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雨の銀座/東京夜景

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―東京夜景―

土屋光逸の描いた銀座の絵がある。摺師だった曽祖父の遺した摺本を見ていたとき同席していた浮世絵研究者の方に教えて頂いたものだ。江戸から明治、大正、昭和に入り、どんどん移り変わる東京の風景。雨の夜、銀座は光に彩られている。

つちもちさんに原画を描いていただくことになったとき、つちもちさんの作品には不思議なノスタルジーがあると思った。これからつちもちさんに描いてもらう東京の風景は、木版画の歴史上断絶した光逸以後の東京で、昭和、平成、令和と変遷する時代のなか、街はどのような変化をして来ただろうか。

偶然だがつちもちさんと私は同い年で、ともに生まれたときから東京に暮らしてきた。私達は1979年生まれでちょうど小学校卒業の頃バブルが弾けた。氷河期世代と呼ばれた私達は、物心ついてからずっと東京の巨大な落日を見続けてきたような気がする。

そんな訳で、つちもちさんに東京の夜景を描いて欲しいとお願いした。時代は平成から令和に移って現代の夜はさらに光に溢れている。


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―新素材:偏光顔料―

今では伝統工芸として江戸時代から変わらぬ技法で造られている浮世絵ですが、江戸当時は活発に新技法の開発をしていました。

浮世絵木版の新しい可能性を推し進めるため、都鳥ではレーザー木彫などの新技術や新顔料素材の研究なども進んで行っています。

今回使用したのは、視線の角度と下地色によって色彩が変化する最新の偏光顔料で、銀座の光に満ちた夜を再現するため、雨の表現に用いております。

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―版元都鳥―

かつて墨田川にあった渡し舟。

「竹屋の渡し」は現在の台東区山谷掘南岸と対岸の墨田区向島の三囲神社下の間を行き来していた。向島岸辺の「都鳥」から対岸の「竹屋」に船を呼ぶ女将の「竹ヤー」の美しい声が有名だったと聞く。その茶屋「都鳥」の主で浮世絵/新版画の摺師をしていたのが曽祖父、高橋豊吉であった。

このたび、新時代の浮世絵新版画を作るというコンセプトのもと版元として作品を発表していくことになった。今は絶えてしまった浮世絵⇒新版画の系譜を継げるよう、曽祖父に肖り「都鳥」の名前を拝借しました。

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―令和新版画―


今の時代に浮世絵をつくるなら、それは江戸浮世絵への単なるオマージュでは無く、浮世絵のタマシイを絵に宿したいと思った。

江戸時代の浮世絵は、日本文化の中心であった上方の美術に対峙する江戸庶民の文化や美意識の結晶であった。現代であれば西洋美術の流れを汲んだホワイトキューブによって選別される、生活の場と切り離された「アート」とは異なり、江戸時代の浮世絵のように、時代を映し、生活の中で生きる美術をつくりたい。

そんな木版画を制作したいと、ここから小さな歩みですが令和新版画として浮世絵木版の発表をしていこうと思います。


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