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京都あれこれ いつつめ

「この前、この暑い中を祇園へ行きましたんや」
「何しに行かはりましたんや」
「ちょっとお客はんがあったさかい観光にな」
「そうどしたんか。それはご苦労はんどしたなぁ。それでどこへ行かはったんどす?」
「ゑべっさんとか」
「あそこも祇園て言いまんのか? 大和大路でっしゃろ?」
「建仁寺とか」
「あそこは花見小路でっしゃろ」
「安井の金比羅さんとか」
「あそここそ安井やおまへんか。まあ広い意味では祇園でっしゃろなあ」
「新橋の辰巳はんとかな」
「あそこも祇園新橋ですがな」
「そんな文句ばっかり」

新橋通は風情がありますなぁ

「八坂はんは行かはらへんかったんどすなぁ」
「八坂はんと知恩院は前に行ったとお言いやしたからなあ」
「いったいどこからどこまでを祇園と言いますのやろなぁ」
「そんなことわてが知ってるはずおまへんわなぁ」
「また先生の出番どすなぁ」
「いつもやったらこの辺でひょこっと現れてくれはるんやけどなぁ」
「あら先生」
「ほらやっぱりや」
「こんにちは」
「先生に聞きたいことがありましたんや」
「何でしょうか?」
「どっからどこまでが祇園と言いますのや」
「正確には決まってないようですけれど、東西は八坂神社の西門から大和大路 (繩手通) まで。南北は新橋通から建仁寺前までの地域が一般的ですね」
「ほな南座は祇園やありまへんのやな」
「南座が違うんやったら、松葉 (総本家にしんそば松葉本店) や菊水 (レストラン菊水) も違いますのやなぁ」
「新門前や古門前は入りまへんのやなぁ」
「白川筋や新橋とはちょっと雰囲気違いますやん」
「宮川町も違いますのやなぁ」
「あそこはお茶屋も独立してますさかいそりゃ違いますやろ」

「お茶屋の話が出ましたからついでにご説明しましょうか。お二人は五花街はご存知ですよね」
「それ知らんと潜りでっしゃろ」
「すべて言えますか?」
祇園甲部ぎおんこうぶ祇園東ぎおんひがし宮川町みやがわちょう先斗町ぽんとちょう上七軒かみしちけんですやん」
「さすがによくご存じですね。ではこの中で歌舞練場かぶれんじょうがないのは?」
「東ですやん。先生簡単すぎますわ」
「歌舞練場の代わりは祇園会館でっしゃろ? この辺に長いこと住んでたら常識でっせ」

「白川の新橋にある辰巳大明神はご存知ですよね」

人間国宝 井上八千代姐さんの名前が・・・大きい

「この前行ってきましたわ」
「あそこのご祭神はご存知ですか?」
「お稲荷さんと違いますのか?」
「確かに祇園のお稲荷さんと呼ばれ、芸事の上達を願って舞妓さんや芸妓さんがお参りに来られるそうですね」
「そやからお狐はんですわな」
「それが違うんです。実はタヌキなんです」
「タヌキどすか?」
「これも曰く付きです」
「どんな曰くがありますのや」
「この辺りを住処にしていたタヌキが人にイタズラをしてずいぶんと困らせていたらしいんです。そこでタヌキを祀る祠を立てたところイタズラ好きのタヌキが大人しくなったということのようです」
「タヌキを祀って効果はありますのか?」
「舞妓さんも芸妓さんも上手に化けられますからタヌキでも効果はあるのじゃないでしょうか」
「先生にしては珍しく艶っぽい話ですなあ」
「祇園という地は京都の一大歓楽街なのですから艶っぽい話も出ようというものですよ」

「先生もう一つよろしいか」
「何でしょう」
「辰巳大明神はタヌキが神さんやと伺いましたけど、その横にある橋は巽橋と言いますやろ。おんなじタツミやのに何で字が違いますのや」

これが有名な巽橋

「それはさすがの私も知りませんが、辰巳も巽も同じ意味で南東の方角を示すものです。御所の南東に位置することから辰巳 (巽) と名付けられたと推察します。それから巽という字には『ゆずる』という意味もありますから橋のネーミングにはピッタリだったのじゃないでしょうか」

そしてこれが新橋


「ほな日も暮れてきましたし、上手に化けたタヌキの顔でも見に行きまひょか。たまには先生もご一緒しまひょうな」
「それではお相伴に与ります」
「今夜のタヌキはどんな顔してますやろなぁ」
「楽しみどすなぁ」

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