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最近見た映画-ファースト・マン

宇宙や月面着陸をテーマにした映画、ファースト・マンを観に行きました。久しぶりに映画館で全身鳥肌が立ちました。宇宙に詳しくないため、宇宙のことや月面着陸の実話に基づいているかはよく分かりませんが表現がすごかったため感想を語っていきたいと思います。
※以下ネタバレもあるので注意です。


宇宙を描くデイミアン・チャゼル監督

ファースト・マンは「セッション」や「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼルが監督です。映像表現より音楽やジャズへの表現に力を入れている監督だと思っていたため、今後もそういった題材でやっていくし、ミュージカル映画をやっていくんだと思い込んでいました。
そのため、初め予告を見た時かなり驚きました。”宇宙“を題材に、しかも伝記を基にしたノンフィクション…。実は見る前はあまり面白そうじゃないとも思っていました。しかし鑑賞後、音楽が全く出てこなさそうな題材でこんなに監督の持ち味が出るのかと驚きました。

SEへのこだわり

これを語るだけで感想は終わりでもいいくらい、この映画の魅力はここにあります。映像よりも、音で語りかける作品でした。静寂の中、登場人物の吐息や心臓音、機体の揺れる音などがリアルに全身に伝わり、緊張します。

特に冒頭の飛行実験のシーンとジェミニ計画の飛行シーンは凄かった。映画というよりも実際に自分もテーマパークのアトラクションに乗って体感しているのかと錯覚するほどリアリティがありました。

それと、この映画を見るにあたり、映画のお供にポップコーンを買うことはオススメしません。少しの音でも気を使いたくなるほど静寂が続きますし、そもそも強い緊張感で食べるのを忘れます。私はレイトショーで鑑賞し、晩御飯を抜いて見に行ったことを後悔しました。
日常のシーンでは他の映画と同様にBGMがあるんですが、宇宙に行くシーンや実際の月のシーンはほぼ静寂です。

ジェミニ計画

この映画で一番好きだったのが、このジェミニ計画に関する一連のシーンで、特に緊張と高揚の描写が素晴らしいです。ロケットが打ち上がる前から、未知の空間に打ち上げられることへの恐怖や心許ない機体への不安などでドキドキします。
いざ乗った後もソワソワしてハエが飛ぶのが気になったり、鏡が気になったり…人が緊張している時の行動や仕草が細かく描かれていました。

この緊張感と最後に回転が止まらなくなったシーンの間に、司令塔の人たちの歓喜の表現があったことも、緊張と安堵の差をより強く感じさせてくれました。

それと、"ランデブー"している際に昔のロマンス映画のようなBGMの付け方をしたのが笑えました。場所は宇宙で無機物の映像なのにどこかロマンチック。


アームストロングが感じた、不安や恐怖

この映画、世界で初めて月面着陸したと言われているアームストロング氏の伝記を基に制作されたのですが、これが実話だと思うと非常に恐ろしいです。未知の世界への期待と同じくらい死への恐怖を大きく感じました。同じく宇宙を目指していた仲間がどんどん死んでいき、次は自分なんじゃないかという恐怖が押し寄せてきます。

また、ロシアに先を越されないようにという政治的な圧力や税金の使い方に対しての国民の反発から、本当に宇宙に行くべきなのか?と葛藤してきます。悩み、苦しみ、恐怖を感じる中、坦々と日常が過ぎていくところも見ていて辛くなっていきます…。

宇宙探索への国民の反発

本当に税金を使ってまで、宇宙へ行くかなければならないのか?目の前の貧困の問題よりロシアに勝つことの方が重要なのか?
宇宙に行くという表面上の表現だけでなく、その時の国民の反応がしっかり描かれていました。

月面着陸と聞くと、ようやく人類は月に着陸した!感動!という綺麗なストーリーを想像しがちですが、実際にその時代に苦しい生活をしていた人々からすると、たしかに人類が月に行ったから何なんだ…という感じですよね。それよりその税金で貧困をどうにかしてくれと思うのは当たり前です。この国民からの反発も、アームストロングにのしかかる大きなプレッシャーになり、どんどん苦悩していくんですが…。

デイミアン・チャゼルとライアン・ゴズリング

予告でも「あのラ・ラ・ランドの監督最新作!」と謳っていたのは、このペアだったからだと思います。個人的には作風はラ・ラ・ランドよりセッションの方が近いような気がしたのですが、知名度とキャスティングからこの謳い文句になったんですかね?単純に直近に公開された映画だったからかもしれませんが。

ライアン・ゴズリングの悲壮感漂う表情が作品にピッタリでした。かわいそうな役が多い気がするので、そろそろライアン・ゴズリングには常にハッピーな役に当ててほしいですね…。

この二人のペアは今後の作品でも、何度かあるといいなと期待してます。
(しかし、そう連続で主役は無いかもしれませんね。)


ファースト・マンという映画

ノンフィクションで月面着陸というとアメリカすごい!歴史的第一歩!壮大な宇宙へのロマン!!という表現のものが多い中、アームストロングや周りの人間の心情など違った視点で新しい発見も多い作品でした。
実際にこの映画が公開されてから、月に国旗を立てるシーンが描かれていない!月面着陸のシーンが短い!などの批評も受けたそうです。そんな批評をしている人たちは見ているところが監督とかなりズレてますよね。

そもそも監督が描きたかったのは”月面着陸”ではなく”月面着陸までのアームストロング”です。(普通に見ていれば分かりそうなものですが…。)
最後の月面着陸も重要なシーンではありますが、無事に月に着陸!娘に思いをはせて…という物語のオチの部分であって、長々と映す必要は無かったともいます。

宇宙への興味は薄いのですが、非常に好きなタイプの映画でした。音と映像の融合、人々の苦悩…後日、家で鑑賞していたらここまでドキドキしていなかったと思います。ぜひ劇場で見てほしい映画です。


▼予告編はこちら



     

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