金井田英津子展

三浦半島幻想文学会第二回イベント告知

森陰の異界で、金井田さんと語る
                                                                           東雅夫(アンソロジスト)

「晩春の生暖かい風が、オドロオドロと、ほてった頬に感ぜられる、むし暑い日の午後であった。
 用事があって通ったのか、散歩の道すがらであったのか、それさえぼんやりとして思いだせぬけれど、私は、ある場末の、見るかぎりどこまでも、どこまでも、まっすぐにつづいている、広い、ほこりっぽい大通りを歩いていた」
 江戸川乱歩の「白昼夢」冒頭の一節を想起しながら、いつもは足を向けることの少ない、JR衣笠駅裏手の界隈(横須賀市平作)を徘徊していた私は、その辺りには似つかわしくない、瀟洒な建物に遭遇して目を奪われた。
 見れば──「カスヤの森現代美術館」という看板が掲げられているではないか。
 こんな処に現代美術のミュージアムが!?
 そのたたずまいに、たいそう好奇心を掻きたてられたものの、休館日なのか門扉は鎖されていて、内部の様子を知ることはできなかった。

 …………あれから幾星霜(といっても数年後だが)、つい先日、一葉の案内状が東京の拙宅に舞い込んだ。見れば旧知の、というか、ちくま文庫の〈文豪怪談傑作選〉や〈日本/世界幻想文学大全〉の仕事で長年にわたりお世話になった、銅版画家・金井田英津子さんの個展開催のお知らせであった。
『文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会』の表紙絵(シリーズ中でも屈指の傑作だ)から抜かれた狸と人魂の図が怪しくも愛くるしい案内状を裏返し、開催場所を一瞥した私は瞬時にして、まさに白昼夢に陥ったかのごとき幻惑にとらわれたのである。
 あのときの、カスヤの森美術館で、てことはつまり我が実家の近在で、金井田さんの個展が……それも文豪怪談系の装画を中心に開催される……驚くべき天の配剤というほかあるまい。
 早々に会場に駆けつけた私は、さらなる一驚を喫した。
 美術館そのものの静謐で魅力的な構造もさることながら、館名にもある背後の「カスヤの森」がまた、別乾坤ともいうべき異空間を形成していたのである。鬱蒼とした竹林に点在する五百羅漢……日向臭い日常から、ここだけポカリと遊離したような、ささやかだが濃密な異界感よ。

 かくして、先に起ちあげられたばかりの「三浦半島幻想文学会」の主催による、「金井田英津子・装画のしごと」展観賞のミニツアー&トークイベントが、企画された次第。金井田さんの画業はもとより、怪談や幻想文学の話題、横須賀の話題など、語らいたいと思っております。
 どうか多くの有志の御参加を、冀(こいねが)い奉りまする。

三浦半島幻想文学会第二回イベント
「金井田英津子×東雅夫 文豪の怪談を描くこと/編むこと」

【日時】 9月8日(土) 14:00~16:00
【場所】 カスヤの森現代美術館
  〒238-0032 神奈川県横須賀市平作7-12-13
  TEL 046-852-3030
  http://www.museum-haus-kasuya.com/index000.htm
  (無料駐車場あり)
【ゲスト】
 金井田英津子(版画家、装幀家)
 東雅夫(アンソロジスト、『幽』編集顧問)
【参加費用】 2000円(入館料込み)
 事前申込制。
 希望者は、
  1.氏名
  2.氏名のよみがな
  3.連絡先メールアドレス
 を明記の上、タイトルを「第二回イベント申し込み」として、 miuragenso@gmail.com までメールをお送りください。

【タイムスケジュール】
14時 カスヤの森現代美術館で金井田さんの自作解説を聞きながらの鑑賞会
15時 トークイベント「金井田英津子×東雅夫 文豪の怪談を描くこと/編むこと」
16時 終了 *終了後、館内の常設展などを自由にご見学ください。

*なお、当日はトークイベントに合わせ、平作界隈の歴史的スポットを散策するミニツアーを開催します。
【予定行程】
12:55 JR横須賀線 衣笠駅(公共バスを使うため時間厳守)
13:00 衣笠駅からバスに乗り移動し、下車後約50分徒歩移動。
→阿部倉神社 七不思議の碑
→大蔵寺と瘡守稲荷神社
→平作神社
→カスヤの森現代美術館

【参加費】 500円(資料付き)
【定員】 先着20名
 *今回の行程は地形の関係上アップダウンがあり、坂道の歩行が多くなりますので、申し込みの際にはその点ご考慮ください。
希望者は、
  1.氏名
  2.氏名のよみがな
  3.連絡先メールアドレス
 を明記の上、タイトルを「平作ツアー申し込み」として、 miuragenso@gmail.com までメールをお送りください。
 トークイベントと同時申し込みされる場合は、トークイベント申し込みメールに「平作ツアーも参加希望」と添えてくだされば、改めて申し込みいただかなくて結構です。

三浦半島幻想文学会メールアドレス  miuragenso@gmail.com






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