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まずは1本、アイアンを手に入れる

ゴルフを始めるにあたってハードルになったのは、練習場の扉をくぐることだった。近隣に練習場は3店舗あるのだが、いずれも公式サイトを持っておらず詳細や雰囲気がわからず、レンタルクラブがあるのか、スクールがあるのか、ティーチングプロはいるのかもサッパリ。初めてのお店へ入るのに躊躇してなかなか入れないという性格も災いし、練習場の扉を開けることがなかなか出来なかった。

そんなこんなで、とりあえず格安の初心者向け中古セットを手に入れたというのは以前触れたとは思うが、その時に痛感したのがまずは1本だけ練習用に自分で選んだクラブを手にすること。練習したいという欲求を起こしてくれるクラブを手にすると、練習場の扉を開こうという気にもなってくる。実際、セットの中古ゴルフクラブを手に入れてから1年近く後にアベレージ~中級者向けといわれるカーボンシャフトの7番アイアンを中古で手に入れたことで、練習場の扉を開ける気になった。

最初のクラブがその後を左右する

ティーチングプロなどは「スイングはクラブが作る」と口を揃える。だからこそスイング作りには素振りが大事だと、これも多くのレッスン書に書かれている。

50歳を超えてから始めたとはいえ5年以上練習場通いをしている身としては、確かにそうだよねと納得できる言葉なのだが、正直なところ全くの初心者だった頃には何のことやらだった。さらに、ゴルフクラブがスイング作ると言われても、スイング作りのためにはゴルフクラブが必要になるわけで、全くの初心者はいったいどんなゴルフクラブを手に入れればいいのかさっぱりわからない。

当初、何でもいいからゴルフクラブがあればいいのだろうぐらいに考えてゴルフクラブを一応は手に入れたのだが、残念ながらそんな気持で手にしたクラブには愛着が持てず、練習しようというテンションも上がらなかった。

だからといって、どのようなクラブを選べばいいのかはゴルフを始めるための最初のゴルククラブを手に入れようとするときには皆目見当も付かないもの。そこでゴルフクラブ選びのポイントを考えてみたい。

まず最初に確認しておきたいのが、どのようにゴルフを楽しみたいのかという将来像。これも、多くのクラフトマンらが指摘しているが、お付き合いでとりあえずゴルフをするのか、楽にレジャーとしてゴルフを楽しみたいのか、アスリートライクにつねに成長して行きたいのか、それぞれのゴルファーとしての将来像で選ぶゴルフクラブは違ってくる。

とりあえず、ゴルフというモノを経験したいというのなら、ゴルフ練習場でクラブをレンタルし、練習場所属のレッスン(ティーチング)プロがいるのならレッスンを受けるのがいいとは思うが、永くゴルフを楽しむ予定なら中古の単品でいいので将来どのようにゴルフを楽しみたいのかというゴルファー像を考慮したゴルフクラブを1本手に入れてからレッスンを受けて欲しいと思う。

ところが、ゴルフは道具を使うスポーツとしてはかなり特殊で、ゴルファーのレベルや癖、体格、体力などに合わせて様々なモデルが作られている。さらに、設計思想やゴルフのトレンド、素材の進化、技術革新などでニューモデルが数年ごとにリリースされるなど変化が激しいため、一体どのクラブを選べばいいのかはベテランゴルファーでも悩みの種となっている。

また、人間は調整能力が高いためにゴルフクラブによる球筋などの違いをスイングなどを微修正して適応させてしまうため、極端に球筋を補正するテクノロジーが注ぎ込まれたクラブを使うと、補正された球筋を理想の球筋に変えようと調整してしまい、クラブに合わせたスイングをするようになってしまうという問題が出てくる。例えば、これからゴルフをはじめるという人が優しいからと初心者向けに多いスライスしにくいクラブ(捕まりが良くドローボールが打ちやすいクラブ)を使った場合、真っ直ぐな球を打つためにドローボールになりすぎないようにスイングをすることになってしまう。

だからといって、正しいスイングをしなければ球がまともに飛ばないシビアすぎるクラブでは、よほどの上昇志向がない限り練習が嫌になって、ゴルフを続けなくなってしまう。

そこで大事になるのが、練習はそこそこに仲間と楽しめるゴルフがしたいのか、自らのゴルファーとしてのレベルを磨き続けたいのかといったゴルファーとしての将来像。練習が少なくてもそこそこのゴルフができればいいという人なら、ミスに強く色々手助けしてくれるタイプのクラブが最適。上達し続けたいというアスリートライクなゴルファーを目指すなら、操作性が高くかつミスにもある程度寛容で素直な性格の中級者向けクラブで、癖の無い素直なスイングを身につけたいところ。

最初の1本に何を選ぶのか

以前に触れたが、試打クラブとして使われていたアイアンは、ゴルフショップや中古クラブ専門店で単品の格安中古アイアンとして売られている。かつては5番が試打アイアンの中心だったらしいが、現在は7番アイアンがほとんど。これは、試打アイアンは飛距離の基準が150ヤードで、アイアンのロフトが徐々に立ってきた影響から試打クラブの番手が7番になったという説が一般的。それはともかく、手に入れやすい中古の単品アイアンが、クラブセッティングの中心となる150ヤードのキャリーを狙えるクラブというのはありがたいところ。

ただ、同じクラブでもヘッドスピードの違いでキャリーは大きく違ってくるし、同じ7番と表示されていてもモデルが違えばロフトも長さも違い、キャリーも大きな差が出てくるので、試打が可能ならば150ヤードのキャリーとなる7番アイアンを選ぶというのも一つの選択肢。

ところが、まったくの初心者はヘッドがボールに当たらないこともままある話。しかも、偶々ボールが飛んだとしてもクラブの性能を反映したキャリーが出ている可能性は低く、試打をしてクラブを選ぶというのは非現実的。

となると、ゴルフをこれから始める場合には、クラブ設計上の特徴を考慮してクラブ選びをするしかない。クラブの性格や特徴は、メーカーのサイトなどを見るとわかるので参考にして欲しいが、アイアンのバックフェースとグースの具合、装着されているシャフトを見ることある程度は想像できる。

グースの具合はFP(フェースプログレッション)という数値で表されているモノなのだが、フェースのリーディングエッジが身体の面に対して直行するよう構えたときにシャフトセンターにより近くにリーディングエッジがあるようなクラブはグースが強いといわれる。逆に、リーディングエッジがよりボールに近くシャフトの端面とリーディングエッジの位置が近い場合はストレートネックと呼ばれている。

 構えたときの見た目や、キャディバッグに収まっているゴルフクラブの姿が好みというのは、実はゴルフクラブ選びの重要なポイントで、かっこよさなど見た目の好みは人によって違うもの。個人的にはストレートネックのバックフェースがシンプルで肉厚なマッスルバックをカッコイイと思うのだが、ともかくマッスルバックは超アスリートモデルで初心者では難しといわれるアイアンの代表格。しかし、これはいろいろなアイアンを使ってみての好みなので、これから始めるという時にはまったく意識しなかった。かっこよさや見た目の好みだけで手強すぎるアイアンを手にしてはゴルフがつまらなくなってしまうかもしれないので、これから始める人には少なくとも見た目でわかる性格の違いを理解した上で最初の1本を手にして欲しい。

そこで知っておくといい用語がポケットキャビティとキャビティバック、それに中空。これはアイアンのヘッド形状や構造に関する用語。

一般に、初心者やアベレージゴルファー、シニアやレディース向けのアイアンはポケットキャビティ(バックフェースにまさしくポケットのような空間のあるアイアン)や中空(見た目はマッスルバックだが内部に空洞がある)アイアンが多く、セミアスリートからアスリート向けは彫りの深いキャビティバックやソリッドで打点部が肉厚なマッスルバックがラインナップされている。

キャビティバック

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ポケットキャビティ

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マッスルバック

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中空アイアン

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グースの度合いも、初心者向けやシニア/レディース、アベレージ、アスリートと順番に小さくなり、ヘッドサイズも順番に小さく、ソール幅も狭くなる。装着されるシャフトも軽いカーボンから重いスチールへとそれぞれのターゲットによって変えられている。これはあくまでも一般的なアイアンのラインナップ傾向だが、こうしたモデル毎の特徴を踏まえた上でアイアンを選ぶことになる。

大切なクラブ重量

これからゴルフを始めるに当たっては、手に入る中古単品アイアンの中からこうしたクラブのターゲット層と自分が将来目指したいゴルファー像が合致する1本を選びたい。その際に大事なのが、テンションが上がるモデルを選ぶことと、クラブの重さ。同じターゲット層のモデルから選べる場合は、できるだけ見た目の好みでクラブを選びたいところ。

クラブの総重量は一般に振れる範囲で重めが良いといわれている。ある程度体力のある人やスポーツをやってきた人の場合、どのクラブを振っても軽く感じてしまうはず。試打クラブの中心となっている7番アイアンの重量は、重くても440~450gぐらい。対してレディースやシニアモデルは310~350g、アベレージゴルファー向けでカーボンシャフトは340~370g、スチールシャフトでも400g~420gといったところ。

ちなみに野球のバットは900g以上、テニスラケットは300g(男性向け)前後。テニスラケットと同じか少し重いモノを両手で持って振るのだから、軽く感じるのは当たり前の話なので、重めが良いといわれてもわからないのが当たり前。スイング作りのためのマスコットバットのような素振り用のクラブには1kgぐらいあるモデルもあるが、これとて振れない重さでは無い。

ただ、ゴルフは18ホールを回るスポーツ。重すぎるクラブを使っていると最終ホールではスイングが乱れまともに振れずミスが増えてしまう。しかし、これからゴルフを始める人には、18ホールを回ってどうなのかという経験が無いので、疲労具合の想像が出来ずクラブが軽いのか重いのか判断が出来ないという問題に突き当ることになる。

ちなみに個人的なお勧めは、クラブを揃えたりセットクラブやセットアイアンを購入した後でも練習や素振り用に使える重さのクラブ。男性ならダイナミックゴールドなどの120g台のシャフトが刺さったアイアンで、シニアや女性ならN.S.PRO ゼロス6やN.S.PRO 950GHなど60~90g台のカーボンやスチールのシャフトが刺さったアイアン。これは、ある程度の重さがあることでクラブに振られる感覚を身につけやすいという理由から。特に、ここ数年は重めのカーボンシャフトと同じ重さの超軽量スチールシャフトが続々と登場しているので、女性やシニアでも後々素振り用としても使える重めのアイアンを選びやすくなっている。ただ、スチールシャフトが標準装着されたレディースモデルはほぼ無く、そもそも単品の中古アイアンの流通もわずかなので、メンズモデルから選ぶことになるが、幸いにもゼクシオなど各社のアベレージゴルファー向けブランドは年々対象年齢層が上がっていて、より軽く振りやすくなっているのでメンズモデルは本気ゴルフを目指すメンズシニアやレディースにピッタリ。これからゴルフを始めるメンズシニアや女性が後々素振りにも使えるアイアンとしても最適。

もちろん、それぞれのレベルにあった重量のクラブを選ぶのが正しいクラブ選びなのだろうが、これから始める人は少し練習をすると一気に上達することも珍しくない。ゴルフを始めるために初心者向けのクラブセットを買っても、上達してすぐにクラブを買い換るのではお金がいくらあっても足りなくなってしまう。であるならば、まずは7番アイアンを中古で1本だけ手に入れてある程度の球を打てるようになってから、その時点で自分のレベルより少し上のクラブセットを手に入れた方が無駄が無い。加えて、初めての1本を重めのクラブとすることで、クラブを振るための筋力をつけることが出来るというメリットもある。

7番アイアンの単品中古アイアンは1000~3000円辺りだが、せっかく手に入れるのだから長く使いたいもの。

最後に、シャフトのフレックスや調子をどうするかなのだが、こればかりはゴルフ理論が違うと全く異なる考え方があり、一概にどの堅さが良いとは言えないのが歯がゆいところ。個人的には、柔らかめのシャフトを使うことでスイングが良くなると思っているのだが、重くて柔らかいシャフトはほぼ無いのが現実なので、先に触れたようにクラブの重さで選ぶことをお勧めしたい。ちなみに、シャフトは自分のスイングリズムで振りやすく、球が自分の理想とする飛び方をするモノを選ぶのが現実的なのだが、これからゴルフを始める人ではクラブを振ってみても判断できない。そこで、シャフトに書かれているフレックスを参考に選ぶしか無いのだが、カーボンシャフトの場合は正直なところ市販モデルでは軽すぎるクラブが多いので、最初の1本で重めのクラブを選び、練習を続けてある程度の球が打てるようになり、新たなクラブを手に入れる際にクラブフィッターなどにフィッティングして貰うのがいいだろう。ということで、スチールシャフトが装着されたアイアンが最初の1本としてはお勧め。先に触れたクラブ重量を目安に自分に合ったクラブを選びたい。



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