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LEO 箏リサイタル2023 「GRID ON //GRID OFF」@浜離宮朝日ホール

先日の「Spotifyまとめ2023」で言及した、気鋭の箏曲家LEOさんのリサイタルに行ったお話。浜離宮って雑に書いたけど正確には浜離宮朝日ホールです。

たしかチケットの発売が4月で、その頃から眼前の煩雑なあれこれに8月末なぞ無事生息してるかわからないがええい儘よと予約してました。

途中、頭から完全にスケジュール抜けていたけれど、だいたい月イチでお世話になっているヨガのインストラクターさんが「浜離宮のLEOさんの(リサイタル)行きたかったけどもうチケット完売だったんですよ〜(涙)」と嘆いてらして、あっ、そういやあ私そのリサイタルめっちゃ良席買ってましたですと思い出したのだ。まあ、チケット購入時の不安は杞憂には終わってくれず実際今年の夏は死に体で、でもどうにか行くことができた。

まずLEOさん、ほんっっとにカッコよかった。長身で見目麗しく、袈裟のような不思議なお衣装で箏の前に座る姿は眼福、3列目万歳。

リサイタルは3部構成で、セットリストはツアータイトル通りアルバム 『GRID//OFF』からの曲が中心。リサイタルツアーはまだ来年まで続くようなので詳細は記しませんが、個人的にはスティーヴ・ライヒ「Nagoya Marimbas」を楽しみにしてました。

2部で、ゲストの木村麻耶さんとの「Nagoya Marimbas」協奏はアルバムの何倍も音が強く深く豊かで、永遠に聞いてたかった。

こちらはGRID ON //GRID OFFツアー映像ではないのですが、木村さんと共演のダイジェスト。

こんなふうに木村麻耶さんの揺るがない雰囲気というのかそれがLEOさんの優美さとぴったりな気がしました。

そして箏でスティーヴ・ライヒ、素敵。

Steve Reich: Electric Counterpoint Ⅲ.Fast - Koto (LEO)

3部、坂本龍一さんの「Andata」

坂本龍一さんが3月28日に亡くなられたすぐ後の4月10日ブルーノート東京での演奏がLEOさんのyoutubeにアップされていて、そちらはソロだけれどGRID ON //GRID OFFでの演奏は、13・17・25絃箏カルテットとシンセサイザーという編成。

《Andata》は2017年に発表された坂本晩年の作品で、バッハの精神が息づく静かな力を持った音楽である。教会が海の渦に巻き込まれながら水没していくさまを思い浮かべながら作曲されたという。網守が箏カルテットとシンセサイザー、エレクトロのために編曲したものを『GRID//OFF』では箏パートをLEOがひとりで多重録音したが、本日は4人の箏奏者によって演奏される。網守のアレンジは原曲のメッセージを噛みしめるように繰り返し、シンセサイザーが加わることで、坂本のイメージした海の教会をより壮大に描き出している。

Program Noteより 文・八木宏之

前の方の席だったのもあるだろうけれど、浜離宮朝日ホールはそれこそ舞台袖から登場する演者を誘導するスタッフの「どうぞ」という小さな小さな声まで漏れ聞こえてしまうくらいなので、演奏前の静寂から少しずつ箏とシンセサイザーの音が増えていく間、息をするのも憚られ身じろぎもできなくて、そうして「無」になったら会場にあふれる音の渦動に自分も混ざってた。でも次第に波と渦と一緒に音は行ってしまって、我に返り、ああ、逝ってしまったと強く感じました。

自分が知っていた箏曲、箏の演奏というものの概念が完全に覆された得難い時間だったと思います。無事に行けて本当に良かった、幸せだった。



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