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介護業界でIT化が進まない訳①

「IT化してる?」

【note】ユーザーのほとんどの方は、こう思うでしょう。

「いつの時代の話をしてんの??w」

ITは既に僕たちの生活に完全に入り込んでいます。
日常生活において「ああ、僕たちは”IT”を使っているなあ〜」と思うことすら無くなってきています。
以前知り合いのエンジニアの方がこんなことを言っていました。
「僕たちの仕事は、”これ便利だね!”って思われないようにすること」とおっしゃっていました。
つまり、いかに自然に日常生活・普段の業務に入り込むのかを目指し、「この仕組みを使っている」ということを意識させないということです。

「スマホでこんな面白いアプリ流行ってるらしいよ!」という話をすることはあっても、「スマホって便利だよね〜」と友達同士で話すことはないと思います。

介護とIT

さて、皆さんは仕事においてのインフラとして何を使っていますか?
パソコン、タブレット、スマホ・・・
多分多くの人はそんな感じですかね。

では、介護業界だと・・・
流石にパソコンくらいはあります。
記録用に一部タブレットを使っているところもあります。
一方で、業務のほとんどは、
「ファックス」と「電話」、場合によっては「大学ノート」です。
僕の奥さんの実家は「紙」を扱っている会社なので、むやみに紙をディスるつもりはありませんが、現実です。

最近になって、やっと様々なテクノロジーを導入する会社や施設が増えてきましたが、現場に根付いているかというとまだまだです。

では、なぜそんな現状なのかということを、「介護」が置かれている環境・状況とともに、言い訳しつつ考えていきたいと思います。

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①制度ビジネス

介護は大きく分けて二つに分けられます。
ひとつは、お手伝いさん的にお金を払い、身の回りの世話をしてもらう介護。いわゆる自費介護です。
もうひとつは、「介護保険制度」を利用した介護。
日本では世界に先駆けて2000年から運用が始まりました。

どちらかというと、一般的に言われる「介護」は、この介護保険制度の中で繰り広げられているものが多いと思います。

その名の通り「保険」です。
その保険の中でも、「国」が保証してくれる「社会保障」の制度の一部に当たります。
社会保障は、生まれてから死んだ後までの、生活上の問題を予防して生活を安定させるために国家が保証しているものです。

つまり、行政機関が最も大きなステークホルダーということになります。

行政と手を組んで進めていくビジネス、とも言えるので一般に周知する際にはとても信頼されます。
ご高齢の方やご家族によっては、「区役所が関わっているというだけで安心する」と言われる方もおられるほど、今の日本の「行政(お上)」に対する信頼は揺るぎないものだと実感しています。

しかし、一方で影も落とし始めています。
行政を手を組み、信頼をしてもらっている。ということは、同時に透明性の高い運営も求められます。
介護ケアサービスの予定と実績はきちんと整合性が取れているか?運営基準は間違いなく満たしているか?職員の勤務状況に不備はないか?など、多くの項目もあります。
至極まっとうな仕組みです。
ただ、この仕組みには副作用があります。
実績、運営の証明のほとんどを全てを「紙」で保存しなければならないということです。
施設独自の判断に基づいて保存することは認められません。

このように、他の業界ではあまり聞かれない制度や風習が多く存在しています。

ただ、「これはおかしいだろ!」と言えていないのも現状です。
僕たちはあくまで「社会保障」の枠組みの中で”メシを食っている”し、指定取り消しになれば、施設の売上はほぼゼロになります。

守ってくれるもの(国、行政)が大きければ大きいほど、それに伴って動きが取りづらくなっているのも、僕たちは向き合わなければいけない課題です。

②組織のトップ

様々な勉強会や交流会や会合などに呼んで頂くことがあります。
出席されている方々のほとんどは、管理者以上・マネージャー・経営者がほとんどです。
介護・福祉という、スタッフ同士の接地面が大きな業界において、「トップ」の考えは非常に重要です。
そのトップの考えはスタッフにあっという間に浸透し、組織の考えになります。

その「トップ」があろうことか、

・LINEなんてやったことない
・スマホには一生変えない
・パソコンは若い奴に任せる
・紙が一番いい、皆んな見れるし
・大事なことは電話でしょ

みたいなことを平気でおっしゃっています。
(全部実話です)

特に介護業界は「現場でのキャリア」がそのまま役職に反映されている場合が多いです。
残念ながら、業務の多くが属人化しているケースも多く、その属人化されたオペレーションでガチガチに固まってしまっており、そのオペレーションを作った人orきちんと遂行できた人が”上”に上がるので、その呪縛(属人化されたオペレーションや習慣、風土)から抜けない出せないケースが多く見られます。

そんな組織において、「新しくタブレットを導入する」とか「記録入力の効率化のために〇〇というシステムを導入する」などと、若手や職員が言い出そうもんなら、、、もうご想像の通りです。

僕の肌感ですが、そういった組織は業界全体の7割以上は存在していると思います。

「そんな無茶苦茶な管理職やトップは変えたほうが・・・」
しかし、人材不足の介護業界において、一人の離職がどれだけの影響を及ぼすのかは想像するまでもありません。
そして、残されたスタッフに負担のしわ寄せが集中し、ストレスや不満、さらにコンプライアンスまでもが守られなくなるケースもあります。
”そうなれば組織は崩壊に向かう・・・”
こんなことを思えばますます動きが取れなくなっていきます。



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さて、実話ベースで書いてきましたが、次回は僕が肌で感じた感覚を中心に、実話も交えつつ書いていきます。



<次回>
③社会と分断された業界
④”空気”



終わり。




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