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エンキョリレンアイ

12/23

【女声】
塾終わりの夜に上を向いて
君は今どこにいるんだろうと問う
もっとバイトしていれば君に会えたかな
もっと勉強に余裕があったら君に会えたかな
今見えているきらめく星が
君には見えていないだろうから
言葉を送ろう 声を送ろう
メリークリスマス
君に幸せを それ以外は何もいらないから

【男声】
サークルのクリスマス会が終わって
今頃君は何をしているんだろうか
会えないことを心配しているだろうか
それでも君は絶対に僕を困らせるようなことはしない
見上げた空には高層ビルの光
あの時一緒に見上げた星はない
会えない 会えない 会いたい
メリークリスマス
僕が君にあげられるのは 声しかないんだ

12/24

【女声】
赤ペンを補充しに、早朝の街にきた。
雪はない、朝の澄んだ空気が少し濁ったような感じがした。
消えた光、開き始めたお店、手をつなぐ恋人。
普段より多い人波にさらわれて、私はいやな女になる。
どうして、いつも、私ばっか。
知ってる、知ってるんだよ。君の優しさは。
でも少しぐらい、君から来てくれてもいいじゃない。
重いのかな、こんなのダメかな、でも思うんだ。
花火大会でも、定期テスト終わりでも、「会いたい」っていうのは私から。
好きだよ、でも君からだって来てほしい。
鈴を鳴らして、トナカイで、プレゼントを携えて。
欲張りになるなら、恋人がサンタクロースでいてほしかったな。

【男声】
「どうしても人手が足りなくて」とバイトを入れられた。
たぶん君からは来ない。君は、そんな余裕はない。
君は僕を待ち望んでいるだろうか。いるの、だろうか。
別れ際、新幹線、指定席。
「お前、いいのかよ」っていったバイトの先輩が譲ってくれるわけでもなし、世の中浮かれ気分で嫌になるよなぁ。
赤色、緑色、白色。
だから、君に会いたくなる。
「会いたいな」って、いつも言ってくれる君に。
浮かぶのは、別れではなく、笑顔。
だから僕は、前々からトナカイを用意していたんだ。
きっとこうなると、わかっていたから。

12/25

【女声】
クリスマスでにぎわう街の中、私は青信号を待っていた。
ウイルスが入ってこないように深めにマフラーを巻いて。
いろんなカップルが、手をつないで。
いろんな家族連れが、笑いあって。
それだけでもう、泣けてきてしまうのさ。
どうして、どうして会えないんだろう。
「会いたい」
つぶやいた言葉は魔法になって信号を青に変えた。
波が押し寄せてくる。すれ違う。すれ違う。すれ違う―――。
君の、匂いがした。
押し付けられる体の中に、空っぽになった私の心に、君の色が、染みこんだ。
踵を返す。ゆっくり、少しずつ、歩く、走る、追いかける。
君が、いた。
「……会いたかった」
君の身体に、入り込む。腕にしがみつく。顔をうずめる。
「僕も、会いたかった」
君の声が耳に届く。もう何もいらない。
この涙は、うれしいのなんだよ。

【男声】
クリスマスでにぎわう街の中、僕は君の姿を探していた。
ピンク色のマフラーをした君が、切なげな顔をしている。
会ったら、なんて言おうか。
会ったら、どんなふうになるのかな。
それだけでもう、恋しくなるんだよ。
彼女が口を動かして、つぶやいた。
「会いたい」
つぶやいた言葉は魔法になって信号を青に変えた。
波が押し寄せてくる。すれ違う。すれ違う。すれ違う―――。
君とも、すれ違った。
瞬間にいろんな思い出がフラッシュバックして、僕は立ち止まることができなかった。
横断歩道を渡り切ってようやくストップした。
君が、いた。
「……会いたかった」
君の声が、僕をなでていく。君の手が、僕を包んでいく。
「僕も、会いたかった」
君のアイタイを過去形にできてよかった。
泣かせるつもりは、なかったと思う。