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強くなるためのそれぞれの選択〜大学生㉓〜

夏が過ぎるとあっという間に予選会の季節。

一年という期間は本当に早いなとしみじみ思います。あっという間だからこそ、「何ができて、自分はどうなったか?」「どういう成長を遂げることができたか?」「ダメだったことは何か?」「どう修正していくべきか?」など、きちんと評価して先につなげていくべきでした。でも、当時はできてなかったなぁ。

正確にいうとそんな余裕がありませんでした。理想と現実、目標と現在地の差があまりにも大きかったので、みんな不安と戦っていたと思います。そして、その不安は上級生であればあるほど大きかったでしょう。

必要な能力と自分たちの能力を比べたときに、そのギャップがあまりにも大きいと、戦意を削がれてしまってもしかたがありません。しかし、それを口にも顔にも出さずにチームを鼓舞し続けるのがウチのチームの四年生には求められました。前年は大学院生が残っている、芦ノ湖の湖畔コースという特殊な環境、記念大会で出場校が増えるなどなど、アブノーマルな条件がたくさん揃っていて、しかも密着されているとあらば、モチベーションが大きく下がらないような工夫をしていくことは十分可能でした。まさかが起きそう!起こせる!起こそう!という雰囲気も消えることはなかったですからね。

ただ、この年はそういったプラス要因もなく、ただただどうしようと悩んでいたと思います。
箱根駅伝の壁はそんなに甘くないですからね。

■それぞれの選択

チームの「理想」と「現実」が大きく離れていた場合、どうしていったらよいのでしょうか?
チームのメンバーみんなのモチベーションをしっかり上げ、みんなで目標に立ち向かうべきでしょうか?それとも、一人一人が最大限のパフォーマンスを発揮して個人が成果にコミットできるように環境を整えていったほうがいいのでしょうか?

カイトさんは前者(=チームのメンバーみんなのモチベーションをしっかり上げ、みんなで目標に立ち向かう)を選びました。キャプテンという立場だからこそ、この選択肢一択だったのかもしれません。自分のモチベーションはもちろんのこと、チームのモチベーションも維持するため、たくさんエネルギーを注いでくれました。周りを気にすればするほどカイトさんは自分のことを後回しにして何とかしようとしてくれる人だったので、その結果カイトさん自身の調子が落ちて走れなくなってきました。悪循環でしたね。

ソーメーさんは後者(=一人一人が最大限のパフォーマンスを発揮して個人が成果にコミットできるように環境を整える)を選びました。箱根に出るためには甘いことなんて言ってられないし、モチベーションはそれぞれが自分の責任で維持させろ!とにかく記録の向上だけに各々が集中すること!それを自分にも周りにも求めて、厳しさの化身みたいになっていきました。ソーメーさんは最後の学年ということで、吹っ切れていたなと思います。そしてどんどん走れるようになってきました。自分に厳しかったからこそ、他人にもそれをもとめるだけの強い発言力があったんですよね。

チームを「作る」と「壊す」が同時に起こっていたような状態。誤解を与えないようにいうと、「壊す」という表現はもちろん悪意があるわけではありません。ソーメーさんにとって「壊す」というくらいのインパクトを起こさないとチームは変われないし、箱根にも行けないという強い意志があったのでしょう。両者が相入れることなく、二人の調子の上がり方も真反対。難しかったです。

■僕の選択

僕はどうしたかというと、八方美人でしたね。カイトさんの言い分もソーメーさんの言い分もわかるというように、誰も傷つけないようにして物事を静観していました。ズルかったなと今では思います。

ただ、僕は二人とも大好きでしたし、尊敬もしていました。4年生は偉大です。

本当に何か大きな決断をして邁進するためには、衝突することを避けてはいけないし、仲良くすることだけを求めてはいけないのだと思います。今も昔も僕はそういった衝突を避けたがる傾向があるので、ダメですね。本当に人がわかり合うためには腹を割った話しあいが必要です。そういった嫌われる勇気を当時は持ててなかったです。

カイトさんもソーメーさんも一生懸命でした。手段は違えど、夢も目標も一緒。そして、二人とも一生懸命チームのことを考え、知恵だし&汗かきを厭わない人たちでした。二人が衝突するのは、本気の証拠。今はその当時のことをそんな風に振り返っています。

作品名:猫のお寺の知恩さん著者:オジロマコト出版:ビックコミックス話数:56話「空回りとばあちゃんの知恩さん」

今年の春頃にネットで無料公開された漫画の一幕です。非常に話題になりましたね。

「どんなに良い人間でも、きちんと頑張っていれば、誰かの物語では悪役になる。」

深い。。。

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