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『もう一本吸い終わったら行こっか』が好きだ。

大学2年の頃から吸い始めたタバコ。喫煙者の友達との付き合いを続けるうちに、いつの間にか僕も吸うようになりました。銘柄は、尊敬しているデザイナーの山本耀司さんがずっと吸っているハイライト。

映画『苦役列車』に出てきた、森山未來さんが役を務める「北村 貫多」が吸っていたのもこれ。だらしなさの権化みたいな奴で、原作者の西村賢太さんの分身とも言える役です。詳しくは下のリンクより。

芥川賞作家・西村賢太の分身、北町貫多の7つのひみつ http://www.excite.co.jp/News/reviewbook/20110218/E1297953009806.html


山本耀司さんにしても、「北村 貫多」にしても西村賢太さんにしても、どこかにパンクのアティチュードが感じられる人間です。僕はパンクスが好きなんだ。まあそれに関しては今はいいとして。


たとえば居酒屋。たらふく酒を飲み、良い感じに酔っ払い会計を済ませる。もう、テーブルの上には料理も残っていない。あと3口分くらい残ったビールジョッキが2つ。僕と彼の。(ささっと帰るのもちょっとなあ)と思いながらいると、彼が一言。『もう一本吸い終わったら行こっか』。僕はこの一言が大好きです。

タバコを一本吸いきるのなんか、多めに見ても5分くらい。大抵は3分そこらで吸い終わってしまう。全然関係ないけど、タバコを1本吸うたびに人間の寿命は5分減るらしい。いやいや、吸ってる時間のことだろ、と思う。風呂に入れば30分寿命が縮まっちゃうよ、と。全然関係ないけど。

僕はあの3~5分間が物凄く好きだ。別に特別な何かについて話すでもなく、ただ二人で煙を揺らしているだけなんだけど。多分、バチッ!と終わってしまうのが嫌なんだと思う。「じゃあ!バイバイ!」と言うのがあまり好きじゃないんだと思います。根っからの寂しがり屋な訳ではないけど、「酒を飲むと人肌が…」なんて言葉もあるように、ほんの少し寂しくなるんだと。目の前にいるのはヒゲのこってり生えた男の人なんだけど。


初期パンクの時代は「バチッ!」と終わりました。ピストルズは『騙された気分はどうだ』と言って、その後ライブをすることも一切無くなりました。解散です。同じく、THE BLUE HEARTSも「バチッ!」と消えました。まさかのラジオでの解散宣言。

The Clashの『Career Oppotunity』という曲もそうです。途中でバッツリ切ったように終わる。ぜひ聴いてみてください。

パンクは好きです。パンクスも好き。でも、バチッ!と急に終わるのはあまり好きじゃない。ほど良く余韻の残った、ゆるやかな別れこそ性に合っていて、自分らしいのだと思いました。

また、元を辿れば、『もう一本吸ったら行こっか』と言われて嬉しいのは、その発言者のことを僕が良く思っているから、ということにもなるでしょう。嫌いな人から『もう一本…』なんて言われたあかつきには、きっと(めんどくさいなぁ…)と思ってしまうはず。面倒だから、できる限り早くその人と別れたいと思うはず。気の合う人とはなるべく長く一緒にいたいものです。

タバコに火をつけて、「酔っ払ったわ〜」なんて言って始まる、何になるでもない5分間。僕はあの時間が心底好きです。

頂いたお金で、酒と本を買いに行きます。ありがとうございます。