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#107 学校給食PFI  〜人手不足がどう影響するのか

自校方式の調理場が老朽化している場合、ある程度の規模以上の自治体においては、それらを集約して共同調理場として整備することが多いことから、学校給食センターを新たに整備する場合、PFIという手法によって進める事例が増えているということをお話ししてきました。


自校方式で建て替えを考える際に直面する問題とは

いい匂いが漂ってきて、調理している様子が見られることが「食育にいい」と主張する方がまだまだいらっしゃるという現実があるのも事実です。学校給食に対する思い出とかノスタルジックな印象が良いものだったので、これからの子どもたちにも必要だということなんでしょうけども、学習指導要領で示される「食育」はもっとレベルの高いもので、匂いとか思い出とかというわけのわからん内容ではないことをまず理解しておいてほしいです。

学校給食衛生管理基準が時代とともに厳しくなっていったのは、何も学校給食だけではなく、ノロウィルスやO-157の事件などは民間のお店でも問題になったこともあり、年々、管理が厳格化してきているのは食に関わる事業者も皆さん、厳しい管理の下、食品提供を行っています。
そういった現代の基準にあった調理を行おうとすると、調理場の設計や機器の選定においてもその調理が実際に安全にできるような配慮が必要となるわけです。
例えば、野菜を洗浄する部屋や肉や魚が入ってくる部屋は、加熱処理をする前なので、加熱処理をしてそれを入れ物に入れる部屋とは、壁で仕切っておくことが必要です。給食を食べた後の食器などを洗浄する部屋については、調理の際に出入りする扉とは別の入り口を設置するような設計が標準になっています。

また、食器や機器の洗浄をするときには、高温の湯を多く使うことになるのですが、この作業では大量に発生する湯気で室内の温度がかなり高温になり、湿度もMAXという状態になります。これは、働く人にとってもかなり過酷ですし、作業毎に部屋が壁で仕切られていないと、この湯気が調理場全体に回って、結露やカビなどへの対策が大変になります。クーラーをつけたくらいでは全く室温も下がらないくらい大量の湯気なのです。

こういった状況を改善したいと考えたら、何十年も前に学校内に設置している狭い調理場の敷地に最新の安全性の高い調理場を設置することができない事例というのが、たくさん出てくるわけです。学校内でいい匂いを漂わせるために、衛生基準を無視した調理場に建て替える、なんてことはできないわけですよね。こういった事情もあって、集約化して最新の基準に沿った調理場を作るというのが、センター化するということでもあります。

センター化反対運動って、地域によっては非常に激しく、上記FBは別府市の反対派のFBグループです。参考までに。

調理員の確保について

自校方式の調理場で運用しようとすると、どうしても調理員の確保が大変になります。調理員の方だって、ご家庭の都合で急に休まざるを得ないこともありますし、その日の献立によって、人手が多く必要な日もあれば、そうでもない日もあるので、各学校調理場では、急に手が足りない場合に来てもらえる人も何人か確保して、朝電話一本で手伝いに来てもらえるようにしています。
学校給食調理場の調理室に入るには、定期的な検便をしてもらい、毎朝その日の体調を報告してもらった上で調理にあたってもらうことになっています。これも衛生管理基準で求められていることです。「急に誰でもいいから」というわけにはいかないんです。いくつもの学校でこのように待機人員含めて、人の手配をしておくというのは、これからどんどん難しくなっていく(というか既にかなり難しくなってきています)と予想されます。

一方、食数の多い調理場では、それなりに人数を確保していて、献立についても2献立や3献立を採用していて、複数の献立がどちらも手がかかるようなことを避けるような献立内容にしています。ある程度の人数を抱えていれば、融通が利くようになるわけです。そういった調理場の方が、休みも取りやすく、マネジメントがやりやすいわけです。

人手不足のためPFI方式での提案は難しい!

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