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俺は「松坂は200勝する」と信じるほかない

(初出:旧ブログ2018/02/07)

 松坂大輔がアメリカからソフトバンクに復帰したとき、にわかには信じられない体型をしていた。筋肉の境目がまるでわからない、雪だるまを彷彿させる、丸々とした脂肪を羽織っていた。2年間で登板はわずかに1試合。唯一登板した仙台での楽天戦も1回5失点、西武時代の先輩である松井稼頭央に死球を与えたりと、信じられないほど散々なものだった。それも3年(結果的には在籍は2年のみ)12億という大型契約を結んでいるにも関わらずである。
 だから今回、そんな松坂を獲得した中日に対して「信じられない」と口にするのは当然と言えた。まだ村田修一、梵英心、海の向こうではダルビッシュ有やイチローが「在野」として移籍先を探しているというのに。みんな松坂より昨季成績を残した選手ばかりだ。

 当然批判の矢面に立たされる松坂だが、ちょっと待ってくれと俺はみんなに言いたい。松坂は別の意味で「信じられない」投手だったことを、思い出してほしいのだ。98年の甲子園を春・夏連覇を果たし(夏の決勝ではノーヒットノーラン達成)、ドラフト1位で西武に入団すると3年連続最多勝を含む数々のタイトルを獲得。06年には米レッドソックスに移籍し初年度にワールドチャンピオンになり、WBCでは第1回大会、第2回大会それぞれ優勝と大会MVPを達成している。
 ここまで頂点から頂点、そして頂点へと渡り歩いた選手も球界広しといえど松坂くらいだろう。他の競技でも、吉田沙保里、羽生善治くらいだと思う。マンガの主人公のような、いやマンガの設定だとしても「非現実的」と冷めてしまうかもしれないレベルだ。確かにここまで頂点を極めた選手が雪だるまのような体型になり、2年間で1試合しか登板しなかったら、「落ちぶれた」と感じるのはしかたのないことだと思う。ただ、野球ファンとして、西武ファンとして、その一言で松坂を片付けたくないのだ。

 あどけなさの残る童顔に似合わぬ剛腕から150キロを連発し、イチローに続くパ・リーグのスターとして世間の注目を浴び、今のパ・リーグの地位を押し上げることに成功したのは松坂のおかげでもある。水色の18を背負った松坂が世間から褒められるたびに、西武ファンである僕は、なんだか家族が褒められているようで誇らしい気持ちになった。「みんなが好きな松坂は、僕が好きな西武のエースなんですよ」という気持ちになったのだ。10年近く少年時代の自分に良い思いをさせてくれた大エースに、「もう無理だ」とか「厳しい」とかばかり言いたくないのだ。 
 西武入団交渉の際に当時の監督・東尾修から、松坂は東尾が200勝を達成した時のウイニングボールを手渡された逸話がある。僕も幼心に「じゃあ松坂も200勝するんだな」と、なんとなく感じた。現在日米通算164勝。ここから這い上がれば決して無理な数字ではない。俺は信じたいのだ。甲子園で再び栄冠を勝ち取る松坂を。横浜高校出身の彼が横浜DeNAを抑える松坂を。そして「松坂大輔はやっぱり200勝する宿命にある投手なのだ」と。今年は松坂に関してはポジティブなニュースにだけ目を通し、ネガティブなニュースは全部無視しようと思う。
 そんなことを考えていたら松坂の復調を伝えるニュースが飛び込んできた。こんな内容だった。
「中日松坂・猛アピール フリー打撃で快音連発!柵越えも2発」
 打つほうか~い!確かに高校時代から打撃センスも良かったけど…。投手も打席に立つセ・リーグで、”主砲・松坂”の活躍にもモチロン期待したい。

#野球 #松坂大輔 #西武  #中日

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