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背番号51のすごい奴が笑う・Perfume『レーザービーム』論:この歌詞がすごい!4曲目

(初出:旧ブログ2019/02/15)

 『レーザービーム』同様に、恋の駆け引きを野球になぞらえた作品に、ピンク・レディーの『サウスポー』があげられるだろう。<背番号1のすごい奴>、<フラミンゴみたい ひょいと一本足で>と、野球を知らない人でもこの選手が誰か日本国民全員が正解をだせる。「西武に居た頃の佐々木誠」!……いやいやいや、世界のホームランキング・王貞治である。もはや名前を出さずとも「一本足打法」という「記号化」された存在なのだ。そして『サウスポー』(1978)発売の33年後に発売された『レーザービーム』(2011)にも<レーザービーム>という「記号化」された選手が登場する。イチローだ。本来機械用語であるはずのこの言葉はイチローの代名詞になり、さらに強肩の外野手を形容する言葉になった(イチロー以前は「ライフルアーム」、「鉄砲肩」という言い方をした)。そしてこの「機械用語」である部分が、Perfumeのテクノを前面に押し出したサウンドと上手くマッチングしたのかもしれない。

 まず<レーザービーム>という語感が良い。「レー/ザー/ビー/ム」と区切ってもアクセントに高低が無く、聴覚で直線的な感覚を<突き刺す>テイストを感じられる。「ライフルアーム」、「鉄砲肩」ではこう上手くいかなかったはずだ。一方で<ストレイト>である。本来なら「ストレート」と表記するところを、敢えてハズしている。これは<グラウンドに立つキミ>に恋する女子側の気持ちなのではないだろうか。恋の相手、イチロー(つまり男性・野手)に対して<まっすぐ>な気持ちを直球勝負で伝えたい、でも<ドキドキする>。なので少々ぎこちない。だからこそ、<レーザービーム>という語感の良さがさらに際立たせている。

4連目のH音連続も見事という他ない。

タリヲツナグ ミツノ カリ 
<2人をつなぐ 秘密の光> 
アノミツケタ ミツノ カリ
<あの日見つけた 秘密の光>

 ヒミツが3つ、ヒカリが2つ、ととても歯切れよく進む。これもPerfumeのテクノを前面に押し出したサウンド、さらには鋭角かつ洗礼された、近未来的なファッションとの組み合わせがなせるワザだろう。もう少し野球に紐づけて深読みすればHはヒットを現す記号である。守備でも<レーザービーム>、打ってもH(つまりヒット)連発、それくらいすごい相手との恋、というのは考えすぎか?!ちなみに余談だがイチローを題材にした曲はほかにも東京事変にある。こちらもイチローの名前は登場しないが、椎名林檎が「イチローを題材にした」と、公言している。タイトルはズバリ『スーパースター』。こちらもイチローが「記号化」されている。

#音楽 #歌詞 #Perfume #野球

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