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仕事着姿が一番かっこよかった~日本講演新聞

『日本講演新聞』は全国の講演会を取材した中から、為になることや心温まるお話を掲載している全国紙です。
今回は過去の本紙社説をご紹介いたします♪
「かっこいい」ってどういうことなのか。特に成人間近のお子さんがいる方は、一緒にこの記事を読んでもらえたら嬉しいです(^^)/。

 全国でも珍しいと思うが、宮崎市の成人式は中学校単位で行っている。

 いつからだろう。成人の日が来ると、全国あちこちの式典会場でステージに上がって暴れたり、会場の外で酒を飲んだり、式の間中ずっとおしゃべりをしている新成人が大きな社会問題になった。

 そこで6年前から宮崎市は、会場を新成人の出身中学校に変え、さらに地域の人たちによる手作りの成人式にしようということになったのだ。

 1月9日、地元の中学校に行ってきた。やっぱり成人式らしく女の子たちの着物姿は豪華絢爛、男の子も原色の派手な紋付袴を着たり、スーツ姿の子らも奇抜なヘアスタイルをバッチリ決めていた。

 中学校単位で行うようになってから暴れる子もいなくなり、今年も滞りなく執り行われたようだ。

 後日、スタッフとして関わった人たちとお話する機会があった。

 「後ろから見ていた分には素晴らしい成人式だった」と言う。この「素晴らしい」というのは「何もトラブルが起きなくてよかった」という意味だと思う。

 「でも前から見ていると、それはそれは話を聴く態度がとてもひどかった。特に男の子は」という話が出てきた。

 なるほど、酒を飲んだり、暴れたりする「反社会的」な新成人はほとんどいなくなったが、大人の話をふんぞり返って聴いていたり、ずっとおしゃべりして聴いていない「非社会的」な光景が目立ったそうだ。

 式を盛り上げるために後輩である小・中学生の吹奏楽の演奏も行われたが、全然聴いていない人たちも多く、「もう来年はやりたくない」と漏らしていた小学生もいたとか。

 集団の中にいると、「自分一人くらいは…」と軽い気持ちでつい隣の人とおしゃべりしてしまうことがある。しかし、みんなが同じ行動を取ると、結果的に会場は騒がしくなる。

 また、イスにふんぞり返って座るのはその子にとっては普通のことなのかもしれない。だからその態度が厳粛な式典の雰囲気を壊していることに全く気が付いていないのだ。

 小学校に上がった頃から、子どもは集団生活の中で少しずつ「社会性」を獲得していく。それを私たちは「成長」と呼んだ。学年が一つ上がるということは、大人への階段を上がることに等しかった。

 20歳になる頃には最低限の常識や社会性が身に付いているはずなので、成人式でわざわざ大人になることの意味を教える必要もなく、成人式は本来大人になったことをお祝いする場だった。だから、喫煙や飲酒や選挙権など、「やっていいこと」「できること」を彼らに与えた。

 ところが、高度経済成長と、その後のバブル経済の時代、私たちはあまりにも忙しくて、先人たちが当然のようにやってきた「子どもを大人にするという宿題」を忘れてきたように思う。それが今「非社会的」な子どもたちの大量発生に見て取れる。

 もちろん、ちゃんと「宿題」をやってきた大人たちもいる。いい話も聞いた。

 会場にクロネコヤマトの制服を着た若者が入ってきた。1日休むとトラック一台分の荷物の配達が1日遅れる。人手も足りず、仕事を休むことができなかった。上司から「成人式には配達の途中に行ってくれ。その服で堂々と行って来い」と言われたそうだ。

 受付の人が「住所を書いて下さい。最後に記念写真を撮って送りますから」と言うと、「いやぁ、この格好だから記念写真は結構です」と断った。そのとき、受付の女性が言った。

 「何言ってるのよ! あなたが一番かっこいいですよ」

 よくぞ言ってくれたと思う。そして、「あの子は聴く姿勢もよかったですよ」と話していた。

 出来上がってきた記念写真を見た。左端に写っていた緑色のジャンパー姿の若者が、誰よりも誰よりもかっこよかった。

(日本講演新聞 2011年1月24日号 魂の編集長・水谷もりひと社説より)



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