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"こと"を愛する者たちへ告ぐ

「好きなことで生きる」「やりたいことだけやる」
SNSインフルエンサーや自己啓発界隈などなどで流行っています。

一方で、「やりたいことなんて皆んな持っているわけではない」「やりたいことなんて一握りの人間だ」という人がほとんどです。

最近では、マインドフルネスやウェルビーイングの注目度が高まり、「生き方」や「捉え方」など、”こと”を手段として考え、目的となる”人生をどう生きるか”を考えていくという人も増えています。

今回は「”こと”で生きる」ことについて考えていきたいと思います。

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「好きなことで生きる」という幻想

巷でよく言われている「好きなことで生きる」的なブーム。
僕はこれを「幻想」だと断言したいと思います。
大前提として、僕は「好きなこと」を仕事にも趣味にも生活にもしています。

だからこそ、「幻想」だと思うのです。

そもそも、僕や僕の周りの、いわゆる「好きなことで生きている人たち」は、どうやって今の状態や、これからの理想や夢を見つけることができたのでしょうか。

例えば僕の場合、確か一番古い記憶は10歳の頃。
その時に、人生をかけてもいいくらい「好きなこと」に巡り会えました。
でもそれは今から15年以上前の話で、「好きなことで生きる」的なキーワードも世に出ておらず、特に昭和気質がまだ根強かった田舎にあって、僕は相当に抑圧された(親ではなく、周囲の”大人”)少年期・青年期を送ってきたと思います。

でも、その「好きなこと」以外に興味のそそるものに出会うことはできませんでした。

周りからは、あまり良く思われていない面もあったと思います。
偏差値を「1」でも多く上げることが正義だったし、テストの点数が高い奴か運動のできる奴がいつもヒエラルキーの”上”の方にいました。
多分僕も勉強は得意だったので高校時代なんかは比較的楽しい(一般的に)時間を過ごしたとは思います。

でも、それでも、僕は「好きなことで生きる」なんて思っていませんでした。
むしろその想いは少しネガティブなものでもあったと思います。
「好きなもの”しか”」なかったんです。

多分僕以外の人(好きなことをして生きている人)も、もともと「好きなことで生きよう」とかは思っていないんじゃないかとすら思います。
それよりも、その「好きなもの」がしたくてたまらないし、それがない人生なんて考えられないし、それ以外にそそられるものが少ない、あるいは無いんじゃないかと思います。

好きなことで生きることができているのは単なる結果論に過ぎず、なりふり構わずそれをやってきたからだと思います。

ともすると、そういった巷に溢れる「好きなことで生きる」という華やかなキーワードは、「好きなことで”たまたま”生きてこれた奴」の自己満足的なブランディングに過ぎないように思えてきます。

”こと”が先か”マインド”が先か

では、「好きなことで生きる」というある種の呪縛から一歩離れて、
①好きなことを見つけること
②好きなことで生きる的マインドを持つこと

どちらが先であることが望ましいのかという問いを考えたいと思います。

僕の一旦の結論は、「どちらもNO」です。

①好きなことを見つけること

よく聞かれます。聞かれるというか、言われます。
「いいよな、好きなことがあって。俺はないから。」
「俺は好きなことを仕事でできてないから羨ましいよ。」

好きなことは”見つける”というのは本質的にはあまりセンスが良いとは思えません。
みなさん、今までの人生の中で「よし!今日は好きなことを見つけよう!」と思ったことはありますか?そして、見つかったことはありますか?
少なくとも僕の今まで出会ってきた人の中にはいませんでした。(いたらすいませんw)

好きなことは、初めは無理やりだったり、だた漫然とこなしているだけだったりするかもしれないし、必ずしも”一目惚れ”ではなかったりするかもしれません。
やっているうちに好きになったり、一歩踏み込んで挑戦した時に好きになったり、正解はわかりません。
ただ目の前の興味のあることや「やっつけたい!」ものに向かっていけば自ずと感じてくるような気がします。

友達や恋人と同じなんじゃないですかね?
友達を作ろうと思っていても、意外と作れなくて。
恋人を作ろうと思っていても、意外と作れなくて。
そんなこと頭からすっかり抜けているときに、「親友」と呼べるような関係になったり、「愛する人」に出会ったりするんじゃないですかね。

②好きなことで生きる的マインドを持つこと

マインドって、どうやって形成してきましたか?
たまたま街を歩いているとフッと降りてきた?
考えてたらそうなった?
生まれつきあった?

多分どれもほとんどの人が当てはまらないと思います。

皆さんも僕も、自分の中で大切にしている想いがあって、それに従って生きているじゃないですか?
あるいは、自己の中にある理性や感情に向き合いながら生きているんじゃないですか?

「好きなことで生きる”マインド”」も、先ほど言ったことと同じように幻想だと思っています。
もう少し斜めから言うと、「好きなことで”たまたま”生きてこれた奴」の自己満足的なブランディングかあるいは、それに準ずるビジネスに過ぎないと思います。

結果論的に得たマインドを、あたかも万人が持ち得るマインドであるかのように吹聴したり、自己啓発の一種のようにビジネスに昇華させていっているだけのように思います。

「こと」と「マインド」どちらが先かを問うこと自体がナンセンスであり、万人に共通する普遍的価値観ではないのです。

試しに地元でそこそこ有名な寿司屋の大将に聞いてみてください。
「はあ?」と言われるでしょう。

僕のじいちゃんは自転車・バイクの職人ですが、「はあ?」と言わないまでも、僕たち凡人には理解できないような言葉で教えてくれるはずです。

つまりは、「わからない」ということです。

”好き”なことを”愛する”

否定的なことばかり言っていても埒が明きません。

皆さんは「好きなこと」はありますか?

仕事?趣味?スポーツ?

なんでもいいです。

多分真っ先に浮かんだものは、皆さん「愛している」んじゃないですか?
それがない生活は考えられないし、生きていたくもないとすら思える。

それが「好きなこと」なのです。

アクセサリー的に「好きなこと」を見つけようとしても、それは相対的評価の上でしか価値判断ができず、結局は飽きてしまいます。

そうではなくて、本当に愛するもの。

他人から”おかしい”と言われても離れたくないもの。

全てを投げ捨ててでも向き合いたいもの。(少し極端だが)

それが自分にとっての「好きなこと」なのではないでしょうか。

仕事じゃないくていいと思います。
まあ今だと仕事にできる手段が増えているのでできなくはないと思いますが、仕事である必要なないと思います。

もう1つ思うことは、「好きなこと」の「こと」を愛して欲しいと思います。
もちろんその奥にある概念を目指すことは重要なことだし、長い人生を助けてくれるとも思います。

ただ同時に、「こと」、実体を愛することで見えてくるものもあると思います。
時に苦しく、時に裏切られ、「なんで好きなはずなのに」と嘆くこともある。

それでも、自分が愛せる「こと」を愛してください。

多くの自己啓発本やヒーリング本が乱立していままずが、「こと」を愛することについて書かれているものは少ないように思います。
それは、ビジネスにならないから。

抽象化させ、汎用性があり、万人に通ずるであろう姿勢や考え方や思考法の方がより多くの”マス”を引き付けられます。

でも、「こと」を愛する皆さんは、マスになる必要なんかないんです。

まっすぐに愛せばいいのです。

具体→抽象?抽象→具体?

長くなってきたので、そろそろ僕の言いたいことを書こうと思います。

それは、「こと」から人生の概念を学ぶのか、

まず、人生の概念を学んでから「こと」に進むのか、

という問いです。

どうしてこのような問いを思ったかというと、
最近の自己啓発系の本やSNSで目にする、いわゆる”インフルエンサー”たちの流行により、これから社会に出る人、あるいは社会に出たばかりの人が「迷子」になっているのではないかと思ったからです。

・こうすれば何をやっても上手くいく
・成功者の哲学!
・好きなことで生きていけ!(しつこくてすいませんw)
・好きなことを副業に!
・上手くいく7つの法則
・成功者のマインドセット
など

いまだに本に対して見えない権威を感じている多くの日本人にとって、本の中や”有名な人”が言っていることが「正解」のように感じてしまっています。

こう生きなきゃいけない。
こう考えなきゃいけない。
こうしなきゃ成功しない。

もちろんマインドセットはとても重要だし、姿勢も重要だし、考え方も重要です。
僕も自己啓発本は好きだし、大事にしている本がたくさんあります。

でもやっぱり、自分の「目の前にある”こと”」といかに対峙するか、いかに受け入れるか。
そこからでないと、真に人生の概念を理解することはできないと思います。

かっこいいこと、都合のいいことを言っては、目の前の現実から目を逸らしてはいないですか?

未来ばかり語って、今、目の前にいる人の幸せを蔑ろにしてはいないですか?

最終的にどうなるか、理想や目標を持つことは大切です。
しかし、どんな成功者も、誰も見向きもしなかった、「自分の好きなこと」に、ある種盲目的に見えるくらい真っ直ぐに向き合っていました。
IT長者だって、自分で手を動かしてショボいシステムからはじめました。
インフルエンサーだって、ブラックともグレーとも言われるような会社や仕事を通じて、圧倒的な成果を残してきました。

多くの情報によりお腹いっぱいになっている僕たちは、ついつい「正解」に目を向け、そして「環境」に目を向けがちです。

でも、そんな誰にでも見える、誰にでもできる環境なら捨てたほうがマシです。

給料が下がるから自分の好きなことはできない。
9時17時でできないから好きなことは仕事にできない。
せっかく大学まで出たのに、この仕事は・・好きだけど・・人の目が・・。

多分、それは好きじゃないんです。
愛せてないんです。

好きなことのためなら、拝金主義にならないし、時間なんて忘れるし、人の目なんて気にしてる余裕はないです。

逆に、お金・時間・世間体も本気で大事にしたいなら、限られたリソースを使って全力でやり切れるはずです。
言い訳にしないはずです。


「目の前の現実」を変えましょう!
実体に向き合いましょう!
全て自分次第で変えられます。


皆さんの好きなことはなんですか?


それを愛せますか?


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好きな「こと」がある皆さんへ。

僕も好きなことがあります。

皆さんにもありますよね。

僕のじいちゃんの話を少しだけ出しましたが、
じいちゃんも興味本位で自転車・バイクの世界に入って、
その世界が嫌いになりそうなこともたくさんあったそうです。

でも、他に何もない、勉強もできないし、他に興味のあることもない。
だから、自分の現実に向き合い続けたようです。

今では、日本で一番の自転車屋だと僕は思います。

お客さんから愛され、地域から愛され。

そして、じいちゃん自身も自分の仕事が好きだし、愛しています。

「こと」を愛している皆さんには、ぜひ胸を張ってほしいと思います。

僕も、介護の世界が好きなことに胸を張っています。

一緒に現実を変えていきましょう!


<おわり>



シニアの方々が、主体的に・楽しく生活し続けられるよう、頑張ります!少しでもご協力頂けると幸いです。