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2021年3月19日(土)気鋭のマエストロと新時代のピアニストが描く魅惑のラフマニノフ!公演(備忘録)


このnoteは「気鋭のマエストロと新時代のピアニストが描く魅惑のラフマニノフ!」コンサートに出かけた筆者が、すぐになくなってしまう記憶をなんとかとどめようと振り絞って、やっと備忘録としてまとめたものです。

そのため詳しい曲解説や曲の印象などはほとんどありません。自分が見たもの、聴いたものを、記憶の限りで自分語りで書いています。すごく薄い面と無用に濃い記述があります。加えてボキャブラリーが「ありません!!」。これら点を了解いただいて読んでいただけたらうれしいです。


【コンサート概要】

◆コンサートタイトル
気鋭のマエストロと新時代のピアニストが描く魅惑のラフマニノフ!
◆公演日時
 2022年3月19日(土)13:00開場 14:00開演
◆会場
 カルッツかわさきホール
◆出演
 ピアノ(ソリスト):角野隼斗
 指揮:水戸博之
 オーケストラ:神奈川フィルハーモニー管弦楽団


【プログラム】

◆グリンカ:歌劇『ルスランとリュドミラ』より序曲
◆ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲Op.43
◆ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番Op.18
(アンコール/菅野よう子:花は咲く)


1.はじめに

カルッツかわさきでのピアノコンチェルト2曲の贅沢なコンサートに行ってきました。最後に川崎に来たのは、香取慎吾くんの映画のイベントで川崎競輪場に来て以来(カルッツかわさきのお隣りが競輪場)。


2.座席のこと~ええ?!最前列?!

座席は1階4列目のセンターから少しだけ左寄り。お顔は横顔だけだけど、両手の動きや背中や足など、よく見えそうだな・・と思って座っていたら、前3列がずっと空席のまま。あれれれれ、これって生まれて初めての実質最前列?!しかも角野さんのコンサートで?!これだけで心臓バクバク。今日はこれに尽きる。ちょっと言い過ぎか。でも終始最前列に圧倒されていた。最前列って自分の目の前に遮るものがなにもなくて、見たいものがすべて至近距離にある、という当たり前のことが最後まで不思議な感覚だった。そうこうしているうちに影アナがはじまって、どんどん心拍数が上がって。どうすればいい?なにを見ればいい?なにを聴けばいい?テンパるとはまさにこのこと。

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座席から見た舞台

3.1曲目「ルスランとリュドミラ」序曲

とにかくオケが華やかで表情豊かで楽しくて魅かれた。一音目で大好きになった。とくに弦がいい音でよく鳴ってて揃ってて素敵!「ジャン!ジャン!」ってなる時の音の分厚さに包まれるのが快感。水戸マエストロの指揮もきびきびしていてどんどん曲の世界に入っていった。しあわせの序章。


4.2曲目「パガニーニの主題による狂詩曲」

角野さんが颯爽と登場。ショパコン仕様のタキシード姿(タイもカフスも←カフスがはっきり見えるのは最前列ならではだと実感)。2階席3階席の方向にひと通り目を向けて心も向けてから深々と長いお辞儀。

音が深い。もしかしたらこの会場的に伸びる音を届けるのは難しかったかもしれない。でも最前列で聴いても、これはちゃんと3階の後ろまで届いていると確信できる音が終始鳴っていた。(そして実際2階3階まで弱音もちゃんと届いていたと、フォロワーさんからのつぶやきあり)

パガニーニの冒頭の「ジャン!」のピアノ音。深くて重いのに突き刺さったり割れたりしない。角野さんのこの弦が鳴るような低音が大好き。大好きな第15変奏はこれぞ角野さんな繊細かつ華やかな技巧にあふれた演奏で聴いているだけでしあわせになった。あの指はいったいどう動いているのだろう。第18変奏は・・世界よ、この音が聴こえるか?聴こえて欲しい!届いて欲しい!と思うような、美しくてあまねくしあわせをもたらす音だった。視覚情報はシャットアウトして、ただただ音の世界に包まれた。

全身全霊を使った音。というのは陳腐な表現かもだけど、見ていて体のしなりや細かい筋肉の動き、椅子から飛び上がらんばかりの深い全身の動き、腕、肩、背中、体幹。これらから送り出される音が、視覚からも聴覚からも伝わってきた。

コンチェルトなのにまるで自分一人だけのために演奏してくれているように錯覚した。それほどまでに音が広がりを持ちながらパーソナルだった。あらゆる音にときめいた。でも正直視覚情報を処理するのにいっぱいいっぱいで(第18変奏以外)、音の記憶がひどく薄くとびとびになっている。音を聴くと指が見えない。指を見ていると表情が見えない、表情を見ていると背中が見えない。背中を見ているとペダリングが見えない。ペダリングを見ているとオケが見えない。なんという贅沢な悩み。位置的に背中がもっとも近く、タキシードの下の背筋の一本一本の筋繊維の動きが手に取るように見えた。さえぎるものがないってほんとにすごい。そしていつものながらのペダリングの繊細かつ大胆さ。まるでトリルに合わせて細かく刻んでいるような時もあれば、長いペダルはかかとをつけて踏んでいる時とかかとを浮かせて踏んでいる時がある。このように踏み分けることで音色はどう変わるのだろう。いつかかてぃんラボ(注:10.で詳述)で伺ってみたい。


5.3曲目「ピアノ協奏曲第2番」とカーテンコール

新生ラフ2だった。PTNAの時の23歳のラフ2からぐっと伸びてきた26歳のラフ2。その間の濃密な経験を経て、まさに新たな命が吹き込まれた演奏。会場中が酔いしれた。曲が進むほどノッてきて、からだも鋭く動いて音のメリハリとキレが増していった。右手の小指が鳴らす音が澄み切って美しくて何度昇天しそうになったか。3楽章のフィナーレの全会場を包み込む高揚感(角野さんの全身がさらに椅子から落ちそうなほど躍動して指に熱と意思が伝わっている、体全体とそこから発せられる音色から生み出される高揚感)は圧巻という言葉が陳腐に思えるほどだった。

第1楽章の1音目からの没入感が最高で、それゆえ、この曲を語る言葉が残っていない、ただただ素晴らしい!最高!ありがとう!しあわせ!しか残っていない。書けるならもっと書きたい。でも気持ちいいくらいすこーんと抜けてる。こんなしあわせはあるだろうか!会場全体がこんな空気だったから、普段だったらエンディングで間違えなくブラボーの大合唱になるはず。そうしたい気持ちが客席で渦巻いているのをひしひしと感じた。それだから今日は満場のスタオベ!カテコでは角野さんが満面の笑顔で登場して深くお辞儀をしながら聴衆にこたえる。なんどもなんども。それにつられてわたしたちも自然に笑顔になる。そして笑顔でいられることがしあわせすぎて涙腺が壊れる


6.アンコール「花は咲く」

アンコール。角野さんが着座して鍵盤に手を置き、しばし止まって(手を少しだけ体の方に引き寄せた)そして手を置きなおして弾き始めた「花は咲く」。キーはハ長調。止まったのは祈りか、曲目の変更か、キーの変更か、それ以外か(※章末参照)。ハ長調の「花は咲く」はヘ長調のそれより明るさがあって希望を感じるものだった。最近3.11を思わせるような地震があって、今日も来場できなかった人も多くいると聞く。ほかの理由で来場を諦めた人も多くいると聞く。世界にはしあわせとは程遠い境遇の人たちがあまたいる。そのような人たちの元に、どうか早く、地に、心に、花が咲きますように。そんな願いが一音一音から感じられた。会場のあちこちからすすり泣く声が聞こえた。わたしの両隣のご夫婦(2組)も、わたしも、嗚咽しながら聞き入っていた。どうか角野さんの、わたしたちの願いが叶いますように。
※この後知ったこと。ハ長調ではじめたのは、ラフ2がハ長調で終わったからだと。なるほど。だから原曲(ヘ長調)とは違う調でも自然に感じられたのですね!


7.終演後

なにも考えられなかった。なにも耳に入らなかった。ただしあわせの空気の塊の中に恍惚として浮いていた・・。その時自分がなにをしていたか、まったく覚えていない。終演のアナウンスの後(内容はまったく記憶にない)、気がついたら帰りがけに通路ぞいのフォロワーさんに声をかけられ「急いでるの?」と言われ、「え、何のことだろう・・?」と思いながらさらに数歩進んでやっと「たいへん!規制退場しなきゃ!!」と気がついて、とにかく空いている席にかけこんで座った。こんなに我を忘れるほど没入した経験ははじめてだった。最前列だったことも大きく影響しているだろうけれど、けっしてそれだけじゃない。角野さんの演奏がすごくて心も体も全部持ってかれたからだ。なんてしあわせなこと!


8.神奈川フィルのこと

最後になったけれど、神奈川フィルが素晴らしかった。とくに弦の音が色とりどりかつ鮮やかで大好き。一気に神奈川フィルのファンになった。角野さんとのかけあいも聴いていて楽しくなってうっとりして元気にって半端なく昂揚するような、かっこよさ満載の素敵な音楽だった。ピアノと完全にシンクロしたラフ2のエンディングの渦は最高!オケのみなさんはカテコ中もあたたかくて、角野さんにずっと拍手と足拍子を送って下さり、「花が咲く」の時には聴衆とともにハンカチで涙をおさえたりされていた。来年の3月にも共演があるとのこと。スケジュールをあけてぜひ伺いたいと思っている。


9.おわりに

終演翌日。いまもしあわせだ。音楽っていいな。音楽は国境も越えて世界中を自由としあわせで包む、すごいパワーを持っていると、改めて感じた。そしてそれを伝える角野さんのパワーが1カ月前(全国ツアーファイナル)よりさらに上増ししていると。彼の音を聴いて欲しい。彼の音に触れて欲しい(と、写真家のogataさんもインスタストーリーに書かれていた)。世界中に彼の音が届く日が一日も早く来ますように。きっとそれはそう遠くない未来だと信じられる。

エネルギーも情熱も祈りも、全部伝わってきた。全部。
ありがとう!ありがとう!ありがとう!


(おまけ)10.かてぃんラボへのお誘い

角野さんは「パガニーニの主題による狂詩曲」の解説ライブ(公演当日の夜に開催)など、会員限定向けのいろいろな配信をやってます。かてぃんラボのメンバーになると、このような解説講座のほか、ラボ限定の配信ライブや限定公開動画などを視聴できる特典満載です。この機会によかったらぜひご加入お待ちしています!!

おしまい。ここまで読んでいただきありがとうございました!

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