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第3章 偽情報・プロパガンダの横行

2024年1月20日、バイデン米大統領は「第三回民主主義サミット」をオンラインで開催した。「今年は世界各地で重要な国政選挙が行われる異例の選挙イヤーである。AIなどによる偽情報が民主主義への脅威になる。そのための対策を取らなければならない」とバイデンは言った。韓国の尹大統領も「フェイクニュースや偽情報が民主主義の根幹である選挙を脅かしている」と言い、日本の岸田首相も「各国共通の課題で、国際的な共通理解と連携が必要だ」と述べた。サミットの終了後に発表された議長声明では、偽情報をめぐるサミットでの議論について「社会的な葛藤や分裂を引き起こすほか、民主主義の根幹を脅かすという認識を共にした」と評価した。「特に国境を越えて他国の選挙に影響を及ぼそうとする勢力に、国際社会が厳正に対応する必要性」を強調した。
いずれにしても今、世界で偽情報、プロパガンダが横行し、社会が乱れている。世界平和のためにも偽情報、プロパガンダの根を止めなければならない。

ロスチャイルドの偽情報による株価操作

ところで、ネイサン・ロスチャイルドが偽情報を流して大儲けしたことがある。1815年のワーテルロの戦いで、ロスチャイルドは自分の5人の息子を使って、イギリスが負けるという噂を流し、イギリスの国債を売りあびせ、価格を暴落させた。イギリスのウエリントンの軍隊がフランスのナポレオン三世の軍隊を敗退させる寸前、ロスチャイルドは価格を暴落させたイギリスの国債を買いまくった。イギリスが勝ったという確かな情報が流れると、イギリス国債の価格は高騰した。これでロスチャイルドの投下した資金は2500倍になった。この膨大な資金をもとにロスチャイルド・Deep Stateはいろいろの活動を始めた。その活動の基本は、言うまでもなく、偽情報・プロパガンダを使って金儲けをすることであった。

ロスチャイルドの秘密会議と行動計画書

1774年に初代のロスチャイルドであるマイヤー・ロスチャイルドが30歳の時、ドイツのフランクフルトに12人のユダヤ人の実力者を招いて「秘密会議」を開いたという記録が残っている。この会議で話し合われたのは「世界のマン・パワーと資源を独占的に支配する方法」である。これを「アジェンダ」(行動計画書)と呼んでいる。その主要な行動計画は次のようなものであった。

〇 政治権力を奪取するにはリベラリズムを説くだけで充分である。そうすれば有権者は一つの思想のために自らの力、特権を手放すことになり、その放棄された特権をかき集めて手中に収めればよい。

(ある国に「民主的な国にしてあげます」と言ってその実行を任してもらい、実際には反対のことをして国を乗っ取るか、資源を収奪する。この手法を使い、近年Deep Stateが中東諸国をカラー革命で政府を転覆させたり、1991年にアメリカDeep Stateが「ソ連の経済を再興させましょう」と言って、エリチン大統領を騙して、逆にロシアの経済を「スーパーインフレ」にして滅茶苦茶にし、アメリカはロシアの膨大な資源を収奪した。)

〇 大衆はどのようにして自由を享受すればいいのか分からない。自由という思想を使えば階級闘争を生じさせることが可能になる。

〇 群衆心理を利用して大衆に対する支配権を獲得すべきだ。

〇 酒類やドラッグ(麻薬)などの悪徳を代理人を通じて組織的に利用することで、諸国家の若者の道徳心を低下させなければならない。賄賂もペテンも裏切り行為も、それが我々の目的達成に役立つのであれば、続けられなければならない。

〇 そうすることで服従と主権を確保できるなら、何がなんでもためらうことなく財産を奪い取る権利が自分たちにはある。

〇 人間を支配するには暴力とテロリズムに訴えると最善の結果が得られる。権力は力の中に存在する。

〇 我々の権利は力の中にある。新たな権利とは、強者の権利によって攻撃する権利であり、既存の秩序、規律のすべてを粉砕し、既存のすべての制度を再構築する権利である。

〇 我々は自由・平等・博愛という言葉を大衆に教え込んだ最初の民族である。ゴイム(非ユダヤ人を意味し、ある時は家畜を意味する)は難解さゆえにこの言葉の意味とその相互関係の対立に気づくことさえない。ゴイムの自然発生的で世襲的な貴族社会の廃墟の上に、我々は金による貴族社会を作り上げた。それは我々の拠り所、すなわち富を参加資格とする貴族社会である。

〇 誹謗、中傷、偽の情報を流したことでどのような波紋が広がろうとも、自らは姿を消したまま、非難されることがないようにしなければならない。大衆への情報の出口すべてを支配すべきである。

〇 我々の力を行使すれば、失業と飢えが作りだされ、大衆にのしかかる。そうすれば確実に資本の支配力が生じる。

〇 貧困と恐怖によって大衆が支配された時には、常に代理人を表舞台に立たせ、秩序を回復する時がくれば、犠牲者は犯罪者や責任能力のない人々の犠牲になったと解釈されるよう、事を進めなければならない。計算済みの恐怖支配が実現した時点で、犯罪者や精神異常者を処刑すれば、我々自身を抑圧された人々の救世主として見せかける事ができる。実際のところ、我々の関心は正反対で、減らすこと、すなわちゴイムを殺害することにある。

〇 恐怖支配は、手っ取り早く大衆を服従させるもっとも安上りな方法だ。

〇 すべての戦争の後には、秘密外交が主張されなければならない。秘密外交によって、我々の代理人が関わらないかぎり諸国家は些細な個人的取り決めさえも結ぶことができないような支配権が確保されなければならない。

〇 最終目標である世界政府に到達するためには、大規模の独占、莫大な富の蓄積が必要とされるだろう。

〇 最終的には、我々の運動に尽くす少数の金持ち、および我々の利益を守る警察と兵士とプロレタリアートの大衆が残ればいい。ゴイムに殺し合いをさせるため、大々規模の武装増強が開始されなければならない。

〇 世界統一政府のメンバーは独裁者によって任命され、科学者、経済学者、財政専門家、企業家、大金持ちの中から選出される。

〇 国家法および国際法を利用しつつ、ゴイムの文明を破壊しなければならない。

これがロスチャイルドを党首とする「Deep Stateの世界制覇の行動計画」である。「行動計画」においては「偽情報」、「プロパガンダ」が強力な「武器」になっていることが分かる。ミサイルや核兵器ではない。

1774年にこの計画が策定されて以来、Deep Stateは世界中でこれを忠実に実行してきている。太平洋戦争で日本を破壊し弱体化したのも、ベトナム戦争を起こしてベトナムを弱体化したのも、1917年にロシア帝国を倒しソ連共産党政府を作り、1991年にソ連を崩壊させロシアの資源を奪い取ったのも、イラク戦争・リビア戦争・中東戦争・アフガニスタン戦争、そしてウクライナ戦争を仕掛け、それらの国を破壊し、富を収奪したのも、この計画された手口を忠実に実行したものであった。今起こっているイスラエル・パレスチナ戦争もそうである。今日アメリカを分裂させて内戦状態にし、アメリカを弱体化させているのもこのDeep Stateの綿密に策定された手口通りに進められているからである。
つまりDeep Stateはプロパガンダで、アメリカ全体を自分のものにしようとしているのである。Deep Stateに盾突いているドナルド・トランプをDeep Stateは抹殺しようとしている。

プロパガンダ

表面に現れた国家による「プロパガンダ戦争」(第一次世界大戦以前は、Deep Stateは表に顔を出さないで悪行を仕掛けていた)は、第一次世界大戦間のアメリカ合衆国の広報委員会の組織ができたこと、ロシア革命後のソ連の諜報部ができたことが最初とされる。
レーニンは自分の論文でプロパガンダについて語っている。

「プロパガンダとは、教育を受けた人に教義を吹き込むために歴史と科学の論法を筋道立てて使うこと」「扇動とは、教育を受けていない人の不平不満を利用するための宣伝をするもの」と定義した。

1930年代、ドイツ労働党(ナチス)は政権を握る前から宣伝・プロパガンダを重視した。ナチ党に対抗したドイツ共産党は「秘密兵器としての宣伝・プロパガンダがヒトラーの手元にあれば戦争の危機を増大させるが、武器としての宣伝が広範な反ファシズムの大衆の手にあれば、戦争の危険を弱め、平和を作り出すであろう」と言った。このころは戦争の中心は武器ではなくプロパガンダであったことが分かる。

ソ連が崩壊した翌年の1992年に、Deep Stateは米ソ冷戦後の世界戦略として「Defense Planning Guidance」 を作った。これは「アメリカ一極支配」構造を強化するもので、アメリカに逆らうものを抹殺するためのものである。ブッシュ(父親)が作り、クリントンがこれを実行した。
その政策の骨子は、まずロシア、中国、日本そしてドイツを「仮想敵国」にする。日本とドイツには独立国としての自主防衛能力を持たせないで、アメリカの属国とする。つまり「日米安全保障条約」は見せかけのものであったことが分かる。次に世界各国に対して「介入主義」をとること。それに反抗する国には「軍事介入」をするというものである。

このガイダンスの通りアメリカは1992年から2022年の30年間、諸外国に対して約200回の軍事介入をした。1992年のDeep State のDefense Planning Guidance は250年前の初代ロスチャイルドの世界制覇戦略よりも厳しいものであったことが分かる。政策としては、次の三つがある。
①外交政策、②軍事政策、③プロパガンダ政策(パーセプション・マネジメント)。
③の政策に関して、キッシンジャーは「第二次世界大戦を覚えている世代と、覚えていない世代があり、覚えていない世代は世界の諸外国にそれぞれの歴史があることを知らない」と言ったが、このことが重要である。つまりこれも「プロパガンダ作戦」が重要であるからである。

アメリカは「プロパガンダ政策」を通じて、他国を政治的介入し、更に軍事介入、つまり戦争を仕掛けた。世界を支配しようとするDeep Stateがメディアを使って偽情報を流し、人民を洗脳して介入をし、支配しているのである。アメリカはこれを19世紀から実行していたのである。

フランス人のトクヴィルは1831年、アメリカを訪問してアメリカの民主主義とメディアの仕組みを観察した。アメリカの当時の「新聞媒体」がプロパガンダとして使われ、アメリカ人の考え方と行動を操り、アメリカをおかしくしているとトクヴィルは喝破した。
アメリカの選挙は、当時の新聞が実際の政治家を決めていたと彼は言う。トクヴィルは、選挙制度によりアメリカ国民の民意に沿った政治家が選ばれたのではないと見抜いた。つまりアメリカは建国以来不正選挙が行われ、アメリカは民主主義の国ではなかったのだ。アメリカは20世紀に入り不正選挙が大々的に行われた。2016年トランプが大統領になるときの選挙でもいろいろな手口の不正が堂々と行われた。

「生成AI」を使った選挙介入

今日のDeep Stateは「オープンAI社」にビル・ゲイツのマイクロソフト社を通じて多大な投資をし、「生成AI」により彼らの世界制覇のための偽情報という手口を強化しようとしている。
実際に今度の台湾総督選挙で、にこやかな表情で中国の習近平国家主席が「私は台湾人民に固く約束しよう。選挙後も青か白かに関わらず、あなた方の総統の背後には永遠に強大な祖国が控えている」というフェイクニュースが流れた。

米大統領選挙で共和党の候補者指名を目指すフロリダ州のロン・デサンティス知事の陣営が、ライバルのトランプ前大統領を攻撃する意図で作成したとみられる偽画像があった。アメリカのニューハンプシャー州では2024年1月にバイデン大統領の声をまねたニセ電話が米予備選への不投票を呼び掛けた。昨年11月、岸田文雄首相がニュース番組で卑猥な発言をしたように生成AIを使い合成した偽動画がXで拡散され、投稿した男性が特定されている。

ジョー・バイデンは前回大統領選挙の結果を認めないトランプに対して「民主主義の破壊者だ」と非難する。トランプは「バイデンDeep Stateは、司法省を政治的武器として、選挙の不正をして民主主義を破壊している」と非難する。民主主義の破壊者と言われてもトランプは全く意に介さず、連邦司法省、州の司法省からいろいろの妨害を受けても、トランプ支持はますます高まり、「もしトラ」から「ほぼトラ」とエスカレートし、今や世界はトランプが大統領になったら政治はどうなるかを具体的に論じ始めている。

生成AIによる社会への影響

2023年10月、米人権団体フリーダムハウスは「画像や文章・音声を作成するAIが少なくとも16か国で用いられ、政治や社会問題に関する情報をゆがめた」と言っている。AIは社会の亀裂を深め、民主主義の土台を切り崩すことになる。

アメリカ・ニューヨークタイムズ紙は2023年12月、生成AIの学習のために同紙の記事を無断で利用されたとして、オープンAI社やマイクロソフトを提訴した。フランスの競争委員会(日本の公正取引委員会に相当する)は2024年3月20日、報道各社の記事をAIアルゴリズムの学習に無断で使い、記事使用料をめぐり誠実な協議をしなかったとして、グーグルに2億5000万ドルの罰金を科すと発表した。

生成AIの影響に関する米コーネル大学の研究では、AI技術はアメリカの労働人口の80%がこなす仕事の少なくとも10%に影響を及ぼすとしている。
トロント大学のジェフリー・ヒントン教授は「AIが核戦争と同様に人類を絶滅させる恐れがある」との声明に署名した。
IMF国際通貨基金のゲオルギエバ専務理事は、欧米などの先進国では働き手の6割の人々にAIの影響が及び、うち半分は負の影響を受けると分析した。AIで武装した人と、取り残される人との経済格差が広がり、社会分裂が起こると危惧している。

ツルゲーネフが「荷車の5番目の車輪」だと表現した「余計者」がAIによって多く生み出される。「余計者」は人生の目的を見出すことができず、急進的な行動をとるようになり、社会は分裂し、混乱する。人間は考えることをしなくなり、人間同士の対話がなく、生成AIに煽られる人間が衝突する。

2024年5月13日 三輪晴治