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下手くそな公式謝罪のどこが下手くそなのか(謝罪文・謝罪会見で悪手となる言葉づかい等その他のパターンまとめ)


世に不祥事騒動の種は尽きまじ。
それにともない、やらかした当事者によるゴメンナサイも様々に行われるわけですが。
「これ謝ってないような……」「なんかイラッとくる言い方やな」「何があかんかったか分かってへんやろ」みたいな、はた目に下手くそな謝罪の文面や会見をしばしば見かけますね。

そこで本稿では、主にいっぱしの企業や大物個人のオフィシャルでおこなわれる謝罪のなかで「このフレーズがあると/このやりかただと謝罪としては悪手」という言葉づかいやアプローチ等についてまとめてみたいと思います。
これを読むことで上手な謝罪ができるようになるとは限りませんが、ひとまず「謝罪が謝罪になってない」機能不全を防ぐ確率は上がるんじゃないでしょうか。

(※記事最後の有料部分は全体を短くまとめた概要です。ぱっと手早く要点だけつかみたい場合に、投げ銭がてらご覧ください)

■部分保留をつけてやわらげようとする
以下のフレーズはつい使いたくなる誘惑が強いようで、今昔さまざまな謝罪文に頻出しますが、基本的に印象を悪くするトリガーです。

・「◯◯とはいえ」
・「結果的に」「結果として」
・「一部に」


「とはいえ」用法は、例えば「知らなかったとはいえ」「害のないレベルとはいえ」「外注先/派遣/アルバイトのやったこととはいえ」等々。「結果として」も含めて、その気はなかったんですけどねえと言うのは事実でも言ったら印象を損なうやつです。
また、「一部に」という矮小化。「大筋においては言われている通り」みたいな言い方にもなりますね。厳密には悪くないところもあるんだけどさ~、とほのめかすのは往生際が悪く見苦しくなる可能性を呼び込みます。

参照:
『ほこたて』打ち切り ヤラセは「6件」だけで済むのか 『あるある』のように外部有識者による検証を望む
https://news.yahoo.co.jp/byline/mizushimahiroaki/20131102-00029446/
↑記事内で紹介されている謝罪文に「大筋において事実」用法がみられます。

■細部のズラしや言い換え
これも多いですね。例えばボディタッチのセクハラへの謝罪で「さわったのは尻ではなく腰だった」と弁明したり。そういう問題じゃねーから! とツッコミを招く確率をわざわざ上げて失点を重ねるパターン。というかそれこそまず「大筋において事実」を認めないとあかん場合ですね。

また、ズラしの他に言い換えで下手に走ることも。例えば最近、人為的なイタズラなのに「事故」と表現する謝罪文を出した企業がありました。何について謝っているのかをマイルドにしようとする悪あがきで、あまり上手くない言葉選びです。

参照:
くら寿司、“不適切動画”拡散で謝罪 アルバイト店員がごみ箱へ捨てた食材をまな板へ戻す様子が拡散
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1902/06/news079.html
↑記事内で紹介されている謝罪文に「類似の事故がチェーン店で~」という箇所あり。

■何が起きたのか文中には具体的に書かない
謝罪文内では「不適切な表現がありました」「報道されている問題について」などぼんやりした書き方にとどめて、いわゆるW5H1のうちWhat・Why・Howの情報がないパターン。これもマイルド化の悪あがきにあたります。

■情報量が薄いわりに冗長
前項目とコンボになる場合もあるアプローチです。なんだかえらく長々と言葉をつくして謝ってはいるんだけど、言ってる要点を抜き出すとほんの一言二言を言うのと情報量が変わらないパターン。
近年の実例としては、経歴粉飾で取りざたされたショーンK氏の"涙の謝罪”がそれにあたります。これ、言葉選び自体は教科書的といってもいい整いかたをしてるんですよね。なんだけど、とにかく情報が薄い(そもそもの経歴問題についてふれてもいない)。とりつくろいが破綻した人らしいといえばらしいんですが。

参照:
ショーンK氏がラジオで涙の謝罪 4分間で語ったこと【全文】 https://www.huffingtonpost.jp/2016/03/19/sean-k-at-jwave_n_9504880.html

■尻尾を切る言い回し
「部下の独断で」「外注した会社が勝手に」等々。
最初に挙げた部分保留ワードの一形態なんですが、悪いのは末端のやつなんだという言い回しは、組織がトカゲの尻尾を切るさまを直接見せるのが巷でどういう印象を招くか計算に入れない悪手です。

ここ数年で話題になったものとしては、歌舞伎町で過剰請求のぼったくりが有名だった居酒屋「海野屋」が名目上の閉店をする前に出した謝罪文で、自分たちはちゃんと指導していたのに勝手なことをする従業員がいた、という旨を述べて再炎上していたのが思い出されます。

■他人事っぽい
 「〇〇という事実が調査で確認されました」のような言い回しがあります。まあ実際そうなんだろうけど、しでかした当事者と文章の主体が一致していないとどうも他人事感が出やすいのは要注意点です。

■被害者ヅラをする
これも他の項目との合わせ技でおこなわれやすい悪手です。
個人や外的要因のせいであって組織や上に立つ者としては迷惑しているんだよという被害者ヅラをしてしまうケース。
さらに、これによって派生するのが「甘んじてご批判を受け止める」のような言い回しです。本当は悪くないんだけど俺たちって誠実だから……というアピールにしかならない。

■世間の受け取りかたの側の問題にする
これも、「本当は悪くないんだけどね……」という含みから生じる言葉選び。非を認めると政治的に死ぬ立場の口から出やすいフレーズです。

・「そうした意図はなかったが〇〇と受け取られても仕方がない」
・「誤解させたとしたら」
・「不安を与えてしまい」
・「ご心配をおかけしたことを」
等々

■過去の努力の前提化
「信頼回復に向けて一層精進してまいります」という言い回しがあります。
一層の、ということは元からも頑張ってはいたというニュアンスが混ざるわけですが、これもダメージ軽減狙いの悪あがきで冗長です。今までに怠りがあったからことが起こっとるんじゃろがいというツッコミを引き寄せます。

■逆に恩着せがましい
「これまでお客様のためにつとめてまいりましたが残念なことに~」など。知らんがな。

■情緒的すぎる
ここまでに挙げた各項目がいろいろと合成されて生じやすいものが、とにかく泣きを入れて情に訴え、責めるほうに引け目を与えようとする謝り方。リアルに言葉を放つ会見のほうで多いパターンです。野々村竜太郎氏の号泣会見……は特殊すぎるので置いときますか。

これで凄まじかったのが、次男が窃盗未遂容疑で逮捕された際のみのもんた氏の謝罪会見。とにかく徹頭徹尾、子供のために苦しい思いを噛みしめてあえて頭を下げる父親の姿を強調し、あえて泥をかぶる潔さ・かっこよさを担保しようとする様は正直パフォーマンス性が過剰で、白々しさに転じる危険球でした。

参照:
みのもんたが謝罪会見「世の中に送り出してしまった責任はある」
https://news.mynavi.jp/article/20131027-a011/

■やらかしたこと自体に対して謝ろうとしない
他の項目とかぶるところがありますが、騒ぎになった周辺状況について謝ることにだけ終始して、肝心の問題に直接の責任を認めることだけはなんとか回避しようとする文面があります。悪手です。

・「お騒がせしてしまい」
・「
みなさまにご迷惑をかけてしまい」(被害をこうむった相手には言及しない)

■謝る対象のズレ
これは企業がおこなう謝罪の性質上しかたないところはあるのですが、迷惑をかけてごめんなさいと言及するなかに「株主のみなさま」というのは可能ならば入れないほうがいいし、入れるにしても真っ先にはふれないほうがいいとは思います。謝罪において商売っ気が先に立ってると受け取られるのはあんまり得はない。

あと、サンプルは少ないんですが公開謝罪なのに内輪向けというのが存在し、見てて気ぃ悪いというよりも見せしめ感が恐いので勘弁してほしいケースも。具体的には解散前のSMAPのアレ。

参照:
「ジャニーさんに謝る機会を木村くんが作ってくれて」 『SMAP×SMAP』でのメンバーコメント全文
https://getnews.jp/archives/1354110
↑「ジャニーさんに」ですからね……ファン関係ない儀礼感がすごい。ヤクザの指詰めを全国に生放送したみたいな。すごいもん傍観させられちゃった。

■そもそも謝ってない
説明、釈明に終始してごめんなさいが言えてないケース。どんな悪手を打ってようが謝ってはいるならそれはマシという……。

【形態上の悪手】
■座ったまま謝る
会見にて。いや、まあたいていは起立してみせるもんだけど、まれにありますね。

■謝罪文へのアクセシビリティを下げる
企業の謝罪で、文面へのリンクを公式サイトの思いっきり下のほうへスクロールしないと見えないところへ置いている等。

■謝罪文が画像

これはまあコピペ対策や検索避けなど都合があるとは思いますが、基本的には悪あがきととられて失点となります。有名なのは『美味しんぼ』で放射線被害に関する描写で非難を浴びて小学館が出した弁明文。これは先に挙げた、そもそも謝ってないパターンでもあったんですが。

参照:
小学館が出した言い訳「スピリッツ22・23合併号掲載の「美味しんぼ」に関しまして」がただのガソリンだった。 
https://togetter.com/li/660461

■切り替えがよすぎる
例えばTwitterで 公へ向けた謝罪ツイートの直後に身内とのリプライでくだけたツイートをするのはあまり心証をよくしません。テレビ番組でいえば、不手際を謝った直後に明るいトーンのコーナーや話題をもってくるケースですね。「さて」など切り替えの語を使ってしまい、さっきまでの殊勝な態度はどこ行ったんだと思わせてしまう。

■謝罪文を出すのが遅い
できれば24時間以内、2日以上は開けないほうがいい。アナウンスの遅れは、火がついていることに気が付くまで時間がかかる鈍感が原因の場合と、調査中で事実関係がつかめていないのでうかつな物言いを控えている慎重さゆえの場合とがありますが、後者なら初報で「調査中です」と前フリだけでもしたほうがいいかなと。

【その他】
上の続きみたいなものですが、企業案件だと初期の段階では「内部で調べたが何もなかった(のでご安心ください)」とは言わないほうがいい場合があります。炎上した時点で組織が信用されてないわけだからその内部調査も信用されないし、やらかした人間が素直に白状する確率も低いし、もみ消しを勘ぐられもしますから。
また、あとで別材料が出てひっくり返った時によりハードな謝罪が必要になり深手をおう可能性も。本当に間違いなくシロだと言える場合に一刻も早く鎮火させたい気持ちは出ても、タイミングの見極めは大事です。

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以上、下手くそな謝罪の下手くそポイントまとめでした。
じゃあ逆に、よくできた謝罪ってどんなんだよという気もしてくるので、その実例を挙げてしめくくりとしたいと思います。

参照:【リンク先PDFファイル】
障がいをお持ちのお客様に対する誤った対応に関するご報告とお詫び
レゴランドが聴覚障害のある客4人グループを入場拒否して関係団体や国から「あかんやろ」とツッコまれ、本社の規定からしても問題ある対応なので運営会社のマーリン・エンターテイメンツ・ジャパンが平謝りしたさいの謝罪文。「とはいえ」など往生際悪い言い回しは皆無で、とにかく自社の非を洗い出して対応済みの改善を具体的に報告しており、お手本のような文面になっています。

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