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『結婚の奴』を読んで、結婚に大切なのは恋愛感情より、結婚したい意志と相手に対する思いやりと、やっぱり才能だと思った

能町みね子さんの『結婚の奴』を読んだ。

能町さんのツイートはよくツイッターで目にするし、「元男性が恋愛感情のないゲイ男性と結婚した」というネット記事は読んだことがあったが、著作を読むのは初めて。テンポがよくきちんとオチのある文章にまず魅了された。

自分には恋愛は無理だけど結婚して誰かと一緒に生活したいと思いつき、この人ならと狙いを定めた友人と、もしダメだったときのことを考えつつ冗談めかしたやり取りをツイッターでする様は、筆者の巧みな言語能力だけではなく、長年ネットでのやり取りを行っていた筆者ならではの才能があり、並みの人間ではできないものではないかと思った。

私自身もツイッターが今の彼(いや元カレもそうだが)との付き合うきっかけだったが、一方的に彼が私のツイートを見ていてアプローチしてきたのであり、こんなふうにやり取りしたり、彼のツイートを見て彼の状況を確認することができるのはうらやましい。

ネット越しに相手の状況を確認することは、相手を思いやり、相手が喜びそうなことを考えるのにはとても有効だし、文中から能町さんが自分が希望する企みが自分にとってだけでなく、相手にもよいものであるか、迷惑を掛けてないかを非常に気にしている様子が伺えるが、もし思いやりを持たない人なら、相手の気持ちを無視し自分に都合よくことを運ぶだけのツールに成り下がる危険性があるだろう。

ネットが悪いのではなく、使う人の良識がより顕著に現れる現象がネットの発達とより多く見られる世の中になっていくだろうと危惧する。

ところで、結婚というか筆者が同居に至る過程の話よりも雨宮まみさんとの話が深く心に残った。

心のつながりを感じつつも、それほど親しい間柄でなければ、通夜には間に合わないぐらいのタイミングでしかその死を知ることはできないのかと愕然とした。

本人書いておられるように、雨宮さんに対する気持ちは恋愛だったと思うし(能町さんの本はこの一冊しか読んではないし、雨宮さんについては、亡くなる寸前の『40歳になる』というネット連載を多くの人が共感ツイートしてるのを見て読んだけど、全然共感できなかった)、もし筆者が男性のままならな雨宮さんも身を窶す以外の恋愛ができたかもと思ってしまった。

結婚の話に戻ると、私自身は人を好きになる気持ちはあったが、恋愛は苦手で親が勧めるお見合いもなかなかうまくいかなかった。

急速にお見合い結婚をする人が減り、相手の条件より愛を基準に選ぶべきと思いつつも、恋愛がうまくいかなくて、「条件がよく相手も私でいいと言ってくれる人」と結婚してしまい、破局への道を着実に進んでいる。

だから、それがいいとも悪いとも言えないけど、実は相手が好きで恋愛したのち結婚に至る人たちより、好きでもなんでもないのに、なんとなくみんながしてるから恋愛して、結婚し、子供を産み育てるべきだから結婚している人はたくさんいる。

能町さんのように、自分が望むオリジナルの人生を作れる才能と状況に恵まれた人はそんなに多くないのだから、お見合い結婚は実は優れた制度だったのかもしれないと思った。

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