか?」と私はわざとおじさんに時間を確認してもらった。「深夜1時だよ」おじさんが丁寧に教えてくれた。

私はたのしそうな笑顔で返す。

「わ〜、ちょうど良かったです!本当に本当に偶然なんですけど、同じホテルに彼氏が部屋を取ってくれていて今そこにいるんですよね。深夜3時すぎに戻るって彼氏が言っていたので、今から1時間とか1時間半マッサージなら、マッサージが終わるころに部屋に帰ればちょうどいいですね。タイミング的に私も良かったです!」

さあ、おじさんはどう出てくるだろうか。モニタリング最終コーナー。

「え?え!?え〜〜っ!?」「なんだ彼氏いたの?」「彼氏が3時より早く帰ってきちゃったらどうするの?エレベーターで会ったりしない?」おじさんはあたふたしはじめた。

ちなみにホテルに彼氏が帰ってくるのは私の作り話。

「部屋が別々だから問題ないじゃないですか?」「それに彼氏は私の仕事を知っているから、遭遇したところでお客さんだよって言えば特に大丈夫ですけどね〜」「あと彼氏は深夜に働くタイプなので、3時より早くに帰ってくることはないですね」「お疲れのようなのでマッサージしながらぜひ眠ってください。私、終わり次第、静かに部屋をでて自分の部屋に帰りますから😊」

おじさんはションボリしていた。声に覇気がなくなっていった。

「彼氏って誰?どんな人?怪しくない?」おじさんに聞かれた。「怪しい人と私が付き合うわけないじゃないですか〜」と言いながら、怪しいのはおじさんのほうだとハッキリ思った。

2人で西麻布交差点まで歩いた。

おじさんはどんどん無口になっていく。あれだけいっぱいお喋りしてくれていたのにかなしい。おじさんから言葉もアイディアもでてこなくなっていた。

「彼氏が帰ってくるなら心が休まらないなぁ」「それか別のホテルを取る?....」

私はおじさんを無視して一人でタクシーを拾った。

「なんだ、マッサージの気分になってきちゃったからオリーブスパでも寄って帰ろうかなぁ」

これが、おじさんの最期の言葉だった。最初からオリーブスパに行けばよかったのに。連絡先を交換することもなく、「ではまた!楽しかったです😊」と言って私はタクシーで去った。

数日経った今でも、おじさんのことが忘れられない。忘れられない理由は恋をしたトキメキとかじゃない。あのおじさんはいったい、ミッドタウンに住んでいたのか?あのおじさんの本当の正体は?詐欺師なのか?どこまでが嘘でどこまでがリアル?

おじさんのナンパテクニックはパーフェクトだった。ナンパという下品な行為を、あれだけ上品に演出して、ナンパ絶対ナシの私も立ち止まってリードされてしまうぐらい、綺麗で完成されていた。「同じマンションの方ですか?」と話しかけたのがウマかった。ミッドタウンに住んでそうな女性という設定から話しかけるのだから女だって悪い気がしない。通常なら、かなりの高確率でワンチャン持ち帰っているのでは??🤔

ここまで読んでくれた方々にアンケートを取りたい。

紳士なおじさんはミッドタウンに住んでいるor住んでいない。どっちだと思いますか??


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斎藤美海

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