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坊主の煩悩 その後

これ椿燃ちんねん、皆を集めてくれませぬか。


ここはとある山の中腹にある寺、境内はそこそこの広さを持ち、お様を始め、修行中の僧侶や下働きまで含めると10名を超える古刹である。


お主様、如何なされましたか。


あれを見やれ。


坊主が屏風に上手に✕✕の絵を描いたとさ。


屏風にあのような戯れの絵を描いたのは誰じゃ?


わたくしでございます。


寛然かんねんか。なるほど絵の上手なお前ならではじゃの。
じゃがどうして屏風にあのような女体の絵を描いた。しかも一糸纏わぬ姿の女体など。さらに申せば細部まで丁寧に描かれておるではないか。


お主様、寺にありました本の模写でございます。


何、寺にある本の模写とな。そのような本が寺にあったか?


上役のところには山とございまする。


それは即刻没収するとして、なぜ描いたのかの答えがまだじゃな。


お主様にはお聞き苦しいことがあるやもしれませぬが、ご容赦いただけましょうや。


藪から棒に怒ったりはせぬから何でも申してみよ。


それでは。
わたくしを含め修行中の4名はいずれも10代後半から20代半ばの血気盛んな年頃でございます。ですが修行に入りました身、幸か不幸か女性にょしょう、とりわけ女体には縁がございません。


当然であろうな。


ですが興味を失ったわけではございません。いやむしろ寺に入りましてから余計に興味が増したと申しましょうか。


さもありなん。修業とはそうしたもの。そこから煩悩の数を減らしていくのじゃよ。


そこで考えました。
未だ見たことも触れたこともない等身大の女体を描くことで煩悩に打ち勝つ術を身に付けられはしまいかと。
見慣れてしまえばただの襖絵でございますれば。


なるほど、煩悩の一つを眼前に晒すことでそれに打ち勝とうというわけか。よう考えたと言うてやりたいところじゃが、一つ解せぬことがある。


何でござりましょうや。


絵は見事じゃが、何故に妖しげな場所に妖しげに襖に穴が開いておるのじゃ?


さてそれは、元々の虫食いが偶然あの場所になったのではございませぬか?


裏側を覗いてみたが何やらべとべとしておったぞ。お前らは満足に掃除も出来ぬのか?


それは失礼いたしました。早速お掃除を。


黙らっしゃい。
女性にょしょう女体にょたいで修業に身が入らぬのは由々しき事態。お前たちのために今から3つの選択肢を提示する。どれかを選ぶがよい。ただし全員意見の一致をみるように。


畏まりました。


一つ目、修行を辞めて寺を去る。
二つ目、このまま修行を続ける。
三つ目、女性や女体についての厳しい教育をしてもらい煩悩を除く。
さて、どれが良い?


お主様に一つお尋ねいたしたきことがございます。


なんじゃな?


一つ目のこのまま修行を辞めるのは論外と申せましょう。さらに二つ目のこのまま修行を続けるのも元の木阿弥と申しましょうか、埒が明きません。それで三つ目の厳しい教育はどなたが行われるのでしょうや。


私がやろうと考えている。


御自おんみずからでございまするか。


私も一応女子おなごじゃからの。この婆の教えでは不満か?


滅相もございません。お主様御自らお教えいただけるのであれば、三つ目を選択させていただきます。


皆もそれで良いのじゃな。それでは今夜から始めようか。まずは一人ずつが良いかな。恐らく一晩中掛かるであろうから覚悟して来るようにな。今夜は寛然、お前じゃ。夕飯ののち手がすいたら私の部屋まで参りなさい。


さて、夕飯を終え手が空いた寛然は、恐る恐るお主様のお部屋へ向かいます。そして修行というにはあまりにも恐ろしい……。


まずは講義です。しかし、朝早くから修行に励む寛然はついうつらうつらとしてしまいます。すると寛然の耳元でお主様が仰るのです。


さて女犯戒にょぼんかいの教えを始めるとしようか。お前に堪えられるかのう。


身ぐるみはがされた寛然は、お主様の巧みな技ですべもなく抵抗も出来ず、されるがままの状態です。


むろん何度も何度も終わりを迎えましたが、口八丁手八丁腰八丁 (腰八丁という言葉はありません。口八丁の意味も違うようです) のお主様に掛かれば若さを取り戻すなど造作もないこと。上になり下になりを繰り返し、一晩中攻め続けられるのでした。


翌朝、げっそりとやつれてしまった寛然を見た修業の身の面々は、一夜であの変わり様、どれほど激しい修業が行われたのかと戦々恐々としております。
一方のお主様はさすがと申しましょうか、一晩中起きてらっしゃったのにお肌ツヤツヤ。


さて、今宵は誰が来るのじゃ? お前か、永燃えいねん





後日譚
修行の身の4名はあれ以来黙々と修行を続けておられるようです。
真面目に修業していればまたいいことがあるかも?
いいえ、女性にょしょうの奥深さと女体にょたいの奥深さの両方を身をもって体験され、あんな恐ろしいものには金輪際関わるまいと修行に邁進されているとか。

寺では御開帳はママある事なのですが、言わば一つの悟りを開かれたようでもあり……。

修業とはかくありたいものでございます。


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